佐々木惣一 研究内容、思想、業績

佐々木惣一

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/22 03:40 UTC 版)

研究内容、思想、業績

立憲主義の擁護

1916年、政党政治への不信が強まっていた時代に、論文「立憲非立憲」を発表し、「門地や職業に依て限られた範囲の国民」を「上級国民」と名付け[14]、上級国民の意思による政治は立憲主義でなく、一般の国民がその意思を政治に反映させて初めて立憲主義が生まれるのだと、立憲主義の価値を説いた[15]

之を西洋の制限君主制度の発達に徴するに、政治に参加せしめらるるの国民の範囲は、始めは狭かった。即ち門地や職業に依て限られて居た。後それが発達して遂に、一般の国民の参加を認むるに至ったのである。門地や職業に依て限られた範囲の国民――仮に之を上級国民と云うて置こう――が、その意思を政治に参加せしむることも制限君主主義であるが、而(しかれど)も立憲主義ではない。一般の国民が其の意志を政治に参加せしむるに於いて始めて立憲主義を生ずるのである。 — 佐々木惣一『立憲非立憲』弘文堂書房、1918年

1940年、革新的な新体制運動にともなって結成された大政翼賛会には一貫して反対し、自由保守主義を擁護し続けた。佐々木は中央公論1940年10月号寄稿論文「新政治体制の日本的軌道」において、日華事変の長期化を理由とした新体制運動の議会否定の思想を批判、ナチス・ドイツに範をとった一党独裁のファシズムは日本の政治的伝統とかけ離れ、帝国憲法の運用に適っておらず、非立憲的である、と主張した[16]

憲法に関して

  • 憲法改正の範囲に限界はない(基本原理であっても改正可能である)と主張した。この考えに従うと、日本国憲法の成立過程において明治憲法に則った改正手続きをとりつつ明治憲法の基本原理を書き換えた(天皇主権国民主権への改正など)ことを容易に説明することが可能である。ただし、現在は憲法改正の範囲には限界があるとする学説が圧倒的に優勢である。
  • 憲法9条
  • 押し付け憲法論

学問の自由の擁護

佐々木惣一の生涯は、学問の自由を守るための闘いだったといっても過言ではない。その学者としての態度は1922年(大正11年)、彼が鳥取中学校『創立五十年』に送った文章の中にも見られる(表記は新字体と現代仮名遣いに改めた)。

我々は中学時代から久しく何でも偉くなろうと志した。しかし偉いとはどんなのかということについては今日ようやく気がつくようになったのである。…シルクハットをかぶり、大礼服を着、金持となり、華族となることが出来るようになればなるほど、それだけ正しい人となることが出来なくなるのだと思うことすらある。今の私にとっては正しい人が最も偉い人なのである。 — 『鳥取県郷土が誇る人物誌』263頁

一個人として

趣味は読書と俳句。信仰は仏教[4]


  1. ^ a b 『議会制度百年史 - 貴族院・参議院議員名鑑』125頁。
  2. ^ 京都市:京都市名誉市民”. 京都市情報館. 2021年6月10日閲覧。
  3. ^ a b c d 京都市:京都市名誉市民 佐々木 惣一氏”. 京都市情報館. 2021年6月10日閲覧。
  4. ^ a b c 第廿一版 人事興信録 』 1961年、さ一三
  5. ^ a b c 『鳥取県大百科事典』363頁
  6. ^ 三浦百重(鳥取大学学長、鳥取市名誉市民)によれば、「先生は明治十一年三月鳥取市西町十一番地に生まれたとその履歴書(注・京都市作製)にはなっているが、この点は、私の聞いた限りでも巷間諸説があり、中には近郊の生まれで幼時両親に伴われて鳥取市に移り、その後も数次居を転じた為め諸説が生じたのであると云う人もある。いま之を明らかにする途はないが狩野教授が佐々木先生から直接依頼されて作った“夢松菴記”のうちに…教授(注・佐々木先生)曰吾郷有山曰久松其麓吾幼時居也…(注・吉川教授編―君山文巻五)とあることによっても、郷里は鳥取市としてよいであろう。」という(『鳥取県百傑伝』、224頁))
  7. ^ 佐々木惣一「織田萬博士の追憶」(公法研究一八号)
  8. ^ 伊﨑文彦 2009, p. 17.
  9. ^ a b c 人物紹介 | 日本国憲法の誕生
  10. ^ Company, The Asahi Shimbun (2016年3月21日). “[2]佐々木惣一と吉野作造 - 石川健治|論座 - 朝日新聞社の言論サイト”. 論座(ロンザ). 2020年1月27日閲覧。
  11. ^ 松尾尊兊 2009, p. 117、133-136.
  12. ^ 『官報』第5748号、昭和21年3月14日。
  13. ^ 「故佐々木氏の告別式」『日本経済新聞』昭和40年8月5日.15面
  14. ^ 山田航 (2020年1月25日). “(耕論)「上級国民」流行する国 吉川徹さん、與那覇潤さん、山田航さん:朝日新聞デジタル”. 朝日新聞デジタル. 2020年1月27日閲覧。
  15. ^ 伊﨑文彦 2009.
  16. ^ 江崎, pp. 235–239.
  17. ^ 魚問屋勤務
  18. ^ 近代日本思想大系33『大正思想集I』所収、筑摩書房、1978年


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