太永浩 太永浩の概要

太永浩

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/05 03:56 UTC 版)

太永浩(テ・ヨンホ)
태영호
2017年
生年月日 (1962-07-25) 1962年7月25日(61歳)
出生地  朝鮮民主主義人民共和国平壌直轄市
出身校 平壌外国語大学
前職 駐イギリス北朝鮮公使
現職 韓国国会議員
所属政党朝鮮労働党→)
未来統合党
国民の力
配偶者 呉恵善 (オ・ヘソン、오혜선、吳惠善)
親族 岳父: 呉琴鉄(オ・グムチョル、오금철、吳琴鐵[1]
義祖父: 呉白龍(オ・ベンニョン、오백룡、吳白龍[1]
サイン
公式サイト [www.thaeyongho.com ]

国会議員
選挙区 ソウル特別市江南区甲選挙区
当選回数 1回
在任期間 2020年5月30日 -
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太永浩
各種表記
ハングル 태영호
漢字 太永浩
発音: テ・ヨンホ
英語表記:
2000年式
MR式:
Thae Yong-Ho
Tae Yeong-ho
T'ae Yŏng-ho
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北朝鮮の外交官としてロンドンにある在イギリス大使館に公使として在任中の2016年7月にイギリスを出国し、8月に脱北者として韓国に亡命した。12月に住民登録を済ませて韓国の国民となった。2020年4月に未来統合党から立候補して韓国の国会議員に当選。妻オ・ヘソンは、北朝鮮の国防委員会第1委員長を務めた呉白龍(オ・ベンリョン)と同じ家門である。2人の息子と1人の娘がいる[6][1]

経歴

平壌出身。高等中学校在学中に中国に渡り、英語中国語を学んだ。当時、彼と学業をともにした学友には、呉振宇(オ・ジヌ)前人民武力部長許錟(ホ・ダム)前朝鮮労働党対南担当秘書などの高位幹部の子息たちがいた。

中国から帰ってきた後、5年制の平壌外国語大学を卒業して、外務部8局に配置された。入省するやただちに金正日朝鮮労働党中央委員会総書記の専属通訳候補としてデンマーク語第1号の養成通訳官に選抜され、デンマークへ留学した。

1993年から在デンマーク大使館書記官として活動していたが、1990年代末に在デンマーク大使館が撤退すると、在スウェーデン大使館へ移動した。スウェーデン生活は短く、すぐに帰国してEU担当課長を経て、在イギリス大使館に派遣され、10年ほど勤務していた[7]

国際外交の舞台に初めて名前をあげたのは、彼が40歳の2001年にベルギーブリュッセルで開かれた、北朝鮮と欧州連合(EU)の人権対話時の代表団団長として出てからである。この時の彼のポジションは、西ヨーロッパ局(外務省8局)でEUを担当する課長兼欧州局長代理であった。

ヨーロッパとロンドンなどで、北朝鮮の象徴体制と金日成・金正日偶像化を宣伝するなど、北朝鮮の広報に積極的に先頭に立った。

2015年5月、金正恩の実兄である金正哲が、ギタリストのエリック・クラプトンのロンドン公演会場を訪れた時、同行した[8]

脱北と韓国への亡命

イギリス駐在公使であった2016年8月17日に、韓国入りし亡命した事が確認された[9][10]。公使は大使に次ぐ序列で、脱北した外交官の中では最高位級である[11]。脱北前まではイギリス駐在の北朝鮮大使館公使で、当時の玄鶴峰大使に次ぐ駐英北朝鮮大使館内で序列2位だった。1996年に脱北したザンビア駐在の北朝鮮大使館書記官だったヒョン・ソンイルとともに北朝鮮外務省でも有数のヨーロッパの専門家である。また、大使館内の朝鮮労働党の責任者である「細胞秘書(書記)」で、外交官とその家族の思想教育業務まで管轄した。イギリスのメディアによると、太永浩の亡命には、イギリスやアメリカ合衆国の諜報機関が深く関わっており、イギリスからドイツアメリカ空軍ラムシュタイン空軍基地を経由して、韓国へ亡命したことが知られている[12]

2016年12月23日から調査期間が終り、正式に韓国での社会活動を始めた。2016年12月韓国与野党の国防委議員との会見で、北朝鮮の継続的な身辺の脅威にもかかわらず、朝鮮半島の統一のために、対外活動を積極的に展開することを明らかにした。

これと関連して、北朝鮮から、自分のことを資金横領などの犯罪を犯して処罰を恐れて逃走したと非難していることは全く事実ではなく、自分の亡命に北朝鮮側がそのような話をすることに備えて、あらかじめ大使館内の資金の状況を文書にまとめ、それを写真に撮影しておいたと述べた。

12月23日、最初の公式日程として、国会情報委員会に出席した彼は、朴槿恵政権批判デモ(キャンドル集会)について、韓国の民主主義が保障されていることを感じたという。また、崔順実ゲート事件に関連した政治的混乱にもかかわらず、国家システムが正常に機能していることと、国会聴聞会というものが存在するという事実に、衝撃を受けたという。

2017年から、国家情報院傘下の研究機関である国家安全保障戦略研究院所属で活動していることが知られている。また、同年訪米。11月1日、アメリカ合衆国下院外交委員会の公聴会に出席。北朝鮮の体制などに関して証言を行った[13]

2020年2月27日未来統合党は同年4月の第21代総選挙に太永浩がソウル・江南甲区から、北朝鮮の住民を救うという意味で住民登録名の「太救民」(テ・グミン)[14]として立候補することを発表した。なお、北朝鮮の宣伝媒体「メアリ」は立候補した太永浩を、酷い言葉を使って強く批判した[15][16]。与党共に民主党候補の金星坤と議席を争い、選挙戦中「皆さんの一票は、金正恩の核兵器よりも力がある」と訴え、支持者からは「韓国を守ることができる人だ」との声が上がった[17]

4月15日の選挙の結果、金星坤を大きく引き離す得票を得て国会議員に当選。脱北者が比例代表で当選した事例はあるが、小選挙区で当選したのは太がはじめてだった[18]

2023年3月8日、国民の力の最高委員に選出された[19]。同年5月10日、「済州島四・三事件は北の金日成主席が指示した」との発言や2024年の総選挙での党公認に対する大統領室の介入の憶測を呼んだ音声記録問題などの責任を取り、党最高委員を辞任した[20]

2023年12月、翌年の第22代総選挙に従来の江南区甲選挙区ではなく、586世代鄭清来朝鮮語版議員が選出された麻浦区乙選挙区から出馬することを示唆した[21]。結局は九老区乙選挙区から出馬することとなった[22]


注釈

  1. ^ 2016年12月に韓国の住民登録をした際、北朝鮮の追跡を避けるため、実際と異なるものとして登録された生年月日。

出典

  1. ^ a b c d e “韓国への亡命した北朝鮮公使・太永浩氏 経歴が華々しい「北朝鮮の貴族」”. Livedoor News (デイリーNKジャパン). (2016年8月19日). https://news.livedoor.com/article/detail/11907241/ 2017年3月28日閲覧。 
  2. ^ “태영호 공사 부부, 진짜 빨치산 혈통인가?”. 週刊朝鮮. (2016年8月29日). http://weekly.chosun.com/client/news/viw.asp?nNewsNumb=002422100003&ctcd=C03 
  3. ^ a b 대한민국국회 - 태영호” (朝鮮語). 大韓民国国会. 2022年5月29日閲覧。
  4. ^ a b 태영호(太永浩)”. 大韓民国憲政会. 2022年5月29日閲覧。
  5. ^ 총선 D-5 김성곤의 '逆색깔론'에 태영호 "네거티브, 대꾸할 가치 없어"” (朝鮮語). 조선비즈 (2021年3月18日). 2023年8月15日閲覧。
  6. ^ 반종빈 (2016年8月18日). “<그래픽> 탈북 태영호 주영 공사 가계도”. 聯合ニュース. http://www.yonhapnews.co.kr/photos/1991000000.html?cid=GYH20160818001400044 
  7. ^ “'귀순' 北 태영호, 55세 베테랑 외교관…'금수저'출신 서유럽통(종합2보)”. 聯合ニュース. (2016年8月17日). http://www.yonhapnews.co.kr/bulletin/2016/08/17/0200000000AKR20160817145753009.HTML 
  8. ^ “My friend the North Korean defector”. BBC NEWS. (2016年8月16日). オリジナルの2016年8月17日時点におけるアーカイブ。. https://archive.is/20160817134215/http://www.bbc.com/news/magazine-37098904 2016年8月17日閲覧。 
  9. ^ North Korea diplomat defects to South”. BBC News (2016年8月17日). 2016年8月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年8月17日閲覧。
  10. ^ 장재은 (2016年8月17日). “'귀순' 北 태영호, 55세 베테랑 외교관…'금수저'출신 서유럽통(종합2보)”. 聯合ニュース. 2016年8月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年8月17日閲覧。
  11. ^ 김호준; 장재은; 김효정 (2016年8月17日). “태영호 駐英 북한 공사 한국 귀순…가족과 함께 입국(종합4보)”. 聯合ニュース. オリジナルの2016年8月17日時点におけるアーカイブ。. https://archive.is/20160817135401/http://www.yonhapnews.co.kr/bulletin/2016/08/17/0200000000AKR20160817176954014.HTML?from=search 2016年8月17日閲覧。 
  12. ^ “태영호, 두달 전 英정보원 첫 접촉…독일 거쳐 한국행”. KBS 뉴스. (2016年8月21日). http://news.kbs.co.kr/news/pc/view/view.do?ncd==3332027&ref=A 
  13. ^ 金正恩政権、国民の蜂起で崩壊の可能性も 亡命した元高官が指摘 AFP(2017年11月2日)2017年11月3日閲覧
  14. ^ “太永浩「太救民の名前で出馬、北朝鮮の住民を救うという意味」”. 東亜日報. (2020年2月17日). http://www.donga.com/jp/article/all/20200217/1981194/1/%E5%A4%AA%E6%B0%B8%E6%B5%A9%E3%80%8C%E5%A4%AA%E6%95%91%E6%B0%91%E3%81%AE%E5%90%8D%E5%89%8D%E3%81%A7%E5%87%BA%E9%A6%AC%E3%80%81%E5%8C%97%E6%9C%9D%E9%AE%AE%E3%81%AE%E4%BD%8F%E6%B0%91%E3%82%92%E6%95%91%E3%81%86%E3%81%A8%E3%81%84%E3%81%86%E6%84%8F%E5%91%B3%E3%80%8D 2020年4月16日閲覧。 
  15. ^ 韓国保守系新党 元北朝鮮公使をソウル小選挙区の公認候補に”. 聯合ニュース (2020年2月28日). 2020年4月2日閲覧。
  16. ^ 北朝鮮、ミサイル連発は「親北」文在寅への援護射撃”. JB PRESS (2020年4月3日). 2020年4月2日閲覧。
  17. ^ ソウルの中心で異例選挙戦 脱北元外交官が立候補 対立候補は批判「国家機密扱えるのか」”. 毎日新聞 (2020年4月14日). 2020年5月2日閲覧。
  18. ^ “元北朝鮮公使の太永浩氏が当選確実 韓国総選挙”. 聯合ニュース. (2020年4月16日). https://jp.yna.co.kr/view/AJP20200416000200882 2020年4月16日閲覧。 
  19. ^ “韓国与党新代表に「親尹大統領」系の金起炫氏 政権安定運営へ”. 産経新聞. (2023年3月8日). https://www.sankei.com/article/20230308-2Y2BA7OKIZMANAFCSFU2ZKLAJ4/ 2023年3月8日閲覧。 
  20. ^ “元北朝鮮公使の太永浩議員 韓国与党最高委員を辞任”. 聯合ニュース. (2023年5月10日). https://m-jp.yna.co.kr/view/AJP20230510002000882?section=news 2023年5月11日閲覧。 
  21. ^ 정다빈 (2023年12月11日). “태영호 ″정청래 지역구 맞붙겠다…586 정치인 퇴출돼야″” (朝鮮語). 매일방송. 2023年12月23日閲覧。
  22. ^ 차지연 (2024年2月27日). “링 밖에 있지만…오세훈·인요한에 與 후보들 '헬프콜' 쇄도” (朝鮮語). 연합뉴스. 2024年3月5日閲覧。
  23. ^ a b 태영호 “탈북 엘리트 상당수 한국행 대기”” (朝鮮語). KBS 뉴스 (2017年1月17日). 2023年10月8日閲覧。
  24. ^ “脱北した駐英北朝鮮公使は平凡な家柄、夫人は名家の子孫”. ハンギョレ. (2016年8月19日). http://japan.hani.co.kr/arti/politics/24953.html 2017年9月19日閲覧。 
  25. ^ “태영호 국정원 산하기관서 부원장급 대우할 것”” (朝鮮語). 서울신문 (2016年12月19日). 2023年10月8日閲覧。
  26. ^ “「金正恩の時代、確実に終わる」 北朝鮮元公使が会見”. 朝日新聞. (2017年1月26日). http://www.asahi.com/articles/ASK1T6CQXK1TUHBI03Y.html?iref=com_alist_8_08 2017年1月26日閲覧。 
  27. ^ 한영익, 김기정 (2020年3月16日). “[단독] 통합당 선대위장 김종인 가닥…태영호 갈등 수그러들까” (朝鮮語). 중앙일보. 2023年10月8日閲覧。
  28. ^ [미디어워치] [변희재칼럼] 태영호 후보, 문재인과 김정은 묵인없이 출마할 수 있는가” (朝鮮語). www.mediawatch.kr (2020年3月16日). 2023年10月8日閲覧。
  29. ^ `태영호 망명` 도운 메이…세지포서 영화같은 만남” (朝鮮語). 매일경제 (2020年9月16日). 2023年10月8日閲覧。
  30. ^ 脱北元公使の自叙伝 2週連続1位=韓国書店ランキング.


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