杉本健吉 杉本健吉の概要

杉本健吉

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/18 15:51 UTC 版)

略歴

愛知県名古屋市生まれ。幼少期を津島市で過ごす。津島第一尋常小学校(現在の津島市立南小学校)卒業。1923年に旧制愛知県立工業学校(現在の愛知県立愛知工業高等学校)を卒業後、加藤静児のアドバイスにより図案家、今でいうグラフィックデザイナーとして鉄道会社を中心としたポスターや商業デザインの仕事を手がける。1925年に京都に出向き岸田劉生の門下に入る、1926年に「花」で春陽会に初入選。その後、吉川英治作の『新・平家物語』・『私本太平記』等の挿絵を担当し絶賛を得る。1949年東大寺観音院住職上司海雲師の知遇を受け、観音院の古土蔵をアトリエにしてもらい、奈良の風物を描く。奈良では志賀直哉入江泰吉らと交流する。1971年、画壇(国画会)よりの引退を表明。しかし、画家としての創作は続ける[1]

1987年名古屋鉄道により、愛知県知多郡美浜町美浜緑苑に杉本美術館が開館し、売らずにいた絵画が収蔵された。また、この美術館の近くに、名古屋鉄道は名鉄知多新線 美浜緑苑駅を設けた。晩年まで毎週、同美術館に足を運び、美術館内に設けられたアトリエで、デッサンや来館者との歓談を楽しんでいたが、2004年肺炎のため死去、享年98歳。同美術館は2021年閉館。

生涯

入選歴

  • 1926年:春陽会展に入選(「花」)
  • 1927年:大調和展入選(「幕間」)
  • 1931年:国画会展入選(「秋郊」その他)
  • 1942年:新文展特選(「博物館中央」)
  • 1946年:日展(日本美術展覧会)特選(「博物館彫刻室」)

主な作品

名鉄3780系電車(ライトパープル)[2]名鉄7000系パノラマカースカーレット)・名鉄交通タクシーエメラルドグリーンアイボリーホワイトツートンカラー)や名古屋市営地下鉄東山線ウィンザーイエロー)の車両色。鯱バスの塗装デザイン。

青柳ういろう小野道風の故事をもとに、に飛びつくカエルの姿を図案化)や、中部電力(「」を図案化)・名鉄百貨店(「」を図案化)の社章(いずれも初代)。

名古屋市営地下鉄のマーク(地下鉄のトンネル線路、名古屋市の丸八マークを図案化)のデザイン。

常滑市の市章(「常」の字を図案化)のデザイン[3]

東大寺が経営する東大寺学園中学校・高等学校(奈良市山陵町)において、中学棟・高校棟を繋ぐ「転心殿」を榊莫山と合作し、同校へ寄贈した。

大須観音鐘楼堂の華精の鐘(女人梵鐘)のデザイン(四面の池の間に、四季の花、梅、牡丹、蓮、菊、その中心に、華の精の姿を描く)。

エピソード

吉川英治が亡くなった時、杉本健吉は感謝の意を込めて、新・平家物語の主人公に囲まれた吉川英治の絵と手紙を描いた。

名古屋能楽堂が完成し、その鏡板(舞台の背景)の制作を担当した際、他の能楽堂では定番となっている老松を描くところを、杉本健吉は若松を描いたため物議を醸した。これに対し本人は「できたばかりだから元気が良く若々しい松の方が似合う」「伝統に決まったものはない」と語っていた。後に老松の鏡板も描かれ、隔年で配置されている。

晩年「(やりたいことを)行えばいいんです。私の場合は自然の中でたわむれているうちに絵ができた。それが私の人生だった。」との言葉を残している。また、「長生きするのが目標ではなく、絵を描くのが目的で、そのために長生きしている」とも。100歳になる年の愛知万博に自分の絵を出品して参加することを目標としていたが、その願いはかなわなかった。


  1. ^ 朝日新聞東京本社企画部 編『杉本健吉展図録』朝日新聞東京本社〈現代洋画家デッサン・シリーズ〉、1981年。全国書誌番号:92040727 
  2. ^ 3780系電車登場前に、既に本色に塗り替えられた他形式が登場していたが、新造時に本色であったのは本形式のみ。
  3. ^ 市の概略”. 常滑市. 2021年5月1日閲覧。


「杉本健吉」の続きの解説一覧




固有名詞の分類


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「杉本健吉」の関連用語

杉本健吉のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



杉本健吉のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの杉本健吉 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS