HDMI 普及

HDMI

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/19 05:05 UTC 版)

普及

AV機器への搭載

薄型テレビでは2004年6月に発売されたパナソニック・VIERA PX300シリーズが国内向けモデルとしては初めてHDMI端子を搭載。その後同年秋のソニーWEGA HVXシリーズの一部及びQUALIA 005を皮切りに翌2005年には各社の上位機種を中心に搭載された。2006年には前年末のHDMI 1.2aの登場とともにHDMIに連動操作機能を加えた「HDMIリンク」(パナソニックの「ビエラリンク」を皮切りに)が登場。ケーブル1本のみで高画質・高音質のAV信号無劣化伝送が可能で、かつテレビ受像機のリモコンで接続した録画機の連動操作も可能となり接続・操作の大幅簡略化が実現した。これによりHDMIは普及機種にまで搭載が広がったほか、従来のAV接続およびIrシステムから録画・再生の地位を奪取し、2000年代後半以降製造の機種は従来のAV入出力端子数を減らしている(S2/S1入出力端子・モニター出力端子・Irシステム端子廃止。ビデオ入力端子数削減など)。

DVDレコーダーBDレコーダー等の録画機器も、2004年末頃から一部メーカーのアナログ放送のみ対応の上位機種(ソニー・RDR-HX90/HX100やパイオニア・DVR-920H-Sなど)を皮切りに搭載が始まった。翌2005年以降は2006年までに発売された一部最下位モデル除きデジタル放送対応の大半の機種に出力端子が装備され、さらに上位機種では出力を2系統装備して映像と音声の分離出力が可能なモデルも登場し、さらなる高画質・高音質が楽しめるようになった。

次世代薄型テレビや次世代大容量光ディスク機器の製品化により、国内市場としても2006年をHD元年として大手メーカーが採用し、家電量販店の広告でも「HDMI端子搭載」の文字が躍るようになった。同年にソニーより発売されたPlayStation 3にも映像出力端子として搭載された。

搭載が一般的となった2007年以降では、専ら対応するオプションと搭載される端子数が差別化要素となっている。またアメリカでは法律によりHDCP非搭載の製品が販売できなくなったことから、HDMI端子の搭載と接続が急速に普及した。

2010年モデル以降の機種からは、AVアンプ(ホームシアター)とHDMI接続した際、これまでの光デジタルケーブル接続が不要となりHDMIケーブル1本のみで迫力サウンドが楽しめる「ARC(オーディオリターンチャンネル)」も登場している。ただし、これにより2011年以降発売の一部普及モデルはHDMI端子がARC非対応でかつ光デジタル出力端子も非搭載なのでAVアンプとの組み合わせが不可能なモデルも登場した。さらに2009年(平成21年)以前のモデルと組み合わせる場合は従来通り光デジタルケーブル接続が必要である。

2014年以降製造の機種は上位機に「4K」対応モデルが登場。ただし、ホームシアターシステムと組み合わせる場合はシアターが4Kパススルー対応モデルか否かで接続方法が異なる。4Kパススルー対応シアターの場合は従来通り「BDレコーダーとTVの間にシアターを挟む」形による接続が可能である。逆に4Kパススルー非対応のシアターと組み合わせる場合、4K対応BDレコーダーはシアターを介さずTVへ直接繋ぎ、4K非対応シアターは別系統で独立接続する。2010年以降に発売された「3D映像録再対応BDレコーダー及びTV」を3D映像パススルー非対応のホームシアターと組み合わせるには、4K非対応シアターと組み合わせる場合と同様の接続方法となる。

アナログ端子の出力制限&アナログAV出力端子全廃

2011年1月1日以降製造のBD機器からは(著作権保護のため)コンポーネント端子D端子等におけるハイビジョン映像のアナログ伝送がD2以下(SD画質)に制限され、D3以上での高画質アナログ伝送が禁止となる「新AACS規定」施行に伴い薄型テレビではD入力端子を廃止する機種が登場。BDレコーダーBDプレーヤーも、2010年11月発売のパナソニック「DMR-BF200」、2010年12月発売のシャープ「BD-AV70」、2011年2月発売のパナソニック「DMR-BR30」「DMP-BDT110」、2011年4月発売のシャープ「BD-HDW73/75/80」など普及モデルを中心に(D出力端子を廃止して)コンポジット映像とHDMI出力のみを搭載する機種が出始め、2011年7月発売のシャープ「BD-H30/H50/D1」は業界で初めてHDMI出力専用となりコンポジット映像出力およびアナログ音声出力を搭載しない機種となった。その後、2012年10月以降発売のソニー製BDレコーダー全機種、2013年2月以降発売のパナソニック製BDレコーダー全機種、2013年以降発売のソニー/パナソニック/パイオニア製BDプレーヤー全機種も同様にHDMI出力専用となっている。ただし、このような場合も一部の下位機種を除きビデオデッキや旧型のビデオカメラなどの接続が可能なようにコンポジット映像入力およびアナログ音声入力は搭載している場合が多い。

2014年1月1日以降製造のモデルはAACS規定が現行よりさらに厳しくなり、ハイビジョン画質・SD画質問わず全ての従来型(D・S・コンポジット各)端子によるアナログ伝送が全面禁止となる。ただし、アナログ入力されたSD画質のコンテンツを録画し、それをSD画質でアナログ出力することを禁じるものではないため、2014年4月現在もシャープ及び東芝製のBDレコーダーなどの一部の機種には、再生可能なすべてのコンテンツをアナログ出力できるわけではない使用制限付きで、コンポジット出力が継続して搭載されている。ただし録画・再生は、接続・操作が簡単でAV信号の劣化がないHDMI接続主体に完全移行しているため、今後発売される薄型テレビおよびBD/DVDレコーダー、BD/DVDプレーヤー、AVアンプゲーム機などのAV機器は、D端子と従来型AV入出力端子を撤去してHDMI端子のみ搭載となる可能性が高い。国内大手メーカーではソニーがBD業界トップを切って2012年10月以降発売の「BDZ」シリーズ全機種を対象に、次いでパナソニックが2013年2月以降発売の「DIGA&据置型BDプレーヤー」全機種を対象に「アナログAV出力端子の全廃」にそれぞれ踏み切っており、TV受像機とはHDMIケーブルでしか繋げず、従来型アナログTV受像機に外付デジタルチューナーとして使用する事は出来ない。またBDレコーダーのうちシングルチューナー普及モデルはアナログAV入力端子も非搭載なので、ビデオデッキなど従来型アナログ再生機器からのダビングも不可である。

経過措置など

AACS LAが策定を進めている次世代大容量光ディスク機器などを想定した著作権保護規格「AACS」ではHDMI上を流れる信号として暗号化されたデジタル信号のみを認める方向で検討され、D端子をはじめとするアナログ出力は可能だが、HD画質での出力は認めず、強制的にSDダウンコンバートされるよう制限される見通しだった。しかしHDMI非搭載の薄型テレビ等が既に一部で普及しており消費者や家電メーカーから反対意見が強く、結局は2005年12月に実質的にアナログ出力を全面許可する決定がなされた。ただしアナログ出力を制限する機能自体は残され、2011年に再検討が予定された。

AACSのAACS Final Adopter Agreementで2013年12月31日以降の製造機種ではアナログ出力自体が禁止されることが決まった[20]。このため、2014年以降にHDMI端子非搭載の旧型のテレビなどに最新式のデジタルAV機器などを接続して市販BDMVタイトルなどを視聴する場合、HDMIを従来のアナログ信号に変換する市販のコンバーターが必要になる。この問題が公になってから、一部の消費者は薄型テレビを購入する際にHDMI端子の有無を重視するようになった。

なお、自分たちで企画撮影編集などを手掛けたオリジナルのBDMVタイトルなど、アナログ出力の規制の対象とならないコンテンツの場合には、2013年12月31日以降の製造機種でも引き続きS端子D端子などのアナログ出力からの再生や他機へのダビングが可能だという。

また、当初はHDMIを使用するためのライセンス料(ロイヤリティ)が非常に高額なことも普及を遅らせる要因となっていた。HDMIのライセンス料が発生するため中小メーカーや小ロット製品には採用のハードルが高く、既にライセンスを受けている大手メーカーでも低価格機や低コストが重視されるPC向け製品には搭載されにくかった。しかし2008年頃から、大手電機メーカーを中心にDVDレコーダーデジタルチューナー、テレビなどの製品にHDMI端子を積極的に搭載するようになり、ノートパソコンや液晶ディスプレイ、ビデオカードなどのPC向けデバイスにも搭載製品が多く見られるようになった。

パソコンへの搭載

デジタル家電よりも遅れて2008年頃からパーソナルコンピュータでも普及が進んだ。高級機種だけでなく低価格機種の一部にもビデオカードグラフィック統合マザーボードノートパソコンに出力端子が、液晶ディスプレイに入力端子が搭載されることが増えた。従来ノートパソコンやビデオカードに搭載されていたRCA端子コンポジット映像信号)やS端子に代わるテレビ出力用端子という側面もある[21]

出力側では映像信号と音声信号を合成して同時出力できる場合がある。ビデオカードの場合、初期の製品ではカード上にS/PDIF入力端子を設けてサウンドカードマザーボードオンボードサウンドからケーブルを繋いでデジタル音声信号を入力して合成していたが[22][23]、その後はビデオカード側にHDMI接続やDisplayPort接続用のサウンドカード機能を内蔵するのが一般的になっている[24]

2013年9月4日、次世代規格2.0[25]で2160pで60 fpsの転送モードが策定された。

ケーブル

2019年現在、接続ケーブルは両端がHDMI端子プラグで長さ20 mまでは市販されている。ただし8 m以上のHDMIケーブルは雑音低減のためのジッターがプラグ部に追加されているので、プラグ部が通常タイプ(7 m以下のケーブル)より大きい。このため、背面端子カバー付き薄型テレビに8 m以上のケーブルを繋ぐ場合は、プラグに阻まれてカバーが閉まらなくなるのを防ぐためカバーを外す必要がある。さらに専用金具を用いての壁掛け設置時には金具と後面端子部の空間が狭くなるので、プラグの大きい8 m以上の長さのケーブルは本体角度調整に支障を来すと同時に、壁に当たってプラグを痛めたりケーブルを断線させる恐れがあるため、後面端子に繋げるHDMIケーブルは7 m以下の長さのものに限られ、8 m以上の長さのものは使えない。また近年ではケーブル全体をフレキシブルに曲げられ形状を変えられるものや先端部を柔軟に曲げられるものが発売されている。


  1. ^ RGB 又は YCbCr 4:4:4 使用時
  2. ^ a b c d e f g h YCbCr 4:2:2 又は 4:2:0 使用時
  3. ^ a b c d e f ディスプレイストリーム圧縮 使用時
  1. ^ HDMI :: Resources :: Knowledge Base
  2. ^ About us, HDMI” (英語). HDMI LA. 2010年1月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年1月27日閲覧。
  3. ^ 日立、松下、ソニー、東芝など7社が次世代デジタル・インタフェース仕様「HDMI」の作業部会を結成”. 日経BP社 (2002年4月17日). 2009年8月30日閲覧。
  4. ^ IT用語辞典 e-words - HDMI”. 2009年8月30日閲覧。
  5. ^ Premium High Speed HDMI® Cable”. www.hdmi.org. 2021年4月18日閲覧。
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  8. ^ HDMI管理団体がオープンソースプロジェクトへの仕様開示を拒否し4K・120Hz出力を含むHDMI 2.1への対応が絶望的に - GIGAZINE”. gigazine.net (2024年2月29日). 2024年3月1日閲覧。
  9. ^ HDMIの新バージョン「1.4」が規格化。Ethernet伝送も”. AV Watch (2009年5月28日). 2009年11月24日閲覧。
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  13. ^ HDMI 1.4 vs HDMI 2.0a vs HDMI 2.0b” (2013年11月14日). 2013年11月14日閲覧。
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  15. ^ HDMI 2.1発表、8K/60Hzや4K/120Hz伝送対応。可変リフレッシュレート「Game Mode VRR」も”. AV Watch (2017年1月5日). 2017年10月29日閲覧。
  16. ^ HDオーディオ対応AVセンター総括特集:HDMIのバージョン比較”. HiVi WEB. 2010年3月4日閲覧。
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  19. ^ a b 株式会社インプレス (2018年1月29日). “【ミニレビュー】 4K/HDRプロジェクタ導入で直面した18Gbps伝送問題。光ファイバーHDMIを検証”. AV Watch. 2022年4月23日閲覧。
  20. ^ Licence AACS” (英語). 2009年6月14日閲覧。
  21. ^ HDMI接続でパソコンの画面をテレビで見られるって本当? - FMVサポート : 富士通パソコン”. 富士通クライアントコンピューティング株式会社. 2019年7月9日閲覧。
  22. ^ NVIDIA GeForceシリーズ HDMI出力対応製品で映像と同時に音声出力を行うには”. 株式会社アスク. 2019年7月9日閲覧。
  23. ^ HDMI対応のRadeon X1600 Proビデオカードが発売に”. PC Watch. 2019年7月9日閲覧。
  24. ^ GT200ベースのミッドレンジGPU「GeForce GT 240」”. PC Watch. 多和田新也のニューアイテム診断室. 2019年7月9日閲覧。
  25. ^ HDMIの次世代バージョン規格化完了は2013年上期に延期”. AV Watch (2013年1月9日). 2013年2月10日閲覧。
  26. ^ HDMI :: Manufacturer :: Becoming an Adopter :: Terms” (英語). HDMI LA. 2009年5月10日閲覧。
  27. ^ "HDMI ANNUAL FEE REDUCED" (Press release) (英語). HDMI LA. 2008年3月22日閲覧[リンク切れ]
  28. ^ 広色域対応HDMI機器は「HDMI 1.3 (x.v.Color)」に”. AV Watch (2007年10月17日). 2009年11月24日閲覧。
  29. ^ WHDI
  30. ^ WirelessHD Consortium
  31. ^ Wi-Fi CERTIFIED Miracast
  32. ^ Android - What's New





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