テロリズム
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/15 04:57 UTC 版)
定義
「テロリズム」の語の正確な定義には多数の困難が伴っており、100を超える多数の定義が存在している[13][14]。
オックスフォード英語辞典(OED)はきわめて古典的な用法を真っ先に挙げている[15]。
だがこのOEDの説明では現代的な用法を理解するにはもの足りないと感じられることになる[15]。 「テロリズム」という語の現代的な用法は政治的なものである[15]。テロリズムの概念は、しばしば国家の権威者やその支持者が、政治的あるいはその他の敵対者を非合法化し[11]、更に国家が敵対者への武力行使を合法化するためにも使用されている[11][16]。
各国政府が独自に定義付けをしている例があるが、自国や自国の支持する武装集団による暴力行為は「テロリズム」から除外して、他の組織のもののみを「テロリズム」と呼んでおり、定義が自己中心的で、普遍性を持ちえず、妥当性に関しては疑問視されている。たとえばノーム・チョムスキーは、アメリカの公式文書によるテロリズムの定義に従えば「アメリカが1985年にベイルートで1人の聖職者を暗殺すべくモスクの外にトラックに仕掛けた爆弾を設置し、80名を殺し、250名に怪我を負わせた」行為(en:1985 Beirut car bombings)や「アメリカが1980年代にニカラグアを攻撃し壊滅状態に陥れた」(コントラ戦争)のは間違いなくテロである、と主張している[17]。
国際連合
国際連合は、2004年11月、国際連合事務総長による報告書において、テロリズムを以下のように示した。
テロ防止関連諸条約
当条約ではハイジャック関連を中心に、以下がテロ行為とされている[19][20]。
- 航空機内の犯罪:航空機内で行われた犯罪その他ある種の行為に関する条約(航空機内の犯罪防止条約 東京条約)
- 航空機ハイジャック:航空機の不法な奪取の防止に関する条約(航空機不法奪取防止条約 ヘーグ条約)
- 民間航空機の安全に対する不法行為:民間航空の安全に対する不法な行為の防止に関する条約(民間航空不法行為防止条約 モントリオール条約)、2010年作成の国際民間航空についての不法な行為の防止に関する条約(北京条約)においては、さらに核物質や生物兵器等の具体的事項を列挙
- 国家代表等に対する犯罪行為:国際的に保護される者(外交官を含む。)に対する犯罪の防止及び処罰に関する条約(国家代表等犯罪防止処罰条約)
- 人質を取る行為:人質をとる行為に関する国際条約(人質行為防止条約)
- 国際輸送中の核物質の窃盗:核物質の防護に関する条約(核物質防護条約)
- 空港における不法な暴力行為:1971年9月23日にモントリオールで作成された民間航空の安全に対する不法な行為の防止に関する条約を補足する国際民間航空に使用される空港における不法な暴力行為の防止に関する議定書(空港不法行為防止議定書)
- 海洋航行の安全に対する不法行為:海洋航行の安全に対する不法な行為の防止に関する条約(海洋航行不法行為防止条約)
- 大陸棚プラットフォームの安全に対する不法行為:大陸棚に所在する固定プラットフォームの安全に対する不法な行為の防止に関する議定書(大陸棚プラットフォーム不法行為防止議定書)
- 爆発物を公共の場所に設置する行為:テロリストによる爆弾使用の防止に関する国際条約(爆弾テロ防止条約)
- テロリストに資金を供与する行為:テロリズムに対する資金供与の防止に関する国際条約(テロ資金供与防止条約)
- 放射性物質や核爆発装置を所持し、使用する行為:核によるテロリズムの行為の防止に関する国際条約(核テロリズム防止条約)
アメリカ合衆国政府による定義
連邦捜査局(FBI)の報告書においても、統一されたテロの定義がないことが示されている[21]。
合衆国法典第18編第2331条 18 U.S.C. § 2331においては、暴力行為若しくは人命に危険を及ぼす行為又は政府の行動に影響を及ぼすための大量破壊、暗殺、誘拐などを指す[22]。
連邦規則集第28編0.85条(28 CFR 0.85(l))においては、FBIとして「政治的又は社会的な目的の促進のために、政府や市民、もしくはその一部への脅迫や強制ないし、人物や資産に対する不当な実力行使や暴力」としている[23][24]。
アメリカ国務省は、合衆国法典第22編第2656f条 22 U.S.C. § 2656fに基づき、国際テロリズムに関する年次報告書を作成しているが、そこでは「工作員や非国家的団体によって行われる政治的な動機による非武装目標への計画的な暴力行為」としている[25]。また、テロ活動を支援する団体も含めて、国務長官により国外テロ組織(Foreign Terrorist Organizations, FTOs)に指定され、監視や制裁の対象とされる[26][27][24]。
日本政府による定義
日本の法令でテロリズムに関連するものには以下のようなものなどがある。
- 警察庁組織令 第39条[法令文 2]
- 特定秘密の保護に関する法律 第12条2項[法令文 4]
- その他
- 北朝鮮による日本人拉致問題 - 2001年より北朝鮮による拉致被害者家族連絡会、北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会が「拉致はテロ」の表現を使用し[32]、2003年6月の衆議院本会議で小泉純一郎首相が「普通には、テロと言えると思います」と答弁した[33]。2007年12月には衆議院の拉致問題委員会で「拉致はテロであり、拉致被害者が抑留され続けている以上、テロは今も続いている」として、アメリカ合衆国政府による北朝鮮に対するテロ支援国家指定解除に反対する決議案を、日本共産党を除く賛成多数で決議した[34]。しかし秘密裏に行われた拉致を政府は当初は「テロ」と呼んでおらず、この表現には議論も存在する[35][36][37]。
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