繰り上げ当選 概説

繰り上げ当選

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/10 10:47 UTC 版)

概説

現代日本では公職選挙法に基づいて、法定得票数を超えていた落選者の中で最下位当選者の次に得票をしていた候補を次点として置いたり、比例区政党名簿における最下位当選者の次の順位の候補を次点として置いたりする。当選者が死亡したり、辞職したりして、欠員が出た場合に次点者を繰り上げ当選とする。

現代日本の選挙の場合、比例区においてはその選挙で選ばれた議員任期が終了するまで行うことができるが、参議院の選挙区選出議員や地方議会の議員の選挙については、選挙区の定数にかかわらず、選挙日から3か月に限られている。

なお、地方公共団体首長1996年平成8年)以降の衆議院小選挙区選出議員については原則として繰上補充は認められていない。ただし、いずれの選挙においても、票が同数でくじで当選人を選んだ場合に限り、当選人の任期が終了するまで、欠員が生じた場合にくじに外れた者は繰り上げ当選の対象となる。かつては1993年(平成5年)までの衆議院中選挙区制選出議員については、選挙日から3か月に限って繰り上げ当選が認められていた。

参議院の選挙区選出議員や地方議会の議員の場合、選挙直後に、選挙違反などの刑事事件が発覚し、議員が辞職する場合、選挙日から3か月以内に辞職したときは次点者が繰り上げ当選となり、また、選挙日より3か月を超えて辞職したときは欠員のまま(場合により補欠選挙が行われる)となることから、結果として、辞職議員に次点者を繰り上げ当選させるか否かの選択権を与えていることになる。

衆議院議員総選挙および参議院議員通常選挙の比例代表において、一党の名簿登載候補者が全員当選した場合は、欠員となっても繰り上げ当選はされず、欠員が定数の4分の1以上になることに伴う補欠選挙が行われない限り、解散もしくは任期満了になるまで欠員となる[注 1]

政党が解党などで比例名簿を取り下げた場合、欠員が出ても繰り上げ当選はされず補欠選挙が行われない限り、解散もしくは任期満了になるまで欠員となる[注 2]。ただし、(法制上)解党した政党であっても比例名簿の取り下げを行わない限りは、その名簿は任期期間中は有効となるため、繰上当選決定時に立候補時と別の政党に所属する場合もあり得る。また(法制上)解党した政党の事実上後継となった政党であっても、選挙時の解党した政党の比例名簿から登載者の削除を行う事は公職選挙法の規定でできない(死亡や公民権停止などにより、当該候補者が被選挙権を喪失した場合を除く)[注 3]


注釈

  1. ^ 2009年(平成21年)の第45回衆議院議員総選挙比例近畿ブロック民主党の比例名簿に登載されて当選した河上満栄は、2010年(平成22年)の参議院議員通常選挙において、京都府選挙区より民主党公認として立候補するために議員辞職(落選)、本来であれば比例近畿ブロックの民主党の名簿登載候補者より繰上補充が行われるはずであったが、既に名簿登載候補者全員が当選しており繰り上げ当選となる対象候補がいないため、衆議院では解散まで定数480に対して1人欠員となっていた。なお、参議院の場合は任期満了3年前に欠員が生じた場合は、任期を同じくする者の欠員が4分の1に満たない場合であっても、半数改選時に通常選挙と同時に当該選挙区の改選定数を増やして合併選挙を行い、当該選挙区において通常改選定数より下位で当選した候補者は3年の任期の議員として取り扱うことで欠員が補充されることがある。
  2. ^ 2013年(平成25年)の第23回参議院議員通常選挙において比例区みんなの党から当選した、渡辺美知太郎は2019年4月、那須塩原市長選挙に立候補するため議員辞職(当選)したが、2014年にみんなの党は解党した上で比例候補者名簿を取り下げたため繰り上げ当選は行われず2019年7月の任期満了まで欠員となった。なお比例名簿取り下げ前のみんなの党の比例名簿の次点候補は河合純一であった。
  3. ^ 2024年4月に繰上当選が決定した市井紗耶香の例では、市井は2019年参議院議員選挙で「(旧)立憲民主党」から比例区で立候補し次点となり、その後、2024年4月に当該選挙で当選していた須藤元気の退職(衆議院東京都第15区補欠選挙立候補に伴う自動失職)で繰上当選の権利を得たが、本人は当選の権利を辞退する旨を事前に表明していた[1]
    しかし「(旧)立憲民主党」は2020年9月14日付で解党している一方で、比例名簿の取り下げを行っていない事からその選挙時の比例名簿は有効であり、なおかつ事実上の後継政党となった「(新)立憲民主党」は比例名簿から対象者の削除を行う事ができないため、市井の当選辞退の意思に沿わない形で、参議院議員の当選告示を受ける形となる。このため、市井は当選告示後に「参議院に辞職願を提出」し、辞職の許可を受ける必要が生じた[2][3]
  4. ^ a b c d 名簿上は新進党であったが、この時点で既に解党していた。
  5. ^ 惜敗率順で本来の次点者は渡瀬憲明であったが、渡瀬が1998年8月に死去、さらに次々点の宮島大典は1998年の長崎4区補欠選挙で当選していたため、林田が繰上当選となった。
  6. ^ この時点で既に(新)民主党(1998年結党)に移行していた。
  7. ^ 惜敗率順で本来の次点者は岩本司(当時参議院議員)であったが、当選告知から規定期間内に参議院議員を辞する旨の届け出をしなかったため当選権利を失い、次々点の米沢が繰上当選となった。
  8. ^ 惜敗率順で本来の次点者は浅野真であったが、浅野が選挙違反により起訴されたことで比例名簿より抹消したため、次々点の田村が繰上当選となった。
  9. ^ 名簿順では八代英太が次点であったが、八代が2010年の参議院議員選挙に他党(民主党)から立候補したことにより、比例名簿から抹消したため、次々点の浅野が繰上当選となった。
  10. ^ 惜敗率順で本来の次点者は中川昭一であったが、中川が2009年10月に死去したため、次々点の今津が繰上当選となった。
  11. ^ 名簿順で川口民一が繰り上げ当選の対象となっていたが、川口が国民の生活が第一に近い立場だったことから、民主党が川口を除籍処分として比例名簿から抹消したため、次々点の渡部が繰上当選となった。
  12. ^ a b 名簿上は民主党であったが、この時点で既に民進党に移行していた。
  13. ^ a b 名簿上は旧希望の党であったが、この時点で既に解党していた。
  14. ^ a b c 名簿上は(旧)立憲民主党であったが、この時点で既に解党し(現)立憲民主党に移行していた。
  15. ^ 当時福岡県議会議員であったが、当選告知と同日に同職を辞したため、繰上当選となった。
  16. ^ 名簿上は旧立憲民主党であったが、この時点で既に解党し山崎は(新)国民民主党に所属していた。
  17. ^ 惜敗率順で本来の次点者は金子恵美であったが、当選を辞退し比例名簿から抹消したため、次々点の小松が繰上当選となった。
  18. ^ 惜敗率順で本来の次点者は直山仁であったが、直山が公職選挙法違反で罰金刑が確定し比例名簿から抹消したため、次々点の中嶋が繰上当選となった。
  19. ^ 名簿順で本来の次点者は木造燿子であったが、2022年時点で比例名簿から抹消したため、次々点の森が繰上当選となった。
  20. ^ 第12回参議院議員通常選挙投票日翌日に向井が死去。開票の結果向井は当選していたものの、当選者死亡により1人欠員となったため、開票結果確定後に直ちに秦が繰り上げ当選となった。
  21. ^ a b 名簿順では松崎哲久と小島が繰り上げ当選する筈だが、松崎が当時の日本新党代表だった細川護煕を批判する言動を取ったことから、日本新党側が松崎を名簿から削除。裁判にまで発展したが、結局日本新党側の主張が認められた。
  22. ^ 当初、第45回衆議院議員総選挙の選挙期間中に同選挙に立候補していた有田芳生が繰上補充当選の対象となったが、同選挙への立候補を継続するため当選を辞退した(なお、衆院選では有田は落選している)。
  23. ^ 当初、斎藤勁(衆議院議員)が繰上補充の当選人となったが、既に衆議院議員であり、当選告知を受けた日から5日以内に衆議院議員の職を辞した旨の届出をしなかったため、その当選を失った(議員兼職禁止の原則)。
  24. ^ 名簿順では、木下厚及び三輪信昭が尾辻より上位であったが、いずれも比例名簿から削除(民主党を離党)していたため尾辻が繰り上げ当選の対象となった。
  25. ^ 名簿上は民進党であったが、この時点で既に解党していた。
  26. ^ 名簿順では山本太郎(れいわ新選組代表とは同姓同名の別人)及び黒川敦彦が齊藤より上位であったが、いずれも比例名簿から削除(2名とも離党し繰り上げ当選を辞退)されていため齊藤が繰り上げ当選の対象となった。
  27. ^ 名簿上はNHK党であったが、この時点で既に政治家女子48党に移行していた。
  28. ^ 吉田は立憲民主党所属だが、2019年の当選は社民党での当選のため社民党名簿から繰上補充となり、名簿順では仲村未央及び矢野敦子が大椿より上位であったが、いずれも比例名簿から削除(2名とも離党し、仲村は立憲民主党に入党)されていたため大椿が繰り上げ当選の対象となった。
  29. ^ 市井は須藤の自動失職により繰り上げ当選が決定的となった時点で当選辞退を表明していたが、(現)立憲民主党が解党した(旧)立憲民主党の提出した2019年参院選の比例名簿を変更することができないため、4月26日に繰り上げ当選となり即日辞職した。在職日数1日(正確には官報に告示された午前8時半から、参院本会議で辞職願が許可された午前10時3分までの計93分間。)は戦後最短の在職期間となった。

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