日本の公務員 給与

日本の公務員

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/25 20:23 UTC 版)

給与

一般職の公務員の給与は、職員が公務遂行のために提供する労働に対する反対給付であるという職務給の考えに基づき、「その職務と責任に応じて支給しなければならない」(国家公務員法62条第1項、地方公務員法24条第1項)ことがその原則とされる(職務給の原則)。給与の基準となる官職の職務と責任は、給与に関する法律や条例が規定する(給与法定主義、給与条例主義)(国公法62・63条、地公法24条)。

かつては職務給の原則を実現する方法として、官職を職務の種類、複雑さ及び責任の度合いに応じて整理分類し、それに基づいて給与を支給する職階制を採用することが国公法で定められていたが、運用費用が大きいことや、日本の雇用慣行と整合しないなどの問題で、実施されることはなかった。2007年6月、第166回国会で職階制を廃止する国公法改正法(平成十九年法律一〇八号)が成立し、2009年4月1日に施行され、正式に廃止された。職階制に基づく給与準則の代替として、俸給表や手当など具体的な給与制度を定めてきたのが一般職の職員の給与に関する法律(昭和二十五年四月三日法律第九十五号)(一般職給与法)である。一般職給与法の特別法として検察官検察官の俸給等に関する法律(検察官俸給法)、任期付きで試験研究機関等の研究業務に従事する職員の一般職の任期付研究員の採用、給与及び勤務時間の特例に関する法律(任期付研究員法)、専門的な知識経験等により任期を定めて採用された職員には一般職の任期付職員の採用及び給与の特例に関する法律(任期付職員法)が適用される。

特別職については、国家公務員法・地方公務員法の適用を受けず、給与に関しては別の定めをもつ。国家公務員の特別職については、特別職の職員の給与に関する法律(特別職給与法)に基づき支給される。特別職のでも、一般職に近い性質をもつ公務員は特別職給与法とは別の法律が定められており、一般職給与法の規定を準用していることが多い。国会議員秘書には国会議員の秘書の給与等に関する法律、一般の国会職員は国会職員法、裁判官には裁判官の報酬等に関する法律、一般の裁判所職員には裁判所職員臨時措置法、防衛省職員(自衛官を含む)には防衛省の職員の給与等に関する法律が適用される。

地方公務員の特別職も同様で、条例で別の定めをするなどして支給されている。

給与勧告

日本では国家公務員の一般職の給与を社会一般の情勢に適合させるため、毎年人事院が全国の人事委員会と協力して民間企業の給与を調査し、職員の給与をそれに合致させるよう、内閣と国会に対して給与勧告を行っている。給与勧告には公務員の労働基本権制約の代償措置としての側面があるとする理解が一般的である。地方公務員については当該地方公共団体の人事委員会の勧告を行っているが、人事院勧告に倣うことが多い。給与勧告に法的拘束力はないが、実際上給与改定への影響力は強い。過去には凍結あるいは一部実施となることも多かったが、近年は完全実施が続いている。

人件費の国際比較

2011年度における日本の公的セクター人件費は対GDP比にして6.3%であり、OECD参加国中最低である。首位はデンマークの18.5%、続いてアイスランドの14.5%となっている[10]。その他の北欧諸国も上位につけている。OECDの平均は11.0%となっている。但し以下の統計で日本の公務員の人件費が最低なのは、法人非正規職員や公的法人などといった「みなし公務員」も含めているため、数値の正当性には一考の余地があろう[要出典]

公的セクターの人件費対GDP比(%)[10] (2011年度)
  日本
  OECD平均

注釈

  1. ^ 第19条 この法律は、国家公務員及び地方公務員については、適用しない。
  2. ^ 「職務上の命令」には、現場における命令や、組織の長等による通達等による組織の指揮監督としての命令、上部機関による訓令国家行政組織法14条2項)を含む。
  3. ^ ただし、上司の職務上の命令は、その内容が法規に抵触しないことの要求を具備することを要する。この事に反し、その内容が法律上不能である場合、重大かつ明白な瑕疵がある場合(法に反し重大かつ明白な瑕疵がある例としては、例えば、検事正が公務員の汚職の罪の告発を受理しないよう検察官に命じる等)は、職務命令は無効となり、受命公務員を拘束する力を持たない。この事が示されたものとしては、例えば、昭和25年1月30日付人事院公平局世話課長世話甲第19号での「法第九十八条の職務命令に従う義務について」や、東京高裁昭和47年(行コ)第22号 免職処分取消請求控訴事件 昭和49年5月8日 判決 棄却(上告審 最高裁判所第三小法廷 昭和49年(行ツ)第79号 懲戒免職処分取消 昭和53年11月14日 判決 棄却 集民125号565頁)(伊藤校長事件)、などがある。
  4. ^ それぞれの宮家で私的に雇い、雇用者である皇族の「御手元金」から給料が出る家庭内労働者の人達は宮内庁職員ではない。

出典

  1. ^ WEB特集 「非正規公務員」の声に向き合ってほしい - NHK
  2. ^ 国家公務員法第十六条
  3. ^ 労働基準法第二条、第十四条第二項及び第三項、第二十四条第一項、第三十二条の三から第三十二条の五まで、第三十八条の二第二項及び第三項、第三十八条の三、第三十八条の四、第三十九条第六項から第八項まで、第四十一条の二、第七十五条から第九十三条まで並びに第百二条の規定
  4. ^ a b OECD goverrnment at a glance 2019, OECD, (2009), doi:10.1787/8ccf5c38-en. 
  5. ^ Public employment and management Production costs in general government
  6. ^ OECD.StatExtracts LFS by sex and age
  7. ^ Government at a Glance 2013 PUBLIC SECTOR EMPLOYMENT AND PAY
  8. ^ a b 国家公務員法 第六十条, 地方公務員法 第二十二条の三
  9. ^ 地方公務員法 第二十二条の二
  10. ^ a b OECD Factbook 2014: Economic, environmental and social statistics, OECD (2014)





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