筋筋膜性疼痛症候群 メカニズム

筋筋膜性疼痛症候群

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/07/31 22:02 UTC 版)

メカニズム

筋筋膜性疼痛症候群の痛みのメカニズムは以下のように考えられている。筋肉に索状硬結が発生するとその部分で酸素欠乏が起きる。酸素欠乏が起きると血液中の血漿からブラジキニンなどの発痛物質が生成されて、それが知覚神経の先端にある痛みを感じるセンサーであるポリモーダル受容器に取り込まれ、痛みの電気信号に変換され神経を伝わり脳に達し、痛みを感じる。

また、脊髄は筋肉からの痛み信号をとらえて、無意識のうちに自律神経の一つである交感神経を働かせて、さらに索状硬結が発生している場所、及び周辺の筋肉の血管収縮を行わせる。その結果、再び酸素欠乏が発生し発痛物質が生成されて、痛みがさらに強くなると同時に、痛みの場所、範囲も広がる。このような脳や脊髄の働きにより痛みの連鎖が発生する。

診断

Dr.David G. Simonsが発表した筋筋膜性疼痛症候群の特徴であるトリガーポイントの識別基準の日本語要約は以下の通り[1]

必須基準

  1. 触診可能な筋肉の場合、そこに触診可能な索状硬結があること。
  2. 索状硬結に鋭い痛みを感じる圧痛点(部位)があること
  3. 圧痛点を押した時に、患者が周辺部分を含む現在の痛みは圧痛点から来ていると感じること。
  4. 痛みにより体の可動範囲に制限があること

確認すべき観察事項

  1. 目視可能または、触診でわかる局所的な単収縮(筋肉の収縮)が所見できるか?
  2. 針を圧痛点に刺すことにより、局所的な単収縮が所見できるか?
  3. 圧痛点を圧迫することにより、周辺筋肉で痛みや痛みでは無いが何らかの感覚を感じるか?
  4. 索状硬結の圧痛点における自然状態での電気活動を観測するために、筋電図を取得、観察する。

治療

一旦、強い筋筋膜性疼痛症候群を発症すると、患者自身ができる手法で短期回復は一般的に難しく以下のような治療を行う事が一般的である。

西洋医学

トリガーポイント注射と呼ばれる局部麻酔注射をトリガーポイントを含む圧痛点へ行う方法がDr.Janet G. Travellによって紹介され、それが標準的な治療方法となっている。この手法は局部麻酔により索状硬結を解き、血行を良くすることにより、2,3時間後に麻酔効果が無くなった後も継続的に痛みを解く事などを目的としており、一般的な神経根障害治療で行われる硬膜外ブロック注射、神経根ブロック注射とは部位も意味も全く異なる。最近の報告によると、局所麻酔薬を使用しなくても、注射針の刺入だけで効果が現れたり、鍼治療が効果があったケースも見られた[2]

このトリガーポイントブロック注射の効果は早ければ一回で現れるが、通常は最低でも数回の治療を行う。また、長期に渡り疼痛を発生させてしまっている重症の場合は、脳の痛みに対する複雑な働きも関与して、疼痛のメカニズムが複雑化してしまっている場合があり、投薬と並行して数ヶ月に渡る治療を行う事もある。

レーザー治療はプラセボを上回る結果を出しておらず、非推奨である[3]

東洋医学

鍼灸マッサージ等の東洋医学においても筋筋膜性疼痛症候群の痛みを解消、軽減した実例が多く存在する。特にについては原理的に索状硬結部に直接作用させることが可能であることから効果が高いと考えられている。







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