粒子と波動の二重性 粒子と波動の二重性の概要

粒子と波動の二重性

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/12/13 04:13 UTC 版)

このような性質への着目は、クリスティアーン・ホイヘンスアイザック・ニュートンにより光の本質についての対立した理論(光の粒子説光の波動説)が提出された1600年代に遡る。その後19世紀後半以降、アルベルト・アインシュタインルイ・ド・ブロイらをはじめとする多くの研究によって、光や電子をはじめ、そういった現象を見せる全てのものは、粒子のような性質と波動のような性質を併せ持つと結論付けられた[1]。この現象は、素粒子だけではなく、原子分子といった複合粒子でも見られる。実際にはマクロサイズの粒子も波動性を持つが、干渉のような波動性に基づく現象を観測するのは、相当する波長の短さのために困難である[2]

歴史

ヤングにより1803年に描かれた二重スリット実験の干渉縞

19世紀の終わりまでには、物質は、原子と呼ばれる粒子が集まってできているとする原子論が確立していた。電流は、初めは流体だと考えられていたが、陰極線を用いたジョゼフ・ジョン・トムソンの研究によって、電子と呼ばれる粒子の流れであることがわかった。これらの事実によって、自然界の大部分は粒子からできていると考えられるようになっていた。同じ頃、波動については、光の回折干渉の現象を通じて十分に理解が得られていた。ヤングの実験フラウンホーファー回折の現象から、光は波動だと考えられていた。

しかし、1905年のアインシュタインによる光電効果の実験などよって、光が粒子のような性質も持つことが示され、1923年のコンプトン散乱の発見によって、それは確かめられた。一方で、粒子だと考えられていた電子について、電子回折が予言された後、実験により確かめられ、電子が波動のような性質も持つことが示された。

粒子と波は、それぞれ互いに相容れないように思えるが、20世紀前半に粒子と波動の両方の性質をもつ「量子」が仮定され、量子論が提唱された。その後、20世紀の終わりには、粒子と波動の二重性の正確な定量もなされた。こうして現代では、古典的な粒子説、波動説の欠点を補い、微小系の振る舞いを記述できる。

研究の進展

ホイヘンスとニュートン

最初期の光に関する総合的な理論は、まずホイヘンス、次いでニュートンにより、それぞれ対立するようなモデルが提唱された。ホイヘンスによる光の波動説は光の干渉等をよく説明したが、説明できない現象がいくつかあった。

続いてニュートンによって光の粒子説が唱えられた。粒子説では光の反射が容易に説明され、レンズによる屈折や、プリズムなどで見られる分光現象も説明できた[3][注釈 1]

ヤング、フレネルとマクスウェル

1800年代初頭、ヤングとオーギュスタン・ジャン・フレネルによる二重スリット実験によってホイヘンスの波動説の証拠が得られた。二重スリット実験によって、格子を通った光は、水の流れが作るものと良く似た干渉縞を作る。光の波長もこの干渉縞のパターンから計算できた。光の波動説はすぐに粒子説に置き換わることはなかったが、粒子説では説明がつかない偏光等の性質も説明できることが分かり、1800年代中頃には光に対する主流な考え方になってきた。

1800年代終わり、ジェームズ・クラーク・マクスウェルは、マクスウェルの方程式により光は電磁波の伝播であることを示した。この方程式は多くの実験によって検証され、ホイヘンスの考えは広く受け入れられていった。

黒体放射に関するプランクの法則

1901年、マックス・プランクは、黒体放射スペクトルに関する法則を発見した。プランクは、この法則の導出を考える中で、原子のエネルギーが、エネルギー素量(現在ではエネルギー量子と呼ばれている)ε = 整数倍になっていると仮定した。この仮定を、量子仮説という[4]

アインシュタインの光電効果の実験

光電効果の模式図

1905年、アインシュタインはそれまで問題となっていた光電効果に対して説明を与えた。彼はこの説明のために、光のエネルギーの量子である光子の存在を仮定した。

光電効果は、金属に光を照射することにより、電流が生じる現象である。これは、金属に照射された光が電子と相互作用し、電子が弾き出されることによって起こる。しかし、青色の光であれば微弱な光でも電流を発生させるのに対し、赤色の光ではどんなに強い光を照射しても全く電流が発生しないことが分かった。波動説によると、光の波動の振幅は光の強さに比例するとされ、強い光は大きな電流を発生させるはずである。しかし、奇妙なことに観測の結果はそうならなかった。

アインシュタインは、この難問に対し、電子は離散的な電磁場(光子と呼ばれる量子)からエネルギーを受け取ると説明した。エネルギー量Eは光の周波数fと、次の関係式で結び付けられる。

全般その他

注釈

  1. ^ しかし、固定端や自由端における波の反射現象はよく知られるものであり、屈折や分光といった現象も媒質による光速の違いやその周波数依存性などとして、こんにちでは波で説明されることも多い。

出典

  1. ^ Walter Greiner (2001). Quantum Mechanics: An Introduction. Springer. ISBN 3540674586. https://books.google.co.jp/books?id=7qCMUfwoQcAC&pg=PA29&dq=wave-particle+all-particles&as_brr=3&sig=2uPutqrcV_8vPVJwJnw3jstZj-o&redir_esc=y&hl=ja#PPA30,M1 
  2. ^ R. Eisberg and R. Resnick (1985). Quantum Physics of Atoms, Molecules, Solids, Nuclei, and Particles (2nd ed. ed.). John Wiley & Sons. pp. 59-60. ISBN 047187373X. "For both large and small wavelengths, both matter and radiation have both particle and wave aspects. ... But the wave aspects of their motion become more difficult to observe as their wavelengths become shorter. ... For ordinary macroscopic particles the mass is so large that the momentum is always sufficiently large to make the de Broglie wavelength small enough to be beyond the range of experimental detection, and classical mechanics reigns supreme." 
  3. ^ "light", The Columbia Encyclopedia, Sixth Edition. 2001-05.
  4. ^ 日本国語大辞典,デジタル大辞泉,世界大百科事典内言及, ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典,精選版. “量子仮説とは” (日本語). コトバンク. 2021年9月28日閲覧。
  5. ^ Donald H Menzel, "Fundamental formulas of Physics", volume 1, page 153; Gives the de Broglie wavelengths for composite particles such as protons and neutrons.
  6. ^ Brian Greene, The Elegant Universe, page 104 "all matter has a wave-like character"


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