巡洋艦 ミサイル巡洋艦

巡洋艦

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/26 01:41 UTC 版)

ミサイル巡洋艦

タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦イージス艦でもある。

アメリカとイギリスでは、それぞれ1943年ごろより艦対空ミサイルの開発に着手しており、大戦末期に日本軍が行った特別攻撃(特攻)の脅威を受けて開発は加速していた。アメリカでは、1944年に開始されたバンブルビー計画を基本として開発が進められており、ここから派生した中射程型のテリア1948年、本命と位置付けられていた長射程型のタロス1950年には試作に入った[22]

アメリカ海軍において、これらのミサイルは、まず既存の軽巡洋艦重巡洋艦への改修によって装備化されることになり、1952年度予算でボルチモア級重巡洋艦2隻がテリアを搭載したボストン級として改装されたのを端緒として、順次に改装が進められた。また兵装のミサイル化と同時に機関の核動力化も図った「ロングビーチ」も建造されたが、巨額な建造費が災いして、同型艦は建造されなかった[23]。また、特にテリアは、より小さい駆逐艦ベースの船体でも十分に収容できることが判明したことから、巡洋艦への改装はそれ以上行われないことになり、かわって駆逐艦を拡大したミサイル・フリゲートDLG/DLGN)の整備が進められた[22]。しかしこのミサイル・フリゲートはどんどん大型化・有力化していったこともあり、1975年の艦種再編の際にミサイル巡洋艦と改称された。また1978年度のタイコンデロガ級は、スプルーアンス級駆逐艦を元にイージスシステムを搭載するよう設計を修正したという経緯もあり、当初はミサイル駆逐艦として類別されていたものの、結局ミサイル巡洋艦に類別変更されている[24]

一方、ソビエト連邦海軍では、1956年より「誘導ジェット兵器を備える駆逐艦」の開発を進めていたが、巡洋艦を失うことを憂慮した海軍上層部への配慮から、これは1960年代に入って58型ミサイル巡洋艦と改称され、ミサイル巡洋艦(RKR)[注 2]の嚆矢となった。アメリカ海軍のミサイル巡洋艦が艦対空ミサイルを主兵装とした防空艦であったのに対し、これらのソ連海軍のミサイル巡洋艦は、むしろ艦対艦ミサイルを主兵装として、対水上戦を主任務としていた[26]

また運用者自身はミサイル駆逐艦と類別していても、外部観測筋によってミサイル巡洋艦と種別されることもある。例えば国際戦略研究所では、満載排水量9,750トン以上の水上戦闘艦を一律にミサイル巡洋艦としており[27]海上自衛隊あたご型護衛艦(満載排水量10,000トン)とまや型護衛艦(満載排水量10,250トン)、大韓民国海軍世宗大王級駆逐艦(満載排水量10,290トン)や中国人民解放軍海軍055型駆逐艦(満載排水量13,000トン)はミサイル巡洋艦として扱われている[28][29][30]


注釈

  1. ^ 類別変更後も、1880年代までは、旧来の艦種呼称も公文書で用いられることがあった[6]
  2. ^ ロシア語では誘導ミサイルとロケットの区別がなく、いずれも「ロケット」(Ракета)と称されるため、日本語に訳出される際に便宜的に区別が付されることが多い[25]

出典

  1. ^ 青木 1982, pp. 80–84.
  2. ^ 田中 1996.
  3. ^ 青木 1982, p. 117.
  4. ^ a b 鳥居 1984.
  5. ^ a b c d 青木 1996.
  6. ^ a b Friedman 2012.
  7. ^ Friedman 2012, §0.
  8. ^ a b c d e f g h i j k l m 中川 1996, pp. 167–173.
  9. ^ Polutov 2010, pp. 16–23.
  10. ^ a b Polutov 2010, pp. 154–159.
  11. ^ a b c d 田村 2007.
  12. ^ Friedman 2012, §4.
  13. ^ Gardiner 1979, p. 228.
  14. ^ a b 青木 1999.
  15. ^ a b 海人社 1990.
  16. ^ 中川 1996, pp. 69–78.
  17. ^ 中川 1996, pp. 79–106.
  18. ^ Gardiner 1984, pp. 159–160.
  19. ^ Gardiner 1984, p. 336.
  20. ^ a b c d 青木 2006.
  21. ^ 岡部 2006.
  22. ^ a b 大塚 2012b.
  23. ^ 石橋 1993.
  24. ^ 青木 1993.
  25. ^ Polutov 2010, p. 79.
  26. ^ Polutov 2010, pp. 72–89.
  27. ^ IISS 2016, p. 498.
  28. ^ IISS 2016, p. 261.
  29. ^ IISS 2016, p. 268.
  30. ^ Type-055: a new chapter in China’s naval modernisation” (英語). IISS. 2020年11月23日閲覧。
  31. ^ a b 福井 2008, 第四章 航空戦艦について.
  32. ^ 大塚 2012.
  33. ^ Polmar 2008, ch.19 New Directions.
  34. ^ Wertheim 2013, pp. 326–327.
  35. ^ Polutov 2017, pp. 120–137.
  36. ^ Polutov 2017, pp. 138–143.
  37. ^ 大塚 2020.
  38. ^ Polutov 2005.






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