プラモデル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/15 06:53 UTC 版)
製品
よく使われる素材・材質
- ポリスチレン (PS = Poly-Styrene)
- プラモデルの材料としては最も多く使用される。プラモデルで「プラ」といった場合、広義では合成樹脂一般(ABSなども含める)をさすが、狭義ではポリスチレンのみを指す。エナメル系溶剤に侵食され、劣化する性質がある。透明のものは飛行機キットのキャノピーや自動車キットの窓ガラスなどに用いられるが、しなやかさがないため非常に砕けやすく、瞬間接着剤などで白濁することも多い。タミヤやエバーグリーン[要曖昧さ回避]ブランドの各種素材もポリスチレンである。ドイツ語であるスチロール (Styrol) と呼ばれることもある。
- ABS (ABS = Acrylonitrile-Butadiene-Styrene)
- アクリロニトリル、ブタジエンゴム、スチレンを混ぜたもの。配合比率によって物性に差はあるが、ポリスチレンよりも割れにくく磨耗も少ない。このため、負荷のかかるキャラクター模型の関節部や動力模型のシャーシ(ミニ四駆や電動RC)などのパーツがABSで成型されることが多い。溶融接着には専用のABS樹脂用の接着剤を必要とする。また切削性もポリチスチレンよりも粘り気が強い。
- ポリプロピレン (PP = Poly-Propylene)、ポリエチレン(PE=polyethene)
- いわゆるポリキャップとしてロボットキットなどの関節部ヒンジに多用される軟質樹脂。柔軟性が高く磨耗が少ない反面、ほとんどヤスリがけができない、そのままでは塗装もできないといった欠点もある。モーター走行する戦車キットのベルト式キャタピラとして、1970年代からゴム製のものに代わって多く使われるようになり、ディスプレイモデル用としても使用されている。
- その他の樹脂
- 金属類
- エッチングパーツや自動車のシャフト、ギアボックス、ネジなど各種金属が補助的に使用される。
有名なシリーズ
- ミリタリーミニチュアシリーズ 1/35 タミヤ
- ウォーターラインシリーズ 1/700 タミヤ、長谷川製作所、青島文化教材社
- ミニボックスシリーズ1/72 ハセガワ
- ミニボックスEシリーズ1/72 ハセガワ
- 機甲師団シリーズ1/48 バンダイ
- デコトラシリーズ1/32 青島文化教材社
- ガンプラ 各種スケール バンダイスピリッツ(以下バンダイ)
- マシーネンクリーガー 日東、ウェーブ、ハセガワ
- ロボダッチ 今井科学 一部は青島文化教材社から再発売
- 合体マシン 青島文化教材社
- アニメスケール 各種スケール 青島文化教材社
- ミニ四駆 1/32 タミヤ
- たまごひこーき ハセガワ
- フレームアームズ・フレームアームズガール 壽屋
- D-Style 壽屋
- デスクトップアーミー メガハウス
- MODEROID グッドスマイルカンパニー
- Figure-rise Standard バンダイ
- PLAMAX マックスファクトリー
- ヘキサギア 1/24 壽屋
- プラアクト ピーエムオフィスエー
- ゾイド タカラトミー
- リトルアーモリー 1/12 トミーテック
- ファイブスター物語 wave、ボークス
- 5inch Mechanism ピーエムオフィスエー
- 30 MINUTES MISSIONS・30 MINUTES SISTERS バンダイ
デカールの制限
プラモデルに含まれるデカールや箱絵には、社会的要因による制限が一部加えられている。そのために製品化や旧製品の再生産が困難になったり、やむを得ず一部分の完璧な再現を断念せざるを得なかったりといった問題も生じている。
- タバコ広告
- 1990年代以降、多くの国でタバコ広告の規制が強化された。そのため、多くのF1、WRCといったレースカーのキットに付けられていたタバコメーカーのスポンサーロゴも規制の対象とされ、その後発売されたF1レースカー製品ではデカールからタバコメーカーのロゴが削除されたり、別のものに差し替えられてしまっている。タバコメーカーがメインスポンサーだった一部の車種では、削除や差し替えすら難しいためキット自体が生産困難な状態となっているものもある。
- その他企業ロゴに関する制限
- 2000年代以降は企業の知的財産権管理強化の関係から、タバコ以外の企業についてもロゴが削除・或いは差し替えられたものが現れている。
- ハーケンクロイツ
- 第二次世界大戦時のドイツ機の垂直尾翼に描かれていた鉤十字(スワスティカ)は、ナチス・ドイツのシンボルマークであり、現在ドイツでは公の場での使用や掲示が法律により禁止されている。その影響で、1990年代以降多くのメーカーでは箱絵とデカールからスワスティカや本来ナチスとは無関係のフィンランドのハカリスティを削除している。日本国内ではスワスティカの使用に全く制限はないが、輸出を考慮して日本メーカーの多くもこれに倣っている。一部の日本メーカーでは日本国内出荷分にのみスワスティカのデカールを付けているが、多くの場合箱絵は勿論組立て説明書にも明示は無く、オマケ扱いとなっている。また、スワスティカを十字や田の字形に変えたり、二分割してそのままではスワスティカに見えない形でデカールにしているメーカーもある。
コピー製品
プラモデルにおいては、部品の分割方法や面の表現、対象の立体としての解釈など設計段階で開発者の個性が強く表れる。異なるメーカーが同一の題材を製品化した際に、他のメーカーの商品をコピーしたと指摘される場合が有る。これは前述の分割方法や成型パーツの配列などにおいて、他社の既存製品と比較し同一または酷似しているものが対象となる。
ただし他の工業製品と同じく、金型や製品が他社に売却、またはOEM供給されて別パッケージで発売されることがあり、これがコピー品と間違われやすい。また、1/72以下の小スケールのキットでは、部品分割に個性を発揮できる余地が少ないため、偶然似通った部品分割となる場合もある。
日本のプラモデル黎明期には、先行するアメリカやイギリスのキット製品を原型としてコピーしたものが存在した。原型製品とは異なるパーツ配列としたり、原型製品と比較しギミックやモールドを新しく追加または省略したコピー製品も存在した。部品分割が全く異なっていても、形状の特徴から他の製品を参考にしているのが明らかなものもあった。
プラモデルのコピー製品では、原型製品において模型雑誌やモデラーから問題点として指摘された部分を修正したり、原型メーカーが発売していない派生製品を発売する場合もある。ただし、大部分のコピー製品は精密度において原型製品に劣っている。
ここでは具体的なコピー製品の例として韓国のアカデミー製品について解説する[注釈 16]。
- 1/72 A-10 1/72 MiG-23/27 1/48 F-16
- ハセガワ製品が原型と指摘されているアカデミー製品。A-10やMiG-23/27では開発時期の古い原型キットの凸モールドが凹モールドへ修正された。F-16では同一パッケージで複数の形式に対応すべく細かい部品の分割手法が変更され、各種搭載品を追加するなどの修正が行われた。
- 1/35 M113・M60パットン・メルカバ・センチュリオン
- タミヤ製品が原型と指摘されているアカデミー製品。原型製品とは異なり、大量のアクセサリーの追加や原型には無い改良型(M113)や発展型の車両(メルカバ)、イスラエル国防軍仕様(M113、M60)などが発売された。例えばメルカバIIIなどは転輪パーツ以外はオリジナルとなっており、高価なガレージキットを購入したりスクラッチビルドをする必要が無くなったため、購入者からすれば恩恵の方が大きいとも言える。なおセンチュリオンは日本には輸入されていないが、生産停止となったタミヤ製品に代わって欧米市場ではポピュラーな製品となった。
- 1/48 Su-27
- アカデミー製品が原型と指摘されているトランペッター製品。原型キットの問題点をそのままコピーしており工作精度の問題から原型に劣る。
注釈
- ^ (くらじたかし 2001)によればマルサン商店はプラモデルと同時に「プラスチックモデル」と「プラモ」も商標登録したが数年後に取り下げたとされ、どちらも1960年代前半には既に一般的な名称として使用されている。初の国産プラモデルの発売を報じた昭和33年12月15日付の『日本模型新聞』の記事でも、「プラスチック・モデル・キット」をマルサン商店の登録商標としている。
- ^ 当時マルサン商店は小売店に対しても他社製品を「プラモデル」と呼ばないよう強く求めていた。また「プラモデルと呼べるのはマルサンだけ」というキャッチフレーズは自社がプラモデルのパイオニアであることを誇示するとともに、「プラモデル」の普通名詞化をけん制する意味合いも強かった。
- ^ (神永英司 2009, p. 175)には1975年に三ツ星商店に売却され、翌年日本プラスチックモデル工業協同組合に移譲されたと解釈できる記述があるが、日本プラモデル工業協同組合の公式サイトでは1975年に権利を得たとされている。
- ^ (日本プラモデル工業協同組合 2008, p. 179)には「日本プラモデル工業協同組合加盟各社は自由に使用できる」旨の記述がある。一方、(日本プラモデル工業協同組合 2008, p. 66)には「現在ではプラスチックモデルの愛称として誰でも自由に使えるようになっている」との記述もある。
- ^ 付属の接着剤は短期間での使い切りを前提としていたため(キャップ付も存在する)、使い勝手が悪く量も十分ではなかったので、別売のビン入り接着剤を使用するモデラーが多かった。
- ^ 但し2002年に鉄道模型化可能な組み立て式鉄道玩具Bトレインショーティーが発売されている。
- ^ 一例としてカーモデルでは、1990年代まではセダンやコンパクトカー、軽自動車やワンボックスカーといった一般的な現行車が製品化されていたが、2000年代以降はスーパーカーやレーシングカー、旧車といった趣味性の強い車種の製品化が増え、前述した車種の製品化が大幅に減少している。
- ^ プロの自動車モデラーである北澤志朗氏は「クルマ好きの人でも、スケールモデルは塗装することを知らない人が多い。複雑な部品の成型が可能になったことにより、かえってパーツが細かくなりすぎてどこから手を付ければいいのか分からず、説明書もアルファベットの記号ばかりで分かりにくい。組み立てにも様々な道具が必要で、一式揃えるとなるとその価格はプラモデル1点以上になってしまう。そうした様々な要因がプラモ離れにつながっているのではないか」と述べている。[7]
- ^ とりわけ、2010年代以降は1/18、1/24とスケールモデルと直接競合するビッグスケールのミニカーも多数登場している。
- ^ Pカッターはオルファの商品名だが、同種の工具の通称としても使用される。
- ^ これまでのエアブラシ用の調整を簡便化したエアブラシ専用うすめ液との等倍希釈で簡単に使用可能となった。
- ^ ただしエアブラシによる塗装では、ラッカー系では多湿環境下で白く曇る(「かぶり」と言う)が、エナメル系では起きない。
- ^ 実質はプラ素材と接着しない性質をもつ水性接着剤で、ゴム素材の有無で特性が変化する。
- ^ なおサーフェイサーを用いない面に塗装する技法を"サフレス塗装"と呼ぶ。
- ^ これを防ぐ技法として、比較的遠方から乾燥速度を調整して半乾きの霧状で塗布して行う"砂吹き"があり、この後に出来る梨地の表面を研磨平滑化する"磨き込み"作業を以って仕上げそれに拠って金属光沢を守る事が出来る。この技法はその他に塗装が光沢仕上げの場合にも応用が利く為に主に自動車(二輪・四輪)模型で多用される。
- ^ アカデミーを例にしているが、1990年代までは韓国や中国のプラモデルメーカーのほとんどがコピー製品を作っており、特にアカデミーが悪質とか、数が多いということはない。
出典
- ^ “日本プラモデル工業協同組合の紹介”. 全日本模型ホビーショー. 2022年5月4日閲覧。
- ^ (株)童友社 公式アカウント @@DOYUSHAofficial (2022年2月15日). "気にされる方もいらっしゃるかもしれませんのでマジレスします。両ブランド共、製品の中で「プラモデル」の呼称を使っていないので問題ありません。雑誌社が記事の中で「プラモデル」を使うのも問題ありません。未加入のメーカー様が、自社製品の紹介に「プラモデル」の呼称を使うの禁じています。". X(旧Twitter)より2022年5月4日閲覧。
- ^ a b c d e f g 尹大栄 2012, p. 16.
- ^ a b c d 尹大栄 2012, p. 14.
- ^ “ガンプラ、国産一筋30年 品質こだわり4億個”. 朝日新聞. (2010年4月19日). オリジナルの2010年4月20日時点におけるアーカイブ。 2010年4月19日閲覧。
- ^ a b c 尹大栄 2012, p. 17.
- ^ 『モデル・カーズ 2016年11月号』、ネコ・パブリッシング、119頁。
- ^ 尹大栄 2012, p. 13-14.
- ^ “プラモデルの出荷額日本一”. 静岡県. 2013年12月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年12月13日閲覧。
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