Itanium
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/11/23 06:43 UTC 版)
採用
1994年のIA-64発表当時は、IA-32(x86)でパーソナルコンピュータ市場での事実上の標準となったインテルが、PA-RISCとHP-UXを持つHPとの共同開発により、64ビット市場でMIPS、Alpha、SPARC、POWERなどの各社のRISCプロセッサと正面から競合し、同時にAMDなどの互換プロセッサベンダーを振り切るものと広く報道された。
このためハイエンド市場への進出を狙うマイクロソフトはWindows、メインフレームやオフィスコンピュータなどの自社独自プロセッサの移行先とするBull GCOS、NEC ACOS-4などの他、競合プロセッサの開発を続けるIBMやサンもオペレーティングシステムであるAIXやSolarisではIA-64版の開発を並行して進めた。
しかし初代Itanium (Merced) のリリースは当初予定の1999年から遅れて2001年となり、各社はItanuim対応製品をリリースしたが、当時の各社RISCプロセッサと比較しての性能の低さ、対応アプリケーションの少なさ、IA-32互換モードの遅さもあり、広くは普及せず、AIXやSolarisのIA-64版はリリースされなかった。
その後も各社RISCと比較してItaniumの性能向上は進まず、一方でレジスタ数や信頼性などで各社独自プロセッサの移行は進んだ結果、IA-64 (Itanium) はニッチ市場化、特に日本市場への偏りが進んだ。一方で、2003年には従来のx86の64ビット対応であるAMD64が登場し、2004年から2006年にかけてインテルもIntel 64として追随したため、各社のローエンドサーバーはx64が主流となった。
1999年に設立されたスタートアップのPlatform Solutionsは、主にアムダールを退職したエンジニアを擁し、HP製のItanium 2プラットフォーム上でIBMメインフレームのバイナリコードをエミュレートして、IBMのオペレーティングシステムを含む既存のメインフレームのアプリケーションをそのまま動作させるという野心的なソフトウェアを開発した(最低2 CPUのSMPプラットフォームで、一つのCPUがLinuxで走るI/Oプロセッサとして動作し、残りのCPUはメインフレームの命令セットをエミュレートするSMPとして動作する)。IBM互換のコンピュータ会社が次々とメインフレームのビジネスから撤退して、IBMが再び独占することになったメインフレームのマーケットの内、主にローエンド機器のシェアを狙ったが、IBMはこれに対して特許侵害などを理由に訴訟を起こし、最終的にIBMがPlatform Solutionsを買収することで決着したことで、この「新しい互換機ビジネス」は幻のものとなった。[24]
2004年にはItaniumの設計よりHPは撤退し、Itanium の開発に携わった HP の社員はインテルに移籍し、Itaniumはインテルからの販売のみとなった。また2005年9月にItanium Solutions Alliance (ISA) が設立された。
マイクロソフトは2005年にWindows XP Professional 64-bit Itanium Edition の販売を終了して、代わりに x64 Edition を販売開始し、さらに2010年4月には残るサーバー製品である Windows Server でも今後のItaniumサポート中止を表明した。レッドハットは2009年に次期RHEL 6ではItaniumはサポートしないことを表明した。オラクルは2011年3月にItanium向けの全ソフトウェア開発の終了を発表したが、直後にHPはオラクルを批判しItanium向けHP-UX開発継続を表明した[25]。同年6月、HPはオラクルを契約違反で提訴[26]、2012年8月に裁判所は契約に基づくサポート義務を認定[27]、翌9月にオラクルはItanium向けソフトウェアの開発継続を発表した[28]。
2011年現在、Itaniumの採用は主に、ユニシス OS2200やNEC ACOS-4やHP NonStopなどの独自仕様のメインフレームおよびオフィスコンピュータの代替市場と、HPやNECや日立の HP-UX 稼働サーバーの一部、SGIなどの Linux サーバーの一部に留まっている。スーパーコンピュータ市場 (TOP500) でのIA-64システムの比率は最大では1〜2割となったが、2009年には1.2%に低下し、2013年6月のリストでは1つも採用されていない[29]。
ベンダー名 | 採用年 | 撤退 表明年 |
主な製品 | 備考 |
---|---|---|---|---|
コンパック | 2001 | 2001 | Proliant 590 | Alphaからの移行計画は中断[30] |
IBM | 2001 | 2005 | xSeries 440, 455 | IA-32後継はXeonに変更[31]。Project Montereyは中断。 |
Dell | 2001 | 2005 | PowerEdge 7250 | [32] |
ユニシス | 2002 | 2009 | ES7000 | Xeonへ移行[33] |
HPE (旧HP) |
2001 | - | Integrity (HP-UX,OpenVMS) Integrity NonStop (NonStop OS) |
2004年 Itaniumの設計から撤退、同年 Itaniumワークステーションから撤退[34]。2011年3月、Itanium向けHP-UXの開発継続を表明。2017年8月、9700シリーズ搭載サーバーの2025年までのサポートを表明[21]。 |
SGI | 2001 | - | Altix 4700, 450 (Linux) | |
日立 | 2001 | - | HA8500 (HP-UX) BladeSymphony 1000 (HP-UX、他) |
|
Bull | 2002 | - | NovaScale (GCOS) | NovaScale 9000 |
NEC | 2002 | - | NX7700i (HP-UX) Express5800/1000 (Windows Server) TX7 (Linux) ACOS i-PX9000 (ACOS-4) |
2012年6月、i-PX9000は性能を理由にItaniumから独自プロセッサへ回帰[35]。 |
富士通 | 2005 | 2010 | PRIMEQUEST | Xeonへ移行表明[36] |
マイクロソフト | 2001 | 2005 | ワークステーション: Windows XP | Windows Vistaよりサポートせず[37] |
2002 | 2010 | サーバー: Windows Server 2008 R2 | Windows Server 2008 R2まで[38] | |
レッドハット | 2001 | 2009 | RHEL 4, 5 | RHEL 5まで[39] |
ノベル (SUSE) | 2001 | - | SUSE Linux Enterprise Server (SLES) | |
オラクル (サン) | - | - | - | SolarisのItanium版はリリースせず中断[40]。2011年3月、オラクルはItanium向けの全ソフトウェア開発を終了を発表[41][42]。2012年9月、開発終了を撤回[28]。 |
- ^ Product Change Notification 108304-00 - Intel
- ^ a b c Product Change Notification
- ^ a b c Itaniumが製造終了へ。IA-64の歴史に幕 - PC Watch
- ^ HP が『Itanium』の設計から撤退 - japan.internet.com
- ^ Intel Itanium Processor Numbers
- ^ The World's First 2-Billion Transistor Microprocessor
- ^ INTEL TECHNICAL DISCLOSURES AT ISSCC
- ^ インテル Itanium プロセッサー・ベース・サーバ・プラットフォーム: 製品とテクノロジー
- ^ リリースも延期:Intelが新Itanium「Tukwila」のデザインを修正
- ^ Intel、次期『Itanium』プロセッサ『Tukwila』の出荷を再び延期
- ^ 基幹業務システム向けにインテル® Itanium® プロセッサー 9300 番台を発表 - インテル
- ^ Intel、前世代から性能を2倍以上に高めた「Itanium 9500」シリーズ - PC Watch
- ^ New Intel Itanium Processor 9500 Delivers Breakthrough Capabilities for Mission-Critical Computing - Intel
- ^ インテル、vProとItanium 2のロードマップを解説
- ^ IntelのサイトにItanium 9700シリーズがひっそりと登場 ~5年ぶりの新モデル - PC Watch
- ^ “IntelのItanium、今年出荷の「Kittson」で幕引きか - CIOニュース:CIO Magazine”. 2017年2月17日閲覧。
- ^ Intel Itanium Processors Update
- ^ Intel® Itanium® Processor 9300/9500/9700 Series: Datasheet
- ^ Intel’s Itanium Takes One Last Breath: Itanium 9700 Series CPUs Released
- ^ Intel's Itanium, once destined to replace x86 processors in PCs, hits end of line | PCWorld
- ^ a b HPE Integrity with HP-UX roadmap (public) Aug 2017
- ^ “Mining Itanium”. CNet News (2005年12月7日). 2013年1月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2007年3月19日閲覧。
- ^ Shankland, Stephen (2006年2月14日). “Analyst firm offers rosy view of Itanium”. CNet News. 2012年12月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2007年3月20日閲覧。
- ^ IBM Alleviates a Problem by Buying Platform Solutions Inc.
- ^ HP Supports Customers Despite Oracle’s Anti-customer Actions - HP
- ^ HP、Oracleを提訴――Itaniumのサポート打ち切りは違法
- ^ 米国地方裁、HP Itaniumへのオラクルのソフト移植継続義務を認定
- ^ a b 米オラクル、「Oracle DB 12c」など最新ソフトをHP-UXにも提供へ
- ^ Top500 List - June 2013 - TOP500 Supercomputer Sites
- ^ 米コンパックがAlphaマシンをついに断念,サーバーは米インテル製で染める
- ^ IBM、Itaniumプロセッサを見限る--新チップセットはXeonのみ対応
- ^ Dell、Itaniumサーバから撤退へ
- ^ 米ユニシス、インテルの「Itanium」を見限る--「Xeon」の優位性を強調
- ^ HP、Itanium搭載ワークステーション打ち切り
- ^ NECがメインフレーム「ACOS」の新機種、専用プロセッサ「NOAH」が復活
- ^ 富士通がハイエンドサーバーPRIMEQUESTの新版、CPUをItaniumからXeonへ変更
- ^ インテル、Itaniumで悲喜こもごも(ワークステーション向けWindowsのItanium 2対応版の開発を中止)
- ^ 次期版Windows ServerはItaniumサポートなし
- ^ Red Hat、バージョン6でItaniumサポート打ち切り
- ^ SPARC/Solarisの置き換え狙うItanium連合
- ^ Oracle Stops All Software Development For Intel Itanium Microprocessor - Oracle Press Release
- ^ 米オラクル、Itanium向けソフト開発を終了 - ITPro
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