亡命政府
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/30 16:01 UTC 版)
亡命政府に准ずる政権(現在および近年)
1. 外国に脱出したわけではないが、国内の辺境地域などで自らの正統性を標榜し、新政権への抵抗を続ける政権。
- 中華民国 - 第二次世界大戦後、南京の国民政府(蔣介石政権)が中国大陸と台湾を統治。しかし、国共内戦で中国共産党が勝利した結果、1949年以降は中華人民共和国が北京を首都として中国大陸を統治し、蔣介石政権は首都機能を台北へ移して台湾地区のみを統治する政府と変質した。ただし、中華民国の立場からすれば、中央政府の台北移転はあくまでも内戦の悪化にともなう非常措置であり、今日でも中華民国政府は正式な首都の移転(遷都)、及び中国大陸の領土放棄を宣言していない。そのため、中華民国政府は今なお「中国全土を代表する政府」であり、「台湾地区だけを治める政府」ではないと主張している。
- 北部同盟 (アフガニスタン) - 1992年以降、カーブルを首都とするアフガニスタン・イスラム国としてアフガニスタンを統治。しかし、1990年代半ばまでの内戦でターリバーンが勝利した結果、1996年以降はターリバーン政権がアフガニスタンの大部分を支配し、反ターリバーン勢力は北部同盟を結成してアフガニスタン北部を支配する「従来からのアフガン政府」となった。2001年のアメリカによるターリバーン攻撃でターリバーン政権が崩壊した後、北部同盟の各勢力は国際連合主導の新政府樹立プロセスに参加し、2021年8月に崩壊したアフガニスタン・イスラム共和国に合流した(アフガニスタンは復活したターリバーン政権に掌握されている)。
- ガザ政府 - パレスチナ自治政府内部における大統領派と議会派及びその内閣との対立により2007年にアッバス大統領に解任されたハニーヤ首相とその内閣がガザ地区に移転し設立。パレスチナの正統な政府を主張しヨルダン川西岸地区の大統領派率いる自治政府と対立状態になった。その後2014年に暫定統一政府が発足したが維持することができず事実上崩壊、現在も二つの政権がある状態に成っている。
- イエメン - 2015年のフーシ派のクーデター以降、首都サナアを含めた国内の主要都市の大部分がフーシ派政権と分離独立派の南部暫定評議会政権の統治下にあり、首都から脱出したイエメン政府閣僚とその政府(国際的に承認されたイエメン政府)の統治下にあるのは辺境の一部地域のみの状態が続いている。
2. もともとの「国家」が、国際法上では認められていない場合
- 西ドイツ・シーランド亡命政権 - 1978年にシーランド公国の首相に任命されたドイツ人投資家のアッヘンバッハは国家元首のロイ・ベーツ公の息子・マイケル皇太子を人質に取ってクーデターを起こしロイ・ベーツ公を一度公国から追放したが、ロイ・ベーツ公は公国を急襲し反乱を鎮圧。この後、アッヘンバッハはシーランド公国の「枢密院議長」を名乗り、西ドイツで亡命政府を樹立させた。ただし、シーランド公国自身、国際法上の国家成立要件を満たしているかは疑わしい。
- 自由都市ダンツィヒ亡命政府
3. その他
- マルタ騎士団 - 1798年に領土であるマルタ島を失ったが、現在も「主権実体」として世界90カ国以上と外交関係を結び、ローマに在る本部はイタリア政府から治外法権を認められている。現在マルタ島を実効支配しているマルタ共和国とは敵対関係にはなく、外交関係が結ばれている。
- 以北五道委員会 - 大韓民国では憲法上朝鮮半島全土を国土としており、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)を国家承認せず自国の一部と見なしている。そのため韓国が実効支配していない黄海道・平安南道・平安北道・咸鏡南道・咸鏡北道(=軍事境界線以北5道)の「道庁」がソウル市内に存在している。
- ^ “タリバン、国連総会で演説の機会求める「前政権の大使はアフガンを代表していない」と”. BBC (2021年9月22日). 2021年9月22日閲覧。
- ^ “Karabakh representative office in Armenia now houses Artsakh government, under President’s leadership”. News.am. (2023年10月16日) 2023年10月20日閲覧。
- 1 亡命政府とは
- 2 亡命政府の概要
- 3 亡命政府に准ずる政権(現在および近年)
- 4 近代国家成立以前
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