モース-ケリー集合論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/01 10:16 UTC 版)
ケリーの General Topology における公理
この節における公理と定義は、一部の詳細を除き、 Kelley (1955) の付録から採った。以下の説明文は彼のものではない。付録では 181 個の定理と定義を説明し、公理的集合論の第一級の現役数学者による簡略説明であることに注意して読むことができる。ケリーは、以下の 構築 に列挙されている内容を展開するために、必要に応じて徐々に公理を導入した。
表記法について、今日よく知られているものは定義しない。また、ケリーによる表記法で特殊なものは以下の通り:
- ケリーはクラスの範囲の変数と集合の範囲の変数を区別しない。
- domain f は range f は関数 f の定義域と値域を表す。この特殊性は以下で重視される。
- ケリーの原始論理言語には (A(x) を満たすすべての集合 x のクラス) という形のクラス抽象を含む。
定義: 任意の y に対して であるならば、 x は集合である(そして故に真のクラスではない)。
I. 外延性: 各 x と各 y に対して、「各 z に対して である場合かつその場合に限り である」場合、かつそのその場合に限り、x=yが成り立つ。
これは前述の 外延性 と同じである。I の範囲に集合だけでなく真のクラスを含む点を除いて、 I は ZFC における外延性の公理と同じになる。
II. クラス化(公理図式):
- 各 に対して、 が集合であり を満たす場合、かつその場合に限り、 である。
上記の言明において、 α と β をある変数で、 A をある論理式 C で、そして B をある論理式で置き換えたものが主張する公理である。B を置き換える論理式は、論理式 C について、α を置き換えた変数を、β を置き換えた変数で再度置き換えることで得られる。ここで、β を置き換える変数は A の中には出現しない。
III. 部分集合: x が集合であるならば、各 z に対して であるならば であるような集合 y が存在する。
III は、前述の冪集合に対応する。III から冪集合公理が成り立つことの証明の概略は以下の通り: 集合 x の部分クラスである任意の クラス z に対して、クラス z は III で存在を主張する集合 y の要素である。故に z は集合である。
IV. 和集合: x と y が両方とも集合であるならば、 は集合である。
IV は、前述の対に対応する。IVから対の公理が成り立つことの証明の概略は以下の通り: 集合 x の単集合 は集合である。なぜならば x の冪集合の部分クラスであるからである(III を2箇所で用いた)。すると IV は「x と y が集合であるならば、 が集合である」を含意する。
構築: 順序なし対および順序対、関係、関数、定義域、値域、関数の合成。
V. 置換: f が [クラス] 関数であり domain f が集合であるならば、 range f は集合である。
VI. 合併: x が集合であるならば、 は集合である。
VI は前述の 和集合 に対応する。 IV と VI は一つの公理にまとめられることがある[3]。
VII. 正則性: であるならば、 である x の要素 y が存在する。
VII は前述の基礎に対応する。
VIII. 無限: のときは かつ となる集合 y が存在する。
この公理(または等価なもの)は ZFC や NBG に含まれる。 VIII は、無限帰納集合 y と空集合 という、2つの集合が無条件に存在することを主張する。 は、y の要素であるため、集合である。この時点までは、証明されていたものがすべてクラスであり、ケリーの集合の議論は完全に仮説であった。
構築: 自然数、N が集合であること、ペアノの公理、整数、有理数、実数。
定義: c が関数であり、かつ domain c の各要素 x について であるならば、c は選択関数である。
IX. 選択: 定義域が である選択関数 c が存在する。
IX は前述のサイズ制限から導出される大域選択公理に非常によく似ている。
構築: 選択公理と等価な命題。ZFC の場合、基数の構築のためにある種の選択公理が必要になる。
前述の公理において、すべての量化変項の範囲が集合に制限されている場合、III 以外の公理と公理図式 IV は ZFC 公理となる。IV は ZFC で証明可能である。故にケリーによる MK の定義では、MK が ZFC と異なる点は、変項の範囲が真のクラスと集合である点とクラス化公理図式がある点であることが明確になる。
- 1 モース-ケリー集合論とは
- 2 モース-ケリー集合論の概要
- 3 ケリーの General Topology における公理
- 4 参考文献
- 5 外部リンク
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