ダエーワ 解説

ダエーワ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/08 07:20 UTC 版)

解説

インドのサンスクリット語におけるDeva(デーヴァ天部)と共通語源。しかし、古代インドでデーヴァが善神として崇拝の対象であり続けたのに対し、古代イランではダエーワは「悪神」「悪魔」という逆の意味になっている[1]ゲラルド・ニョリイタリア語版[要出典]などによれば、これはザラスシュトラの宗教改革の結果だという[1]。より古い時代からの神々(デーヴァ)のうち、戦士機能を割り当てられていたインドラ、サウルウァ(ルドラ)、ワユ(ヴァーユ)などがダエーワとされた。いっぽう、インドのアスラが神々と敵対する存在とみなされる以前から知られていた古い神格である、アスラに属する神ヴァルナは、イランにおいてアフラ・マズダーに対応した[2]

悪神としてのダエーワという語は、さらにスラヴ語に借用された(古代教会スラヴ語でdivu「悪魔」)。しかし後の時代になってもソグド語[3]やアラム語[4]の一部では善性の存在として使われることもあった。

ヴェンディダードの7大魔王

ダエーワの中でも中核をなすヴェンディダード(ウィーデーウ・ダート)の7大魔王が存在する。

ヴェンディダード(ウィーデーウ・ダート)とは「悪魔(ダエーワ)に対抗する法」という意味の宗教法の書(サーサーン朝時代にまとめられたゾロアスター教の聖典アヴェスターの二十一巻の第十九巻)で、清めの儀式次第、魔除などを説く。聖王イマ(Yima)とその黄金時代に関する神話などを含む記述の書物である。その魔除書に7大魔王が記載されているのである。

アンラ・マンユはアフラ・マズダーに対抗すべく冬、病気、悪などの16の災難を世に振りまくが実際に災難を振りまくのは彼ら7大魔王を初めとするダエーワ達である。アンラ・マンユを除いて6大魔王という場合もある。アンラ・マンユは魔王の中の魔王だからである。

別の記述では

  • ナース (Nasu)
  • インドラ (Indar) - アシャ・ワヒシュタと対抗する悪魔[1]。インド神話の武勇神インドラのゾロアスター教での姿[1][5]
  • サルワ
  • ノーンハスヤ (Naonghaithya) - インド神話のアシュヴィン双神のゾロアスター教での姿[5]
  • タルウィ
  • ザリチュ
  • アンリ・マンユ - アンラ・マンユと同じ

  1. ^ a b c d e f g h i j 青木 2013, p. 306.(ダエーワ)
  2. ^ エリアーデ, ミルチア「第13章 105 アケメネス朝の宗教」『世界宗教史2 - 石器時代からエレウシスの密儀まで(下)』松村一男訳、筑摩書房ちくま学芸文庫〉、2000年4月、p. 213頁。ISBN 978-4-480-08562-7 
  3. ^ W. B. Henning, 1965, A Sogdian God, BSOAS 28.2, 253-54. 人名の一部に用いられている。
  4. ^ Erica C.D. Hunter, 1998, Who are the Demons? The Iconography of Incantation Bowls, In Sergio Ribichini et al, Magic in the Anicent Near East, p. 107. 守護天使に用いられている。
  5. ^ a b c 伊藤 1967, p. 379.(「大魔の誘惑ほか(ウィーデーウダート第19章)」第43節の注釈6)
  6. ^ 青木 2013, pp. 306-307.(ダエーワ)
  7. ^ 青木 2013, p. 307.(ダエーワ)
  8. ^ 青木 2013, p. 76.(アンラ・マンユ)


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