テロリズム
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対応
ビル・クリントンは、テロリズムを終息させるのは《国家を超えた共通の人類意識》であり、経済的に苦しむ国々に援助の手をさしのべない限り米国は永遠にテロリズムと戦い続けることになる、と2002年にカリフォルニア大学バークレー校での講演した時に指摘した[51]。先進国の人はいわゆる「グローバル経済」や「テクノロジー・ブーム」などが世界の状況になっているかのような幻想を抱いて浮かれているが、実際には世界の大半の人々にとってはそのような恩恵は届いておらず[51]、発展途上国では経済破綻や医療制度の不備が起き、人々は絶望感の中で生きており、世界人口の半数の人にとっては1日の生活費が2ドル未満しかなく、3年以内に1億人の人がエイズ・ウイルスに感染すると予想される状態の恐怖に苦しんでいる、というのが実際の状況であり[51]、これがテロ組織を生む温床になっている[51]。テロリズム対策として、発展途上国再建プランが必要だと、ビル・クリントンは指摘し[51]、より具体的には次のようなものを挙げた。
また、(しばしば先進国の政権は目先のことにとらわれて行動を選択してしまうが)長い目で見れば、(テロリズムとの)戦争という形で金を使うよりも、(苦境の中で)政権を樹立しようとしている政府を支援・援助することにお金を使ったほうが、少ないお金で済む、ともクリントンは指摘した[51]。例えば、アフガニスタンで戦争をするとなると1ヵ月あたり10億ドルものお金を使ってしまっているのである。お金というのは、そんな愚かなやり方で使うべきではなく、発展途上国の再建・支援に使えば、はるかに効果的に良い結果が生み出せるのである[51]。
ラテンアメリカ地域研究が専門の国際政治経済学者・富田与は(いくつもあるテロリズムのタイプの中から)、地位と力の両面で劣位な主体が優位な主体に要求を拒否され続けている場合の対抗策のひとつとして用いられているタイプに着目し、そのタイプのテロリズムは、ちょうど誘拐犯が「人質」を交渉資源として交渉を進めようとする状況と似ていると(アナロジーで)考え、分析し、対策についても論じた[52]。民主主義国家とテロリズムの対話はステイタスにおいて拒否されるが「人質」解放のためには不可欠であり矛盾している。そのため国家が積極的なテロ対策をとった場合にしばしば民主主義が制約を受ける[52]。特にタカ派は「テロリストとは交渉せず」の姿勢を貫くが、これは対症療法に過ぎない。誘拐・篭城・爆破といった目の前の問題を解決は出来ても活動の沈静化には繋がらない。構成員を排除し、あるいは逮捕収監して組織を壊滅させたところで、組織の掲げる思想主張に共鳴する市民は残り、それが新たな集団の形成につながる。
国立国会図書館調査及び立法考査局専門調査員の清水隆雄はテロリズム対策として(各国で法的に)行われているものとして、次のものを挙げた。
テロリストは敵対国に潜入すると、ターゲットを慎重に調査すると言われていることから、主要各国の治安機関は、テロリストの潜入、テロ準備活動、ターゲット調査活動などの捕捉に努めている。国家にとっての「テロとの闘い」の実態は、テロ計画の存在を早期に捕捉できるか、すり抜けられてしまうかの熾烈な情報戦と言える。各国の治安機関は、テロリストの摘発に一定の効果を上げているとされるが、すべての計画を阻止できるわけではない。また、テロリストの多くは、銃・爆発物の取り扱い方・戦闘訓練など、高度な軍事訓練を受けていることから[54]、多くの国でテロリストによる非正規戦や犯罪に対抗する専門部隊として対テロ部隊が組織されている。通常は警察組織の中に組織されているが、国によっては軍の特殊部隊が対テロ任務に当たることもある[55]。
方策については専門家ごと、立場ごとに見解がそれなりに分かれている。例を挙げれば以下のようなものがある。
- 絶望の原因を解消する。貧困に苦しむ地域に援助の手を差し伸べる。医療が無い地域の人々のために医療制度を整える。
- 政治プロセス(合意プロセス)を改善し、戦争をするのではなく、対話を促す。先進国の富裕層に、他の人々の苦境・実情を理解させる。
先進国の政権を握る者がしばしば示す見解としては、
- 「テロリストに利益を与えない」(ゲームの手段としての無効性を立証し続ける)
- 「テロリストを特定し、監視・管理・排除する」(テロリスト(個人・集団・組織)を特定し、行動を監視・管理し、あるいは排除する)
- 「被害の拡大を最小限度に管理する」(物理力(武具)を管理・監視する、危機管理区域を設定し、テロリストの接近を排除する)
土居靖美によると、米国によるテロへのアプローチは刑罰法のレトリックに近いという。すなわち「対テロ戦争」の目的はテロリストの組織網を途絶させ、裁判法廷へ犯罪人を連れ出すことになるというのである[56]。
- 日本
日本では警察当局により“極左暴力集団”及び右翼団体による「テロ、ゲリラ」事件の未然防圧と各種違法事案の取締りが為されている[57]。また財務省は国際テロ資金の凍結に関する国連安保理決議に基づき資産凍結措置を実施している。
懸念・批判
国家によるテロ対策への懸念・批判には、テロ対策が公務執行型テロリズムとなり、過剰暴力や非合法活動の正当化に使われている(テロ撲滅のためには多少の付随的な犠牲が出るのはやむを得ないという主張)との批判もある。具体的には公務執行型テロリズムに伴う一般市民への誤射・誤爆などである。
またパレスチナ問題におけるイスラエル軍の攻撃、北部イラク・クルド人自治区のクルド人へのトルコの攻撃、バスク地方及びETAへのスペインの態度、チェチェン共和国独立派へのロシアの態度、北アイルランド問題もカウンターテロリズムを用いた過剰暴力の正当化、もしくはカウンターテロリズムを大義名分にした体制側テロリズム・公務執行型テロリズムの例とされることがある[† 5]。
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