枕草子
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/20 01:15 UTC 版)
評価
『源氏物語』に比肩する中古文学の双璧として、後世の連歌・俳諧・仮名草子に大きな影響を与えた。鴨長明の『方丈記』、兼好の『徒然草』と並んで日本三大随筆と称される。
- 肯定的評価
- 枕草子こそ、心のほど見えて、いとをかしう侍れ。さばかり、をかしくも、あはれにも、いみじくも、めでたくもあることも、残らず書き記したる中に、宮のめでたく盛りにときめかせ給ひしことばかりを、身の毛も立つばかり書き出でて、関白殿失せさせ給ひ、内の大臣流され給ひなどせしほどの衰へをば、かけても言ひ出でぬほどの、いみじき心ばせなりけむ
- 枕草子は人間存在、自然を共に深く愛した故に、それを、それぞれの位相において、多種多彩の美として享受・形成した(目加田さくを)。
- 次から次へと繰り出される連想の糸筋によって、各個の章段内部においても、類想・随想・回想の区別なく、豊富な素材が、天馬空をゆくが如き自在な表現によって、縦横に綾なされている(萩谷朴)。
- 「季節-時刻」の表現(春は曙など)は、当時古今集に見られる「春-花-朝」のような通念的連環に従いつつ、和歌的伝統に慣れ親しんだ読者の美意識の硬直性への挑戦として中間項である風物を省いた斬新なものである(藤本宗利)。
- 中宮定子への敬慕の念の現れである。道隆一族が衰退していく不幸の最中、崩じた定子の魂を静めるために書かれたものである。故に道隆一族衰退の様子が書かれていないのは当然である(同上)。
- 自賛談のようにみえる章段も、(中略)中宮と中宮を取り巻く人々が失意の時代にあっても、天皇の恩寵を受けて政治とは無縁に美と好尚の世界に生きたことを主張している(上野理)。
- 批判的評価
注釈
出典
- ^ 池田亀鑑「枕草子の形態に関する一考察」 『岩波講座日本文学 10』 岩波書店、1932年。
- ^ 『枕草子』(『新編日本古典文学全集』18、小学館 1997/10)494 - 495頁
- ^ 石田穣二、角川文庫『枕草子』解説
- ^ a b 五味『「枕草子」の歴史学』(2014)pp.16-20
- ^ 五味『人物史の手法』(2014)pp.65-73
- ^ 『国語と国文学』第五巻第一号(昭和三年一月特別号)、明治書院
- ^ 光明道隆(楠道隆)「枕草子三巻本両類本考」 『国語国文』第五巻第六号(昭和10年6月)、臨川書店
- ^ 橋本不美男『原典をめざして―古典文学のための書誌―』(笠間書院、1983年)、「平安時代における作品享受と本文(片桐洋一)」(172頁)
- ^ 『枕草子』(『新編日本古典文学全集』18、小学館)479頁
- ^ 『前田家本枕冊子新註』解説、29頁
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