巡洋艦 偵察巡洋艦

巡洋艦

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/18 23:39 UTC 版)

偵察巡洋艦

大型防護巡洋艦装甲巡洋艦に発展する一方、中型防護巡洋艦は淘汰され、小型防護巡洋艦は高速化によって新時代への適応を図ろうとした[8]

これに応じて建造された艦種の一つが偵察巡洋艦Scout cruiser)である。これは当時発達していた駆逐艦嚮導する小型・高速の巡洋艦であり、駆逐艦に匹敵する高速性能が求められたことから、基本的には駆逐艦を拡大した船型となっているが、巡洋艦としての設計も求められたことから、防護甲板が設けられた[5]

しかし燃料が重油に移行していく流れのなか、炭庫による防御は意味を失いつつあったうえに、駆逐艦の拡大型としての小型の船体は耐航性に欠け、おまけに駆逐艦の速力向上にも追随が困難となっていた。このため、イギリス海軍での偵察巡洋艦の建造は1911年度で終了した[16]

軽巡洋艦

アリシューザ級。軽巡洋艦の始祖と評される。

偵察巡洋艦の経験を踏まえて、その速力性能を維持しつつ火力を強化し、また遣外任務にも投入できるよう艦型を拡大した艦として開発されたのが軽巡洋艦である。アメリカ海軍では1904年度計画のチェスター級、イギリス海軍では1908年度計画のタウン級で既にその萌芽がある[17]

そしてイギリス海軍が1912年度計画で建造したアリシューザ級が軽巡洋艦の始祖となった。同級では、タウン級の途中から採用された水線装甲帯を踏襲するとともに、駆逐艦用機関の導入によって速力を更に向上させ、ウィンストン・チャーチル海軍大臣は、同級について、真の"Light Protected Cruiser"となった、と称した[8]。また同時期に、ドイツ帝国海軍マクデブルク級オーストリア=ハンガリー帝国海軍も「アドミラル・シュパウン」と、類似した艦を建造した[18][19]

1930年に調印されたロンドン海軍軍縮条約では、砲口径6.1インチ(155 mm)以下の巡洋艦が「カテゴリーB」と定義されており、これを軽巡洋艦(Light Cruiser)とする呼称が一般的となった[8][20]

重巡洋艦

妙高型重巡洋艦妙高」。日本海軍の条約型巡洋艦の第一陣にあたる。

1922年に調印されたワシントン海軍軍縮条約では、主力艦とされていた戦艦の質と量に制限が課せられた。このときの規定では、排水量10,000トン未満、砲口径8インチ(203 mm)以下の水上戦闘艦は制限を免れた[20]

このことから、この制限内の艦を多数建造して、これを準・主力艦として位置付ける動きが生じた。これが条約型巡洋艦である。その後、1930年に調印されたロンドン海軍軍縮条約では、口径6.1インチを超える砲を持つ巡洋艦が「カテゴリーA」と定義されており、これを重巡洋艦とする呼称が一般的となった[8][20]

ロンドン海軍軍縮条約の制約を受けて、巡洋艦建造の主力は、次第に軽巡洋艦に移行していくことになった[20]。条約が失効したあとも、イギリスやフランスは重巡洋艦よりは軽巡洋艦の建造を優先した。しかし日本アメリカ合衆国、そしてそもそも条約に縛られなかったナチス・ドイツでは、条約型巡洋艦よりも大型・強力な重巡洋艦が建造されることになった[21]


注釈

  1. ^ 類別変更後も、1880年代までは、旧来の艦種呼称も公文書で用いられることがあった[6]
  2. ^ ロシア語では誘導ミサイルとロケットの区別がなく、いずれも「ロケット」(Ракета)と称されるため、日本語に訳出される際に便宜的に区別が付されることが多い[25]

出典

  1. ^ 青木 1982, pp. 80–84.
  2. ^ 田中 1996.
  3. ^ 青木 1982, p. 117.
  4. ^ a b 鳥居 1984.
  5. ^ a b c d 青木 1996.
  6. ^ a b Friedman 2012.
  7. ^ Friedman 2012, §0.
  8. ^ a b c d e f g h i j k l m 中川 1996, pp. 167–173.
  9. ^ ポルトフ 2010, pp. 16–23.
  10. ^ a b ポルトフ 2010, pp. 154–159.
  11. ^ a b c d 田村 2007.
  12. ^ Friedman 2012, §4.
  13. ^ Gardiner 1979, p. 228.
  14. ^ a b 青木 1999.
  15. ^ a b 海人社 1990.
  16. ^ 中川 1996, pp. 69–78.
  17. ^ 中川 1996, pp. 79–106.
  18. ^ Gardiner 1984, pp. 159–160.
  19. ^ Gardiner 1984, p. 336.
  20. ^ a b c d 青木 2006.
  21. ^ 岡部 2006.
  22. ^ a b 大塚 2012.
  23. ^ 石橋 1993.
  24. ^ 青木 1993.
  25. ^ ポルトフ 2010, p. 79.
  26. ^ ポルトフ 2010, pp. 72–89.
  27. ^ IISS 2016, p. 498.
  28. ^ IISS 2016, p. 261.
  29. ^ IISS 2016, p. 268.
  30. ^ Type-055: a new chapter in China’s naval modernisation” (英語). IISS. 2020年11月23日閲覧。






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