染色体 染色体を構成するタンパク質因子

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染色体

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/02 13:57 UTC 版)

染色体を構成するタンパク質因子

染色体にはヒストンの他にも多くのタンパク質因子が結合している。RNAポリメラーゼのような基本転写因子と呼ばれるタンパク質複合体や、特定の遺伝子座に結合しその遺伝子の発現を制御するもの、クロマチンの状態を維持または変化させるものなどがある。また、トポイソメラーゼと呼ばれる一群の酵素は、DNA超らせん状態を制御する。染色体の高次構造を制御する因子の中で代表的なものには、染色体凝縮に関わるコンデンシン姉妹染色分体の接着に関与するコヒーシンがある。

細胞周期における染色体の挙動

図4 分裂中期の細胞。ほとんどの染色体 (青) が赤道面に配列した状態。緑が紡錘体。

有糸分裂の最初のステージ(前期)では、核膜を保持したまま、クロマチンが凝縮を開始する。前中期では、核膜が崩壊し、染色体凝縮がさらに進行する。凝縮の最も進んだ分裂中期では、二つの染色分体(姉妹染色分体)がセントロメアでより強固に結合した形態をとる。細胞の両極から伸びた長い微小管(紡錘糸)はキネトコアに結合する(図4)。分裂後期にはいると、姉妹染色分体間の接着が解除され、紡錘糸は各染色分体を細胞の両極に向けて引き離す。(染色体分離)。こうして、最終的に各娘細胞は1セットの染色分体を受け継ぐ。細胞分裂が完了すると、染色分体は再び脱凝縮して細胞核内に収納される。

核型

図5 ヒトのカリオタイプ(男性)。常染色体は大きい順に並べ、番号で呼びあらわす。

ある生物の染色体を調べたいとき、コルヒチン等の薬剤で細胞を処理し細胞分裂をM期で停止させてからギムザ等の染色を施し、凝縮した染色体の数と形状を観察する。こうして撮影された染色体を並べたものが、核型karyotype カリオタイプkaryogram カリオグラム とも呼ばれる)である。これを調べて分類学的検討などを行うことを核型分析という。

カリオタイプは種ごとに一定である。例えば、ヒトの二倍体細胞は、22対の常染色体と1対の性染色体、計46本の染色体を持つ(図5)。性染色体の組み合わせは女性では2本のX染色体、男性ではX染色体とY染色体1本ずつとなっている。女性の2本のX染色体のうちの片方は不活性化されており、顕微鏡下ではバー小体として観察される。

有性生殖を行う多くの種は、二倍体 (2n) の体細胞 と一倍体 (1n) の配偶子を持つ。雄由来の配偶子と雌由来の配偶子が接合(受精)すると、二倍体の接合子(受精卵)となり、体細胞分裂を繰り返して個体をつくりあげる。すなわち、二倍体の体細胞が有する2セットの相同染色体のうち、1セットは父親から、もう1セットは母親から由来する。一倍体の配偶子をつくるための特殊な細胞分裂は、減数分裂と呼ばれる。減数分裂の過程では母親と父親に由来する相同染色体は交叉を起こして遺伝情報を交換する。このように、片親からの染色体をそのまま次の世代に渡すのではなく、世代を経るたびに常に新しい遺伝情報の組み合わせが作られるようになっている。無性生殖で増殖するの多くは染色体を1セットしか持たない。

なお、男性の持つY染色体はかつて、その大きさや遺伝子の位置などがX染色体と異なることから、減数分裂時の遺伝子の組み換えを起こさない、変異しづらい不活性なものとされてきた。しかし最近では、Y染色体においてもX染色体との交叉による乗り換えが起こっていると考えられている。またY染色体内で、自身の遺伝子の位置が入れ替わっていることが明らかになるなど、実際にはY染色体の変異は比較的頻繁に起きていることがわかっている。

生物種による染色体数の違い

染色体数
ショウジョウバエ 8
シロイヌナズナ 10
ライ麦 14
オオムギ 14
エンドウ 14
ハト 16
タマネギ 16
食用カタツムリ 24
イネ 24
ミミズ 32
セイヨウミツバチ(♀) 32
ネコ 38
ブタ 38
ハツカネズミ 40
コムギ 42
染色体数
ヒト 46
チンパンジー 48
類人猿 48
タバコ 48
ヒツジ 54
カイコガ 56
ウシ 60
アヒル 60
モルモット 64
ウマ 64
イヌ 78
ニワトリ 78
コイ 100
金魚 104

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