巡洋艦
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/18 23:39 UTC 版)
来歴
帆船時代の軍艦は、備砲数による等級と、想定任務による艦種によって類別されてきた。一般的に、二層以上の砲列甲板に64門以上という多数の艦砲を備えた艦によって単縦陣の戦列を構成して砲撃戦を戦うことから、これらが戦列艦と称された。一方、これより小さく、砲列甲板が単層で備砲が20~50門程度の艦はフリゲートやコルベットと称され、艦隊決戦の補助や通商破壊、沿岸警備などにあたっていた。また更に小さい等外艦としてスループや砲艦、カッターやスクーナーなどがあった[1][2]。
「クルーザー」のもとになった「クルーズ」という単語は、ラテン語で十字架を表す「クルクス」(crux)に由来し、「海上をジグザグ航行する」ことをオランダ人が「クルイゼン」(cruisen)と称していたのに倣って、17世紀、イギリス人が「敵船を探し求める軍艦のジグザグ航海」を「クルーズ」と称するようになったとされる。すなわち、当時は艦種というよりは作戦行動を表す単語であり、例えばイギリスで1708年に制定された巡洋艦法(Cruisers Act)では、このような任務で得た捕獲賞金について規定されている[3]。戦列から離れての単独任務という性格から、フリゲートやコルベットが投入されることが多かった。また1860年代の南北戦争の際には、南軍は13隻の武装船を通商破壊に投入したが、これらは「クルーザー」と称されていた[4]。
この時期には舶用蒸気機関が普及し、機帆船の時代となっていた。南北戦争での経験を踏まえ、アメリカ海軍は蒸気フリゲートの速力向上を図り、1864年には「ワンパノアグ」を進水させた。またイギリス海軍は、1868年、設計思想を更に進めて、船体を鉄製とするとともに、舷側に石炭庫を配置して空間装甲としての機能をもたせた「インコンスタント」を建造した。当時、まだ艦種呼称として採用されてはいなかったものの、後顧的には、イギリス巡洋艦の嚆矢として評価されている[5]。
このように帆から推進機に変わっていく流れの中、帆装に基づく従来の類別法とは異なる名称が望まれるようになり、イギリス海軍では1875年進水の「シャノン」を端緒として「巡洋艦」という艦種呼称が使われるようになり、1878年には、既存のフリゲートとコルベットは巡洋艦に類別変更された[注 1][6]。フランス海軍でも1882年進水の「ヴォーバン」は巡航鋼鉄艦(Cuirassé de Croisière)と称され、「フリゲート」の名称は使われなくなっていった[4]。
注釈
出典
- ^ 青木 1982, pp. 80–84.
- ^ 田中 1996.
- ^ 青木 1982, p. 117.
- ^ a b 鳥居 1984.
- ^ a b c d 青木 1996.
- ^ a b Friedman 2012.
- ^ Friedman 2012, §0.
- ^ a b c d e f g h i j k l m 中川 1996, pp. 167–173.
- ^ ポルトフ 2010, pp. 16–23.
- ^ a b ポルトフ 2010, pp. 154–159.
- ^ a b c d 田村 2007.
- ^ Friedman 2012, §4.
- ^ Gardiner 1979, p. 228.
- ^ a b 青木 1999.
- ^ a b 海人社 1990.
- ^ 中川 1996, pp. 69–78.
- ^ 中川 1996, pp. 79–106.
- ^ Gardiner 1984, pp. 159–160.
- ^ Gardiner 1984, p. 336.
- ^ a b c d 青木 2006.
- ^ 岡部 2006.
- ^ a b 大塚 2012.
- ^ 石橋 1993.
- ^ 青木 1993.
- ^ ポルトフ 2010, p. 79.
- ^ ポルトフ 2010, pp. 72–89.
- ^ IISS 2016, p. 498.
- ^ IISS 2016, p. 261.
- ^ IISS 2016, p. 268.
- ^ “Type-055: a new chapter in China’s naval modernisation” (英語). IISS. 2020年11月23日閲覧。
巡洋艦と同じ種類の言葉
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