バロック 絵画

バロック

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/16 15:40 UTC 版)

絵画

フェデリコ・バロッチ『トロイアから逃げるアエネイス』(1598)――古典文学の1場面、劇的なアクションの只中で凝固し、斜めの遠近法の広がりの中で前景のイマージュがはっきりと現れている。

絵画における「バロック」の意味を定義づけるものの1つはピーテル・パウル・ルーベンスマリー・ド・メディシスのためにパリのリュクサンブール宮殿で制作した一連の絵(現在はルーヴル美術館蔵)であり[10]、ここではカトリックの画家がカトリックのパトロンを要求を満足させている――バロック時代の君主制、図像学、描画技法、構図、そして空間や動きの描写などの概念である。カラヴァッジオからコルトーナまで、イタリアのバロック絵画には大きく異なった流れがあるが、いずれも異なった様式で情動的なダイナミズムを追求している。

後期バロック様式は徐々により装飾的なロココへと入れ替わってゆき、バロックの定義はこのロココとの対比によってより明確となる。フランスでは君主制に仕える芸術と見做されることも多い古典主義美術もバロックと対比するものと見做される。

彫刻

バロック彫刻では、人物の集合に新しい重要性が生じ、人間のフォルムによってダイナミックな動きとエネルギーがもたらされた――人物は中心の渦巻を取り巻いて輪をなし、あるいは外を向き周辺の空間へと向かう。バロック彫刻になって初めて、彫刻は複数の理想的な視角を獲得した。隠された光源や噴水といった彫刻以外の補足的な要素を付け加えるのもバロック彫刻の特徴の1つである。

ベルニーニ (1598-1680) の建築、彫刻、噴水はバロック様式の特徴を強く示しており、間違いなく最も重要なバロック期の彫刻家であった。ベルニーニはその万能さではミケランジェロに迫るものがあった――彫刻し、建築家として働き、描き、戯曲を書き、上演を行った。20世紀末にはベルニーニの彫刻は、大理石を彫る名人芸と、身体と精神を調和させたフォルムの創造とによって非常に高名なものとなった。また有力者からの需要が多かった胸像の優れた彫り手でもあった。

コルナロ礼拝堂――総合芸術の傑作

ベルニーニ『聖テレジアの法悦』(en:Santa Maria della Vittoria

ローマサンタ・マリア・デッラ・ヴィットリア教会のコルナロ礼拝堂のために制作されたベルニーニの『聖テレジアの法悦』(1645-52)はバロックを理解する助けとなる。コルナロ家のために教会の側面の補助スペースとして設計されたこの礼拝堂は、建築、彫刻、そして演劇を1つの大きな奇想に纏め上げた総合芸術の傑作となっている。

ベルニーニは煉瓦のボックスを作り、白い大理石の聖テレジアの恍惚する舞台とした。これは多色の大理石で作られた建築的な枠によって取り巻かれ、窓が彫像を高みから照らす。礼拝堂の両側壁沿いにある桟敷席にはコルナロ家の人々の顔が軽いレリーフで彫られている。見る者は聖人の神秘的な恍惚の観客=目撃者となる。アビラのテレジアは空想的な装飾によって強く理想化されている。対抗宗教改革で人気のある聖人であったテレジアは自身の神秘的な体験をカルメル会の修道女たちのために綴った。これらの書き物は霊性を追い求める俗人に人気となり、この彫像はその話を体現するものである。テレジアは神の愛をその心臓を貫く燃える矢と表現した。ベルニーニはこのイマージュを文字通りに、テレジアの足許でお辞儀の姿勢をして微笑みかける、クピドのようにして黄金の弓を持つ天使を置くことで具現化した。天使の像は矢を彼女の心臓に射込もうとはしておらず、引き下げている。聖女の顔は恍惚の予兆ではなく現在の充足感を映し出しており、オルガスム的でもあると言われる。

信仰とエロティシズムの混淆はバロック精神の特徴の1つであり、新古典主義の慎みやヴィクトリア朝の羞恥心に背くものであり続けてきた。ベルニーニは信心深いカトリックであり、修道女を風刺しようとしたのではなく宗教的体験から引き出される複雑な真実を大理石の中に体現しようとしたのである。テレジアは恍惚という多くの神秘主義者たちが用いてきた表現によって霊的な天啓に対する肉体的な反応を表したのであり、ベルニーニは真摯であった。

コルナロ家はこの礼拝堂で控え目に自分達を宣伝している。彼らの姿は礼拝堂の側面に彫られ、桟敷席からこの出来事を目撃している形になっている。オペラハウスでのように、コルナロ家の人々には桟敷席という聖女に最も近い、観客と比べ特別な位置が与えられているが、しかしながら観客の方が正面の良く見える位置になる。(17世紀から恐らくは19世紀までは)コルナロ家の許可なくしては誰も彫像の下の祭壇でミサを行うことが出来なかったという意味ではこれは私有の礼拝堂であるが、見る者と彫像を隔てるものは祭壇の柵だけである。この彫像の光景は、神秘主義と一家の誇りの両方を示しているのである。

建築

シュトゥットガルト近郊のルートヴィヒスブルク宮殿。最大のバロック宮殿。

バロック建築では、重点は力強いマッス、ドームキアロスクーロ、絵画的な色彩効果、量感と空間との取り合わせなどにあった。内装では、バロックのなにもない空間を取り巻き横切る壮大な階段はそれまでの建築には存在しなかったものであった。世界各地のバロック建築の内装で見られる他の特徴として、奥に行くにつれて徐々に豪華になり、華麗な寝室、王座の間、謁見室などで頂点を迎える儀式用の続き部屋がある。これは気取った貴族の住居でも小さなスケールで模倣された。

バロック建築はドイツ中部(ルートヴィヒスブルク宮殿やツヴィンガー宮殿)、オーストリアポーランド(ヴィラヌフ宮殿やビャウィストク宮殿)、ロシアペテルゴフ宮殿)などでも熱狂的に受け入れられた。イギリスでは、バロック建築はクリストファー・レン卿、ジョン・ヴァンブルー卿、ニコラス・ホークスムアらによって1660-1725年頃に頂点を迎えた。

ヨーロッパの他の都市やイスパノアメリカでも数多くのバロック建築や都市計画を見ることができる。


注釈

  1. ^ シャルル・ガルニエが皇后にガルニエ宮は何様式であるかと尋ねられた時の返答「ナポレオン3世様式にございます、妃殿下」が想起されるであろう。ルネサンス新古典主義、ルイ15世様式が混淆した当時流行の様式はそれほどまでに定義困難なものだったのである。
  2. ^ sub specie aeternitatis. スピノザ『エチカ』にある言葉。

出典

  1. ^ Olívio da Costa Carvalho, Dicionário de português-francês, Porto Editora, 1996 ISBN 972-0-05011-X
  2. ^ Helen Hills Rethinking the Baroque
  3. ^ Albert Dauzat & al., Dictionnaire étymologique Larousse, 1989 ISBN 2-03-710006-X
  4. ^ Dictionnaire de L’Académie française, 1re édition. (オンライン版
  5. ^ Dictionnaire de L’Académie française, 4e édition. (オンライン版
  6. ^ Source : Claude Lebédel, Histoire et splendeurs du baroque en France, édition Ouest-France, Rennes, 2003.
  7. ^ Dictionnaire de L’Académie française, 7e édition. F. Didot, Paris, 1878 (オンライン版
  8. ^ Heinrich Wölfflin, Renaissance und Barock: Eine Untersuchung über Wesen und Entstehung der Barockstils in Italien, 1888
  9. ^ Helen Gardner, Fred S. Kleiner, and Christin J. Mamiya, Gardner's Art Through the Ages (Belmont, CA: Thomson/Wadsworth, 2005), p. 516.
  10. ^ The Life of Marie de' Medici Archived 2003年9月14日, at the Wayback Machine.





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