日本の公務員 公務員の義務及び権利

日本の公務員

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/25 20:23 UTC 版)

公務員の義務及び権利

公務員は、国民(具体的には国民の代表者である政府)に対し、法令や条例の定めにより、次のような義務・権利を有する。

公務員の義務と制限

非正規雇用の者を除き、すべて公務員は、憲法第99条に基づき、憲法を尊重し擁護する義務を負い、任命の辞令を受けるに当たってその旨書面で宣誓する。また、憲法第15条に基づき、「全体の奉仕者」として公共の利益のために勤務するという一般的な義務を負う。

その他、公務員の守るべき具体的な義務として次のようなものがある。いずれも一般職の公務員に関するものであるが、特別職でも個別の定めでこれに準拠した規定がなされていることが多い。

  • 職務遂行上の義務(職務遂行・職務専念義務。国家公務員法第101条、地方公務員法第35条)
  • 法令と上司の職務上の命令[注 2][注 3]に従う義務(法令遵守義務及び命令服従義務。国家公務員法第98条第1項、地方公務員法第32条)(なお、ここで、優先度としては、法令>職務命令、という順序となる。)
  • 秘密を守る義務(守秘義務。国家公務員法第100条第1項、第109条第12号、地方公務員法第34条第1項、第60条第2号)
  • 品位と信用を保つ義務(国家公務員法第99条、地方公務員法第33条) - 業務上横領や接待はもちろん、勤務時間外の傷害事件、飲酒運転も含まれる
  • 犯罪告発をする義務(刑事訴訟法第239条2項) - 2010年、判例告発義務刑法第193条)が緩和された。

他に、会計に携わる者については、予算執行、物品管理において国に損害を与えた場合には、弁償責任の義務がある(会計法第41条第1項)。

また、公務員は次のような極めて厳しい制限がある。

  • ストライキの禁止など、労働基本権に関し制限又は特別な取扱いがある(政令第201号、及びこれを起源とする国家公務員法第102条、地方公務員法第37条)。国際労働条約第98号(1949年の団結権及び団体交渉権)、市民的及び政治的権利に関する国際規約第22条違反との指摘がある。
  • 中立的な立場を保つため、所定の政治的行為が禁止されている(政令第201号、及びこれを起源とする国家公務員法第102条、人事院規則14-7、地方公務員法第36条)。この点については言論の自由思想信条の自由を阻害するなどとする違憲性はなく最高裁で合憲判決が下されている(猿払事件など)。
  • 営利企業及び非営利事業との関係について制限を受ける(国家公務員法第103条、第104条、地方公務員法第38条第1項) - 退職後の再就職の制限、兼業の禁止など NPOやNGOのメンバーとなって活動する事にも制限が課される。

公務員の権利

公務員は、職務上の義務の代償あるいは職務の公平性を担保することを目的として、次のような権利が与えられている。裁判所職員等の特別職でも準拠した定めがある点は義務と同様である。

  • 身分保障に関する権利(国家公務員法第75条第1項、地方公務員法第27条第2項)
    法定の事由による場合のほかは、職員の意に反して、降任、休職、免職されない。これらの不利益処分については、権利保障のための手続きが定められている(国家公務員法第89条〜第92条の2、地方公務員法第49条〜第51条の2)。また、勤務条件に関する行政措置の要求の権利がある(国家公務員法第86条〜第88条、地方公務員法第46条〜第48条)。
  • 財産上の権利
    • 給与を受給することができる(国家公務員法第107条、一般職の職員の給与に関する法律、地方公務員法第24条第1項)
    • 退職年金等(長期給付)、保険給付等(短期給付)を受ける権利
    • 公務傷病に対する補償を受ける権利
    • 職務上の実費弁償等を受ける権利、など

注釈

  1. ^ 第19条 この法律は、国家公務員及び地方公務員については、適用しない。
  2. ^ 「職務上の命令」には、現場における命令や、組織の長等による通達等による組織の指揮監督としての命令、上部機関による訓令国家行政組織法14条2項)を含む。
  3. ^ ただし、上司の職務上の命令は、その内容が法規に抵触しないことの要求を具備することを要する。この事に反し、その内容が法律上不能である場合、重大かつ明白な瑕疵がある場合(法に反し重大かつ明白な瑕疵がある例としては、例えば、検事正が公務員の汚職の罪の告発を受理しないよう検察官に命じる等)は、職務命令は無効となり、受命公務員を拘束する力を持たない。この事が示されたものとしては、例えば、昭和25年1月30日付人事院公平局世話課長世話甲第19号での「法第九十八条の職務命令に従う義務について」や、東京高裁昭和47年(行コ)第22号 免職処分取消請求控訴事件 昭和49年5月8日 判決 棄却(上告審 最高裁判所第三小法廷 昭和49年(行ツ)第79号 懲戒免職処分取消 昭和53年11月14日 判決 棄却 集民125号565頁)(伊藤校長事件)、などがある。
  4. ^ それぞれの宮家で私的に雇い、雇用者である皇族の「御手元金」から給料が出る家庭内労働者の人達は宮内庁職員ではない。

出典

  1. ^ WEB特集 「非正規公務員」の声に向き合ってほしい - NHK
  2. ^ 国家公務員法第十六条
  3. ^ 労働基準法第二条、第十四条第二項及び第三項、第二十四条第一項、第三十二条の三から第三十二条の五まで、第三十八条の二第二項及び第三項、第三十八条の三、第三十八条の四、第三十九条第六項から第八項まで、第四十一条の二、第七十五条から第九十三条まで並びに第百二条の規定
  4. ^ a b OECD goverrnment at a glance 2019, OECD, (2009), doi:10.1787/8ccf5c38-en. 
  5. ^ Public employment and management Production costs in general government
  6. ^ OECD.StatExtracts LFS by sex and age
  7. ^ Government at a Glance 2013 PUBLIC SECTOR EMPLOYMENT AND PAY
  8. ^ a b 国家公務員法 第六十条, 地方公務員法 第二十二条の三
  9. ^ 地方公務員法 第二十二条の二
  10. ^ a b OECD Factbook 2014: Economic, environmental and social statistics, OECD (2014)





英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「日本の公務員」の関連用語

日本の公務員のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



日本の公務員のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの日本の公務員 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS