千円紙幣 2024年度発行予定の新紙幣

千円紙幣

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/17 01:10 UTC 版)

2024年度発行予定の新紙幣

表面
裏面
  • 日本銀行券
  • 額面 千円(1,000円)
  • 表面 北里柴三郎
  • 裏面 葛飾北斎筆 「神奈川沖浪裏」(富嶽三十六景より)
  • 印章 〈表面〉総裁之印(特殊発光インキ) 〈裏面〉発券局長
  • 銘板 国立印刷局製造
  • 記番号仕様
    • 記番号色 黒色
    • 記番号構成 記号:英字2文字+通し番号:数字6桁+記号:英字2文字
  • 視覚障害者用識別マーク 右上隅・左下隅に斜線の連続模様(深凹版印刷)
  • 寸法 縦76mm、横150mm
  • 発行開始日 2024年(令和6年)7月3日[64]
  • 未発行

2024年(令和6年)上期を目処に、偽造抵抗力の強化やユニバーサルデザインへの対応など目的として[65]一万円券五千円券・千円券の3券種が同時に改刷される[66]

刷新後の千円紙幣はD千円券E千円券と同様の青色系を基調とした色合いで[67]、表面の肖像は医学者の北里柴三郎、裏面は世界的に著名な浮世絵である富嶽三十六景の「神奈川沖浪裏」(葛飾北斎筆)に変更予定である[68]。北里の肖像は50歳代の写真を基にしている[69]

表面の肖像画・透かし・額面の基本的なレイアウトは変更されていないものの、D号券・E号券では漢数字で額面が記載されていた箇所にアラビア数字で「1000」と大きく描かれ、漢数字による額面の「千円」は左上隅に、従来右上隅にあった「1000」の額面は右下隅に入れ替わる形で配置されている。裏面の右上隅のアラビア数字も非常に大きく描かれており、従来の日本銀行券とは印象が大きく異なる。またこの紙幣に使われている「1000」のアラビア数字の「1」の字体は新一万円券と異なり縦棒1本となっている。

記番号も8桁または9桁の形式から「AA000001AA」のような形式の10桁に変更される[68][注釈 8]

公表されている新たな偽造防止技術としては、高精細すき入れ模様とパッチタイプのホログラムが導入される予定である[70]。高精細すき入れは、北里柴三郎の肖像の透かしの背後に緻密な格子模様をすき入れたものである[71]。ホログラムの図柄は3Dホログラムで、見る角度によってホログラムの図柄の北里柴三郎の肖像の顔の向きが連続的に変化して回転しているように見えるものであり、紙幣の偽造防止対策として採用されるのは世界初である[71]。この他、E号券でも搭載されていた、マイクロ文字特殊発光インキ深凹版印刷潜像模様、パールインク、すき入れバーパターン等の偽造防止技術も引き続き採用される[72][73]

視覚障害者のための識別マークは券種識別性向上のため形状が変更され、左右隅に深凹版印刷による斜線の連続模様が配置されている[70]。また券種ごとにホログラムや透かしの位置を変えるなど識別マーク以外でも区別しやすいよう考慮されている[70]

寸法については、変更すると自動販売機ATMなどの紙幣取扱機器への影響が大きいため、従来通りとなっている[67]

2019年(平成31年)4月9日に改刷が発表され[66]2021年(令和3年)9月10日より新千円券の製造が開始された。発行予定日の5年も前に改刷が発表され2年半ほど前から製造されたのは、前回のE号券への改刷時に準備期間が短かったために自動販売機やATMの改修が間に合わず半数程度しか対応できなかった反省から[74]、自動販売機やATMその他の新紙幣を扱う各種機器の改修の際にテストを入念にし、障害やトラブルが起きないようにするためとされる[75]

2021年(令和3年)9月に発表された新千円券の見本のデザインでは、2019年(平成31年)4月の改刷発表当時に公表された当初のラフスケッチ[66]からの変更点として、表面の額面金額の大きなアラビア数字「1000」の下の発行元銀行名「日本銀行」の文字の更に下に「BANK OF JAPAN」の発行元銀行名の英語表記が追加されているほか、視覚障害者のための識別マークの斜線が9本から11本に増やされている[76]。発行元銀行名の表記について、ローマ字の「NIPPON GINKO」の表記は従来の日本銀行券でも採用されている券種が多かったが、英語の「BANK OF JAPAN」の表記は日本銀行券史上初となる。

使用色数は、表面13色(内訳は凹版印刷による主模様2色、地模様9色、印章1色、記番号1色)、裏面8色(内訳は凹版印刷による主模様1色、地模様6色、印章1色)となっている。


注釈

  1. ^ 1942年(昭和17年)4月16日付け大蔵省告示第178号「昭和十六年法律第十四號第三條ノ規定ニ依リ兌換銀行券條例第三條ニ規定スルモノノ外日本銀行ノ發行スル兌換銀行券ノ種類ニ千圓券ヲ追加シ本年四月二十日ヨリ之ヲ發行ス」では同年4月20日と予告されていた。
  2. ^ 本殿は現存するものの、手前に拝殿が増築され拝殿と本殿を結ぶ回廊が建てられたため、現在では同じ風景を眺めることはできない状態となっている。
  3. ^ 特にA号券では多数の民間委託先で分散して製造を行った結果、一部で管理が行き届かず製造管理や品質管理、秘密保持が不十分となり、そのことが偽造券が多発する原因の一つとなっていた。
  4. ^ ちなみに、千円券としては、C号券が発行されるまではB号券が発行・流通されていた訳であり、C号券の千円券、五千円券、一万円券は、別々の年月日に発行されているが、一万円券は発行開始日が1958年(昭和33年)12月1日、五千円券は、発行開始日が1957年(昭和32年)10月1日で、千円券は、発行開始日が1963年(昭和38年)11月1日である為、千円券のみ、C号券が発行されるまでのB号券が発行・流通されていた間は、千円札、五千円札、一万円札は全て、聖徳太子の肖像のお札であった。
  5. ^ マイクロ文字、特殊発光インキ、深凹版印刷、潜像模様、パールインク等。
  6. ^ D千円券では黒色→青色→褐色→暗緑色と記番号の印刷色が変更されているが、青色→褐色の変更は記番号の組み合わせの枯渇ではなくミニ改刷に伴うものであり、その他の券種では記番号の印刷色変更は最大1回しか行われていないため。
  7. ^ このほか、E一万円券は「左下隅L字・右下隅逆L字」、E五千円券は「八角形」、D二千円券は点字の「に」を模した「丸印が縦に3つ」の識別マークである。
  8. ^ B号券からE号券までの紙幣では全券種ともに製造番号の両端の英字が各1桁、つまり「A000001A」から始まっていた。「Z900000Z」まで使い果たすと左側の英字だけ「AA」と2桁に変わるが、右端の英字は必ず1桁であったため最終番号は「ZZ900000Z」となり、それを使い果たすと文字色を変更して「A000001A」に戻る形式だった。新紙幣では1桁制が廃止され両端とも初めから2桁の英字、すなわち「AA000001AA」から製造開始される形となった。
  9. ^ 広義では二千円紙幣も
  10. ^ A十円券では、肖像の図柄が不適当であるとのGHQの指示により伐折羅大将像が国会議事堂に差し替えられた。
  11. ^ A百円券と同様のもの
  12. ^ 同様の対応を行ったA百円券の場合、流用元のい百圓券が不換紙幣の「日本銀行券」であったためこの問題は発生しなかった。

出典

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