悪魔の詩
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「死刑」宣告とその影響
『悪魔の詩』の出版は、その直後から国内外のムスリムに反発を生み、10月にインド政府はこの本を発禁とした。イギリスでは12月2日にマンチェスターのボルトンで8000人のムスリムが本書の発禁を求めるデモを行ない、翌年1月14日にはブラッドフォードで本書を焼くパフォーマンスを行なった。少数派のムスリムの政治運動としては最大の動きだったが、イギリスでもほとんど報道されることがなかった[8]。
世界中の注目を浴びたのは、1989年2月14日、イランの最高指導者ルーホッラー・ホメイニーによる著者のラシュディおよび発行に関わった者などに対する「死刑」の宣告であった。「死刑」宣告はイスラム法の解釈であるファトワー(fatwa)として宣告された。ラシュディはイギリス警察に厳重に保護された。
- 1989年2月15日 - イランの財団より、ファトワーの実行者に対する高額の懸賞金(日本円に換算して3億7000万円)が提示された。
- 1989年3月7日 - イランがイギリスと国交断絶[9]。
- 1989年
- 1990年2月9日 - ホメイニーの後継者アリー・ハーメネイーが、演説の中で「ラシュディに対する「死刑」宣告は有効であり、執行されるべきである」と改めて強調[9]。
- 1991年7月11日 - 日本語訳を出版した五十嵐一が勤務先の筑波大学にて殺害され、翌日に発見された(悪魔の詩訳者殺人事件)[10]。他の外国語翻訳者も狙われた。イタリアやノルウェーでは訳者が何者かに襲われ重傷を負う事件が起こった。
- 1993年 - トルコ語翻訳者の集会が襲撃され、37人が死亡した(スィヴァスの虐殺)。
- 1998年 - イラン大統領のモハンマド・ハータミーが、ファトワーを撤回することはできないが、今後一切関与せず、懸賞金も支持しないとの立場を表明[9]。
- 2006年7月11日 - 悪魔の詩訳者殺人事件で(実行犯が1991年から日本国内に居続けたと仮定した場合の)公訴時効が成立。
- 2012年9月16日 - AFP通信の報道によると、イランの強硬派宗教財団がラシュディの処刑実行者に対する懸賞金をこれまでより50万ドル上積みして330万ドル(約2億5400万円)とし、アメリカ人が制作した映画『イノセンス・オブ・ムスリム』において預言者ムハンマドへの侮辱的表現がなされていた件を受けて中東各地で反米デモが拡大していることに関連して、「(ラシュディ殺害)実行に最もふさわしいタイミングだ」と訴えた[11]。
- 2022年8月12日 - ニューヨーク州北西部で開かれたイベントでラシュディが講演する直前、壇上に上がってきた男に襲撃された(サルマン・ラシュディ刺傷事件)[12]。
注釈
出典
- ^ Erickson, John D. (1998). “The view from underneath: Salman Rushdie's Satanic Verses”. Islam and Postcolonial Narrative. Cambridge, UK: Cambridge University Press. pp. 129–160. doi:10.1017/CBO9780511585357.006. ISBN 0-521-59423-5
- ^ Erickson, John D. (1998). “The view from underneath: Salman Rushdie's Satanic Verses”. Islam and Postcolonial Narrative. Cambridge, UK: Cambridge University Press. pp. 129–160. doi:10.1017/CBO9780511585357.006. ISBN 0-521-59423-5
- ^ Netton, Ian Richard (1996). Text and Trauma: An East-West Primer. Richmond, UK: Routledge Curzon. ISBN 0-7007-0326-8
- ^ “'The Satanic Verses' author Salman Rushdie on ventilator after New York stabbing”. Fortune 2022年8月15日閲覧. "The death threats and bounty led Rushdie to go into hiding under a British government protection program, which included a round-the-clock armed guard"
- ^ Manoj Mitta (2012年1月25日). “Reading 'Satanic Verses' legal”. The Times of India. オリジナルの2013年4月29日時点におけるアーカイブ。 2013年10月24日閲覧。
- ^ Suroor, Hasan (2012年3月3日). “You can't read this book”. The Hindu 2013年8月7日閲覧。
- ^ “How Salman Rushdie's Satanic Verses has shaped our society” (英語). the Guardian (2009年1月11日). 2013年10月24日閲覧。
- ^ Tariq Modood "RELIGIOUS ANGER AND MINORITY RIGHTS", The Political Quarterly, vol. 60, issue 3, 1989 July.
- ^ a b c d 立花書房編『新 警備用語辞典』立花書房、2009年、14-15頁。
- ^ a b “迷宮入りの「悪魔の詩」訳者殺人、問題にされた2つのポイント【平成の怪事件簿】”. デイリー新潮 (2019年4月29日). 2019年9月29日閲覧。
- ^ 「悪魔の詩」懸賞金を増額=「著者処刑の好機」-イラン財団
- ^ 共同通信 (2022年8月12日). “ラシュディ氏は講演直前に壇上で襲撃 | 共同通信”. 共同通信. 2022年8月12日閲覧。
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