内閣 (日本)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/07 23:32 UTC 版)
地位
内閣の位置付けについては、日本国憲法第5章が規定している。
- 三権分立のうち行政権を担当する最高機関として、国会(立法)、裁判所(司法)と並ぶ憲法上の機関である。
- 国会に対して連帯して責任を負う(日本国憲法第66条)。
- 議院内閣制をとる。
- 内閣総理大臣に首長的地位(政府の長)を与える。
- 内閣総理大臣に国務大臣の任免権を保障する。詳細は「罷免」を参照
大日本帝国憲法は、天皇を国家元首としていたが、現行の日本国憲法には元首に関する規定はなく、内閣(または首相)を元首とする説など諸説がある[2]。
学説の大多数は、条約締結や外交使節任免および外交関係処理の権限をもつ内閣、もしくは行政権の首長として内閣を代表する内閣総理大臣を元首としている[3]。
構成
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内閣は、内閣総理大臣及びその他の国務大臣から組織される(日本国憲法第66条1項、内閣法2条1項)。
内閣総理大臣
内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決を経て指名され、天皇が任命する(日本国憲法第67条、日本国憲法第6条1項)。
国務大臣
国務大臣は、内閣総理大臣が任命して、天皇が認証する(日本国憲法第68条1項、日本国憲法第7条5号)。国務大臣として任命された者は、内閣総理大臣から具体的な担当事務について補職辞令がなされる(例:外務大臣を命ずる)。国務大臣の過半数は、国会議員の中から選任しなければならない(日本国憲法第68条1項)。
また、内閣総理大臣は、任意に国務大臣を罷免することができる(日本国憲法第68条2項)。国務大臣の数は、14人以内とされている(内閣法2条2項)。ただし、特別に必要がある場合においては、3人を限度にその数を増加し、17人以内とすることができる(同条項ただし書き)。
なお、内閣法附則2項の規定により、国際博覧会推進本部が置かれている間は内閣法2条2項の「14人」は「15人」、「17人」は「18人」となり、同3項の規定により東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会推進本部が置かれている間は2項の規定に関わらず内閣法2条2項の「14人」は「16人」、「17人」は「19人」となり、同4項により復興庁が廃止されるまでの間は2項・3項の規定に関わらず内閣法2条2項の「14人」は「17人」、「17人」は「20人」となるため、期間によって国務大臣の数が増員されることがある。
国務大臣をもってあてられる職は、内閣法、国家行政組織法、その他個別の法律によるため、中央省庁の長であるからといって国務大臣であるとは限らない(例:金融庁長官、宮内庁長官、公正取引委員会委員長などは国務大臣ではない)。逆に、内閣府特命担当大臣・担当大臣のようなスタッフ的な閣僚も存在し、無任所大臣を設置することも認められている。
組閣の手続
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内閣を組織する(組閣)には以下の手順が踏まれる。
- 国会(下院:衆議院、上院:参議院)が、日本の国会議員(衆議院議員及び参議院議員)の中から新たな内閣総理大臣を指名する(内閣総理大臣指名選挙。首班指名とも呼ばれる)。
- 天皇が内閣総理大臣を任命する(親任式)。明治憲法・内閣官制下では大命降下があったが、現憲法下では国会の指名に基づく国事行為である。
- 内閣総理大臣が国務大臣を任命する。
- 天皇が国務大臣の任命を認証する(認証官任命式)。これにより内閣が完成する。
- 内閣総理大臣が国務大臣の職を指定する(補職辞令。例:法務大臣を命ずる)。
一般には組閣本部における人事選考は内閣総理大臣の任命前に行われる。つまり次期首相となる者は国会の指名を受けた者という資格において組閣の準備に取りかかることが一般的となっている[4]。
内閣総理大臣の任命によって従前の内閣はその地位を完全に失うことになるが(日本国憲法第71条)[5]、内閣は合議体であることを本質とすることから内閣総理大臣が一人で内閣を構成している状態は望ましくはなく、内閣総理大臣の任命の時期から他の国務大臣の任命・内閣の成立までは極めて短い期間であることが憲法上期待されていると解されるためである[4][5]。
実際には内閣総理大臣や内閣総理大臣周辺などから入閣予定者に対して、組閣当日は待機するように事前連絡があり、首班指名の後、内閣総理大臣官邸に組閣本部が設置されると、順次官邸に来るよう呼び出しの電話があることが多い。その後、与党による閣僚名簿の了承や、親任式・認証官任命式が併せて行われる。
職務
日本国憲法第73条による職務
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表 (左) は旧総理大臣官邸、裏は内閣公印の意匠
- 法律の執行、国務の総理(憲法第73条1号)
- 外交関係の処理(憲法第73条2号)
- 条約の締結(憲法第73条3号)
- 条約の締結は内閣の職務であるが、その成立、発効には国会の承認が必要とされる。承認は事前が原則であるが、事後であってもよい。
- 官吏(公務員)に関する事務の掌理(憲法第73条4号)
- 予算の作成と国会への提出(憲法第73条5号)
- 政令の制定(憲法第73条6号)
- 大赦、特赦、減刑、刑の執行免除、復権の決定(憲法第73条7号)
- 他の一般行政事務(憲法第73条柱書)
憲法第73条以外の職務
- 天皇の国事行為についての助言と承認 - 内閣はその責任を負う。
- 最高裁判所長官の指名
- 国会の臨時会の召集の決定
- 参議院の緊急集会の要求
- 最高裁判所と下級裁判所の裁判官の任命
- 予備費の支出
- 決算の国会への提出
- 国会に対する財政報告
閣議
内閣がその職権を行使するのは、閣議によるものとされている(内閣法4条1項)。閣議は、内閣総理大臣が主宰し(同条2項)、内閣総理大臣はこの場において、内閣の重要政策に関する基本的な方針その他の案件を発議することもできる(同条)。また、各国務大臣は、案件の如何を問わず、内閣総理大臣に提出して、閣議を求めることができる(同条3項)。
内閣制度発足以来、閣議の議事録は作成されてこなかったが、2014年4月1日から議事録が作成され一部を除き公開されることとなった[6]。
内閣総理大臣は、閣議にかけて決定した方針に基いて、行政各部を指揮監督する(内閣法6条)。主任の大臣の間における権限についての疑義は、内閣総理大臣が、閣議にかけて裁定する(同法7条)。
法案の提出
国会で成立する法案の大半は閣法(内閣提出法律案、政府提出法案)であり、関係省庁がいわゆる「タコ部屋」と呼ばれる準備室を設置し、法案を作成する。
日本国憲法には内閣による法律の発案権について大日本帝国憲法第38条相当の規定がないため、学説上の対立が生じた[7]。政府は日本国憲法第72条「内閣総理大臣の議案提出権」を根拠として法律発案権を認め、内閣法第5条を規定した[7]。この解釈は通説の支持を得ているが、有力な異論も存在する[7]。
注釈
出典
- ^ “内閣官房組織等英文名称一覧”. 内閣官房. 2020年10月18日閲覧。
- ^ 河合秀和『情報・知識 imidas 2015』JapanKnowledge、2015年。"「元首[政治理論]」の項"。
- ^ 田中浩「元首」、『日本大百科全書』 小学館、2016年。
- ^ a b 佐藤功著 『新版 憲法(下)』 有斐閣、1983年、865-866頁
- ^ a b 樋口陽一・中村睦男・佐藤幸治・浦部法穂著 『注解法律学全集3 憲法Ⅲ(第41条~第75条)』 青林書院、1998年、229頁
- ^ “閣議の議事録、初めて公開 NSCにも作成義務”. 日本経済新聞. (2014年4月22日) 2014年10月6日閲覧。
- ^ a b c 高見 2003, pp. 5–6
- ^ a b 五十嵐吉郎 「内閣官房、内閣府の現在-中央省庁等改革から13 年目を迎えて- (PDF) 」『立法と調査』347号、参議院事務局企画調整室、2013年、2018年9月9日閲覧。
- ^ 高松宮家『熾仁親王行実 上巻』。1929年。
- ^ a b 鈴木(2002)p.284
- ^ 板垣退助 監修『自由党史(下)』遠山茂樹、佐藤誠朗 校訂、岩波書店(岩波文庫)1992年、150頁
- ^ 内山奈月、南野森 (2014年7月). “憲法主義 : 条文には書かれていない本質”. PHP研究所. p. 109-111. 2016年4月26日閲覧。
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