巣 他者が供給する巣

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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/06 14:12 UTC 版)

他者が供給する巣

巣はそれを使用する動物が作るのが普通であるが、他の動物が作るものを利用する例もある。特に材木のように硬い基盤には穴を掘るのに特殊な能力を必要とするから、それが可能な動物は限られる。例えばキツツキはそれに穴を掘る能力を持っており、深い穴を掘って巣とするが、彼らが廃棄した巣が他の鳥に利用されることは多い。

さらに、他者が積極的に巣を提供する例もある。アリ植物はその体の中にアリの巣となる空間を作り、そこにアリを住まわせる。アリは肉食で昆虫類の多くには脅威であるから、それが植物の表面に常駐することで害虫を排除できる。さらに入り組んだ例として、クスノキは葉にダニ室を持ち、そこにフシダニの1種を住まわせる。フシダニは植物に寄生する害虫であるが、それが葉に住み着いて繁殖すると、増加個体が葉に出てきて、これが肉食小動物の餌となることで、それらを引きつけると考えられる。

生息環境としての巣

巣は特定の作られた構造であり、周囲の環境からは多少とも遮断された空間であるから、それなりに異なった環境を提供する。特にある程度規模が大きくて、恒常的に維持される巣はそこに特化した生物群集を成立させる例がある。例えばアリやシロアリの巣にはそこに住み着く決まった生物群があり、それぞれに好蟻性、好白蟻性生物といわれる。ヒトの作る巣である家にも独特の生物群が住み着いている。

分類群による違い

ハリナシバチ英語版

昆虫

産卵や蛹化のために巣を作るものが多い。蛹化のための巣をという。また、朽ち木や枯れ木に巣穴を掘って潜り込むものもいろいろある。ちょっと変わっているのは、葉の表裏の表皮を残し、その間の葉肉のみを食べるものがいる。それらについては詳細は省く。

チョウ類には、幼虫が食草と糸を使って巣を作るものがいくつかある。ミノガは可搬式の巣を作る。

トビケラは、ガに似た昆虫で、幼虫は水中にいて、多くはミノムシのように巣を作り、それを引きずって暮らしている。一部の物は、水底の石などに固定した巣を作り、糸で作った網で流下物を拾って食べる。

セグロアシナガバチと巣
アリの巣の模型
オーストラリアの白アリNasutitermes triodiae英語版蟻塚英語版

ハチ類・アリ類など社会性昆虫は複雑な巣を作る。社会性のハチ類も大きな巣英語版を作るが、ほとんどは1年限りである。スズメバチアシナガバチは木の繊維を固めた紙のような物質で巣を作る。ミツバチの巣は自分の分泌したロウでできている。単独生活のハチにも、狩りバチやハナバチなどに巣を作るものが多数あり、その構造は様々である。巣の材料にはさまざまなものが使われるが、泥を使うものが多い。 アリシロアリは、管状の道でつながった複数の部屋を持つ複雑な巣を、地下や枯れ木の中に作るが、土を塚のように積み上げて地表部に高く盛り上がった構造を作る場合もある。そのような巣を蟻塚という。

アミメカゲロウ目のウスバカゲロウの仲間には、幼虫がアリジゴクと呼ばれるものがある。それらは乾燥した砂地にすり鉢型の穴を作り、落ちてくる虫を砂を飛ばして穴の底に落とし、捕食する。生活のための構造はいっさい作らないが、その中で生活しているので、捕獲装置が巣の役割も果たしていると言えるかも知れない。

コウチュウ目では、蛹の入る巣を作るもの、食い跡に巣穴ができるものがたくさんある。特殊な巣を作るものとしては、シデムシ類とコガネムシ類の糞虫の多くが、幼虫を育てるために巣穴を掘り、そこへ餌を蓄えて子育てする。キクイムシの仲間には、樹木の皮の下に巣穴を掘り、そこで菌類を培養して、家族生活するものがある。また、ハンミョウの幼虫は、固い地面に縦穴を掘り、通りすがりの昆虫に飛びかかって捕獲する。

クモ類

クモの巣と呼ばれるのは、たいていは捕獲装置であり、クモの網である。しかし、網の上にゴミなどで巣を作るクモもある。 生活のための巣を作るクモも多い。巣を作る場合、多くのものは糸で作った管状のものである。入り口が網になっている場合も多い。

ハエトリグモなど、徘徊性のクモでも、産卵のために袋状の巣を作るものがある。

甲殻類

カニエビには巣穴を持つものがいくつかある。テッポウエビには、巣穴にハゼを共生させているものがいる。端脚類などの小型の甲殻類にも巣を作るものがある。多くは泥で作った管状のものである。

環形動物

ゴカイミミズなどは巣穴を作る。これらは、単に穴を掘り進んでゆくだけと思われがちだが、必ずしもそうではなく、固定した巣穴を持つものがかなりある。ゴカイの仲間には、カンザシゴカイやケヤリムシなど、自分の体から出した分泌物による巣穴を持ち、その入り口から触手を伸ばしてデトリタスなどを食べるものもある。

魚類

一部の魚類は巣を作る。多くは産卵のためのものである。 ベタ(闘魚)は泡巣英語版といって、泡の中に産卵する。 トゲウオなどは、鳥の巣に似た巣を作り、材料は大抵水草である。 シクリッドの仲間には水底に巣を作って産卵するものがある。 アマミホシゾラフグは、海底に幾何学模様の産卵巣を作る[4]

両性類

モリアオガエルを含む一部の種は、地上や樹上などに泡巣英語版を作る[5][6]

ゴライアスガエルは、子どもたちを守るための池を作る[7][8]

鳥類

巣のなかで口を開けてを待つ小鳥
落葉し露出したキジバトの巣。巣をズームアップするとキジバトが見える。

巣を作る鳥類は多い。多くの鳥は繁殖のために巣を作る。巣はさまざまな材料で皿を作り、その上に卵を産む形であるが、その巣を巣穴の中に作るものもいる。オオミズナギドリ、カワセミなどは地面に穴を掘って巣を作るし、キツツキ、フクロウは樹洞の中に巣を作る。

大抵の鳥類は、繁殖が終わると巣を放置して、次の年に新しい巣を最初から作る。 ワシタカ類は同じ巣を使い続ける。

チドリは巣を作らない。

アナツバメの数種の巣は高級食材。燕の巣を参照。

鳥類中最も大きな巣を作るのは、ホウカンチョウ目のツカツクリで、彼らは卵を抱いて暖めず、落ち葉を積み上げて、その発酵熱で暖める。そのため、小さな山の形の巣を作り、卵をその中に埋める。

哺乳類

巣を作る哺乳類も色々ある。 地下に巣穴を掘って生活するほ乳類はあちこちにいる(モグラプレーリードッグ)。 巣の中で繁殖するような哺乳類が巣を作る場所は大抵地中である(タヌキキツネ)。 クマ冬眠のために巣に籠もり、メスはそこで子を産む。 鳥の巣のような形のを作るリスの種もある。

また、ゴリラやオランウータンは宿泊のために木の枝を折って簡単な居場所を作る(霊長類の巣作り英語版)。

その他

動物以外に、原生動物にも巣を作るものがある。

人間の手による「巣」

人間が他の動物を保護したり、利用したりする目的で、人為的に巣を設置することがある。


  1. ^ コシアカツバメの繁殖”. www.omnh.jp. 大阪市立自然史博物館. 2024年7月1日閲覧。
  2. ^ Digging up the Precambrian: Fossil Burrows Show Early Origins of Animal Behavior名古屋大学プレスリリース(2018年3月12日)2018年3月31日閲覧。
  3. ^ Magazine, Smithsonian. “How Scientists Resolved the Mystery of the Devil's Corkscrews” (英語). Smithsonian Magazine. 2024年7月1日閲覧。
  4. ^ INC, SANKEI DIGITAL (2015年5月22日). “ミステリーサークルの「巣作り」 奄美のフグ、新種トップ10入り 日本初”. 産経新聞:産経ニュース. 2024年5月19日閲覧。
  5. ^ 「泡と消えない」カエル泡巣のはなし”. katosei.jsbba.or.jp. 2024年5月19日閲覧。
  6. ^ 地上のカエルの卵は樹上よりも保温され、孵化に有利 ~地球”. 名古屋大学研究成果情報. 2024年5月19日閲覧。
  7. ^ Inc, mediagene (2019年8月17日). “世界最大のカエルは自分で池を造っちゃうらしい”. www.gizmodo.jp. 2024年5月19日閲覧。
  8. ^ admin (2022年6月17日). “同じカエルでもこんなに違いが!?世界最大のカエルと世界最小のカエルに迫る!”. いきふぉめーしょん. 2024年5月19日閲覧。


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