逮捕 英米法

逮捕

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/18 08:44 UTC 版)

英米法

英米法における逮捕は被疑者を裁判官に引致するための制度である[1]

令状の有無

また、アメリカでも講学上または一般用語として「現行犯逮捕」が用いられることもあるが、一般にはarrest with warrant令状逮捕)とarrest without warrant無令状逮捕)という区別で議論されることのほうが多い[7]。そもそもアメリカの刑事手続では重罪(felony)とされる犯罪について広い範囲で無令状逮捕(arrest without warrant)が認められており、例えば強盗事件では相当の理由(probable cause)があれば事件から1週間を経過していても無令状で逮捕できる[7]

短い逮捕期間、事後審査重視

アメリカでも逮捕は令状主義が原則であるが、合衆国憲法では厳格な令状主義はとられておらず、連邦最高裁が重罪(felony)とされる犯罪については犯人であると信ずる「相当な理由」(Probable cause)があれば令状なく逮捕できるとしているため、実際には、原則と例外が逆転しており、逮捕(Arrest)のほとんどは無令状逮捕(arrest without warrant)であるとされる[7][8][9]。ただし、アメリカの刑事手続では逮捕後24時間以内(州によっては最大72時間以内)に捜査を終了させ身柄を裁判所に引き渡す必要がある[10]

アメリカの刑事手続では逮捕に関しては比較的緩やかな基準で許容される一方、逮捕後には直ちに裁判所が関与してその正当性が審査されるという制度がとられている[10]。裁判官による逮捕の相当性の審査は逮捕前の事前審査よりも逮捕後の事後審査のほうに重点を置いた制度となっている[7]

自宅拘禁

自宅拘禁英語版は逮捕されないままの書類送検在宅起訴とは異なり、裁判前の自宅での未決拘禁であって勾留収監の代用である。基本的には外出や旅行が制限され電子監視英語版が行われるが、拘禁の期間は未決勾留期間として刑期から差し引かれる[11]。自宅拘禁は中世においては主に反体制活動の抑止に用いられており、ガリレオ・ガリレイも自宅拘禁されたが、20世紀末の監視カメラの発達により、一般犯罪者の拘禁費用の抑制のためにも自宅拘禁手続が各国に広まった。アメリカでは裁判所の許可を得れば、門限の間は通勤やリハビリテーション通院なども認められる。日本では法務省法制審議会が、GPS装置の装着義務付けを含め「電子監視制度」導入の検討を行っている段階である[12]


注釈

  1. ^ 警察官たる司法警察員については、国家公安委員会または都道府県公安委員会が指定する警部以上の者に限る。
  2. ^ 30万円(刑法暴力行為等処罰に関する法律及び経済関係罰則の整備に関する法律の罪以外の罪については、当分の間、2万円)以下の罰金拘留又は科料に当たる罪に関する被疑事件。

出典

  1. ^ a b 平野龍一 1958, p. 99.
  2. ^ 河上和雄 & 渡辺咲子 2012, p. 190.
  3. ^ 検挙”. コトバンク. 2019年6月13日閲覧。
  4. ^ 最高裁判所第一小法廷判決 1975年4月3日 、昭和48(あ)722、『傷害被告事件』。
  5. ^ a b c d パスカル・フォンテーヌ. “EUを知るための12章”. 早稲田大学. 2020年2月14日閲覧。
  6. ^ a b c 浦川紘子「EU「自由・安全・司法の地域」における刑事司法協力関連立法の制度的側面 : 被疑者・被告人の権利に関する2つの指令を手掛かりとして」『立命館国際地域研究』第38号、立命館大学国際地域研究所、2013年10月、37-52頁、ISSN 0917-2971NAID 1100096324742020年8月12日閲覧 
  7. ^ a b c d 日本弁護士連合会刑事弁護センター 1998, p. 16「アメリカの刑事手続概説」茅沼英幸執筆部分
  8. ^ 法務省. “諸外国の刑事司法制度(概要)”. 2016年9月17日閲覧。
  9. ^ 島伸一. “日本の刑事手続とアメリカ合衆国の重罪事件に関する刑事手続(軍事裁判を含む)の比較・対照及び日米地位協定17条5項(c)のいわゆる「公訴提起前の被疑者の身柄引渡し」をめぐる問題について”. 神奈川県. 2016年9月17日閲覧。[リンク切れ]
  10. ^ a b 日本弁護士連合会刑事弁護センター 1998, p. 17「アメリカの刑事手続概説」茅沼英幸執筆部分
  11. ^ 「House arrest」 - ブリタニカ
  12. ^ 法制審議会、刑事法(逃亡防止関係)部会「第8回会議 議事録」、2020年12月23日。被害者接触防止のためのGPS装置利用も検討の対象となっている。
  13. ^ ウィキソース国際刑事裁判所に関するローマ規程」(日本語版)。
  14. ^ a b c 村瀬信也 & 洪恵子 2014, p. 236「ICCの刑事手続の特質」高山佳奈子執筆部分
  15. ^ 村瀬信也 & 洪恵子 2014, p. 237「ICCの刑事手続の特質」高山佳奈子執筆部分
  16. ^ 「逮捕・勾留」をもって賃貸借契約を解除できるかに関するQ&A”. 公益社団法人東京都宅地建物取引業協会. 2021年6月13日閲覧。
  17. ^ 在日米国大使館・領事館 ビザ免除プログラム有罪判決の有無にかかわらず逮捕歴のある方、犯罪歴(…)がある方…に該当する旅行者は、ビザを取得しなければなりません。ビザを持たずに入国しようとする場合は入国を拒否されることがあります。」






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