自画像 (デューラー、1493年)とは? わかりやすく解説

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自画像 (デューラー、1493年)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/06/30 09:55 UTC 版)

『自画像 (1493年)』
フランス語: Autoportrait
英語: Self-Portrait
作者 アルブレヒト・デューラー
製作年 1493年
種類 羊皮紙油彩 (1840年ごろカンヴァスに移転)
寸法 56.5 cm × 44.5 cm (22.2 in × 17.5 in)
所蔵 ルーヴル美術館パリ

自画像』(じかぞう、: Autoportrait: Self-Portrait)、または『アザミを持っている芸術家の肖像』(アザミをもっているげいじゅつかのしょうぞう、: Autoportrait au chardon: Portrait of the Artist Holding a Thisle)は、ドイツルネサンス期の巨匠、アルブレヒト・デューラーが制作した絵画である。羊皮紙油彩で描かれており、カンヴァスに移転されている。画家は生涯にわたり素描、油彩の自画像を複数残しているが、1493年に描かれた本作はデューラーが描いた自画像の中で最初期の作品の1つであり、北ヨーロッパの芸術家による最初の自画像のうちの1点であると見なされている[1]。なお、デューラーは、本作の後にも油彩で26歳の時の『自画像』(プラド美術館マドリード) と28歳の時の『自画像』 (アルテ・ピナコテークミュンヘン) を描いている。本作は、1922年にパリルーヴル美術館に購入された[2]

概要

1493年、デューラーは22歳であり、ストラスブールで仕事をしていた。すでにミヒャエル・ヴォルゲムートの下で徒弟修業を終え、各地を渡り歩く遍歴の旅も終えており、1494年7月7日にアグネス・フライと結婚している[3]

制作年ならびに画家の手中にある植物は、本作が婚約者の肖像画 (ドイツ語で、Brautporträt) であることを示唆しているようである[4][5]。実際、デューラーは、植物学者によって「エリギウム・アメティスティウム (eryngium amethystinum)」であると特定された、開花している茎を提示している自分自身を描いたが、「エリギウム・アメティスティヌム」のドイツ語名は「Mannestreue」であり、「夫婦間の忠実」を意味し、「愛」の象徴とされていた[4]。このセリ科の植物はアザミ (肖像画の名称の由来) に似ており、として使用され、媚薬とも見なされている[6]。15世紀には、アザミは結婚における「夫の忠誠」の象徴であった[7][8]。植物はまた、宗教的な意味を持っているのかもしれない。デューラーの絵画、『悲しみの人としてのキリスト』 (1493–94年、カールスルーエ美術館) の背景の金地には、同じ植物が輪郭の形で刻まれている[3]

デューラーは、哲学的な疑念を持つほうに気質的に傾いていた。そして、しばしば自分の顔を素描したり絵具で描いたりして、分析した。自分自身を理想化することもあれば、しないこともあるが、画面上部に記されている制作年の横に書かれた二行は、作品の哲学的およびキリスト教的意図を明らかにしている。

Myj sach die gat
Als es obenschtat

訳:私に関する出来事は神の手の中にある[9]


本作は、おそらく鏡を見つめながら描かれたもので、左手は後に他の画家によって描き足されている[4][8]。デューラーは、複雑な心理を見せつつ憂鬱で内向的、真剣な表情で鑑賞者を見ている。

1805年に、ゲーテライプツィヒの美術館でこの肖像画の複製を見て、「計り知れない価値」があると評価した[10]。『アザミを持っている芸術家の肖像』を「すべてのデューラーの作品中、最もフランス的」と呼んでいるローレンス・ゴーイングによれば「他のどの絵画よりも筆致が奔放で、色彩は虹色に近い」作とされ、デューラーの絵画の中では独自性を持っている[2]

デューラーの自画像

脚注

  1. ^ Fenyő, Iván (1956). Albrecht Dürer. Budapest: Corvina. p. 16.
  2. ^ a b Gowing (1987), p. 164
  3. ^ a b Wolf (2006), p. 28.
  4. ^ a b c 『カンヴァス世界の大画家 7 デューラー』、1983年、77-78頁。
  5. ^ NHKルーブル美術館IV ルネサンスの波動、1985年、56頁。
  6. ^ Botanical herbal note on the eryngium, on Botanical.com. Accessed 13 January 2012
  7. ^ Brion (1960), p. 127
  8. ^ a b ルーヴル美術館 収蔵絵画のすべて、2011年、429頁。
  9. ^ J.L. Koerner, The Moment of Self-portraiture in German Renaissance Art, University of Chicago Press (1997).
  10. ^ H. von Einem, Goethe und Dürer – Goethes Kunstphilosophie, Hamburg: von Schröder (1947).

参考文献

外部リンク


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