孤獨の人 書誌情報

孤獨の人

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/17 04:57 UTC 版)

書誌情報

映画

孤独の人
監督 西河克己
脚本 中沢信
原作 藤島泰輔
製作 児井英生
出演者 津川雅彦
小林旭
稲垣美穂子
芦川いづみ
月丘夢路
音楽 斉藤高順
撮影 高村倉太郎
編集 中村正
製作会社 日活
配給 日活
公開 1957年1月15日
上映時間 82分
製作国 日本
言語 日本語
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1957年1月15日公開の日本映画モノクロ・82分、スタンダード・サイズ。監督は西河克己、主演は津川雅彦[6]。原作で宮城県・松島などに設定されていた修学旅行先は奈良県でのロケになっており、ストーリー時系列は変更されている[5][11]

高崎俊夫によれば、日活にもプリントが残っていないという噂のある「幻の映画」とされている[12]。2016年現在、DVD化などはされていない。2014年6月、ラピュタ阿佐ヶ谷スクリプター白鳥あかね特集の1本として上映された[13]

キャスト

クレジット順は日活サイトのデータを参照した[5]

製作

作品の性質上、制作時には日活に右翼からの脅迫状も来ていた[4]。皇太子を演じたのは公募で選ばれた黒沢光郎である[11]。撮影時は皇太子を映してはならないとされたため、画面上ではロングショットや主観ショットのみで、白い手袋をして登場したが、その演出にはこういった事情への配慮があったとされる[4][12]

また学習院皇室を利用しての金儲けや実在する皇太子をテーマにすることを批判し、映画化への協力を断り学生にも関わらないように指示していた[6]。生徒の舟山役で学習院大学在学中だった三谷礼二が秋津礼二の名で出演したが、出演を取りやめるように大学から勧告を受けるものの従わなかったため[6]、院長安倍能成から退学処分を受けた[4][12]。監督の西河は責任を感じて三谷を日活俳優部に誘い、三谷は秋津の名でいくつかの映画に出演したあと、宣伝部に移り、著名なオペラ演出家となった[4][12]。なお、撮影自体については、大学正門、グランドなどでロケが行われている[5]

この退学処分については本多顕彰などが「重すぎる」、戦後自由だった学習院が社会の風潮により「復古調」に戻っていると批判した[6]。また三谷は蓮實重彦の先輩にあたり、蓮實はこの縁で本作撮影に学習院時代の制服を貸している[4][12]

撮影現場では、監督が出演者の小林旭に歌を歌わせ、小林が「木曽節」を歌ったところ、あまりのうまさに現場が静まりかえるほどで[4]、これをきっかけに翌年小林はコロムビア・レコードから歌手デビューした[12]

スタッフ

映画の評価

当時の評価は賛否両論で、『朝日新聞』は『太陽の季節』の影響による「太陽族」同様の若者像が描かれたことに対する批判をし、『読売新聞』は地味だが「あくまで真面目に皇太子のことを考えて作られている点に好感が持てる」と評価した[6]

高崎俊夫は日活初期における正統派の青春映画と評価している[12]


注釈

  1. ^ モデルの明仁親王は正確には成年して立太子の礼をするまで継宮と呼ばれていたが、事実上の皇太子であり、この作品中でもそのように扱われている。

出典

  1. ^ a b 岩波現代文庫『孤獨の人 moreinfo岩波書店、2016年4月17日閲覧。
  2. ^ 序文前の献辞。(藤島 2012)
  3. ^ a b 三島由紀夫「序」、(藤島 2012)。(三島 2003, pp. 197–199)に所収
  4. ^ a b c d e f g 白鳥, あかね『スクリプターはストリッパーではありません』国書刊行会、2014年、74-76頁。ISBN 978-4336056825 
  5. ^ a b c d 孤獨の人(孤独の人)、 日活、2016年4月20日閲覧。
  6. ^ a b c d e f g h i j k 河西秀哉「解説」、(藤島 2012, pp. 235–241)
  7. ^ a b 藤島泰輔「あとがき」、『孤獨の人』、初版、三笠書房、pp.261
  8. ^ 映画のすべてを記録する 白鳥あかねスクリプター人生|作品解説1、ラピュタ阿佐ヶ谷、2016年4月19日閲覧。
  9. ^ a b 三島由紀夫「うますぎて心配」(週刊朝日 1956年4月15日号)。(三島 2003, p. 200)に所収
  10. ^ この段落の出典。(渡部 1999, pp. 154–163)、(渡部 1999, p. 273)
  11. ^ a b 孤独の人、KINENOTE、2016年4月19日閲覧。
  12. ^ a b c d e f g 高崎俊夫幻の日活映画『孤独の人』をめぐって」、清流出版、2016年4月18日閲覧。
  13. ^ 映画のすべてを記録する 白鳥あかねスクリプター人生、ラピュタ阿佐ヶ谷、2016年4月19日閲覧。






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