ストロンチウム90
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/13 07:16 UTC 版)
ストロンチウム90 | |
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概要 | |
名称、記号 | ストロンチウム90,90Sr |
中性子 | 52 |
陽子 | 38 |
核種情報 | |
天然存在比 | 〜0 % |
半減期 | 28.79 y |
同位体質量 | 89.907733342(2752) [1] u |
スピン角運動量 | 0+ |
余剰エネルギー | -85945.838± 2.564 keV |
結合エネルギー | 8695.9± 0.032 (1核子当り) keV |
β- | 0.545908(1406) MeV |
ウランやプルトニウムの核分裂生成物として数%程度生成し、高レベル放射性廃棄物やいわゆる死の灰中に多量に含まれる。
放射性崩壊
ストロンチウム90は中性子過剰であるためβ崩壊により90Y(イットリウム)を生成し、これはさらにβ崩壊して安定な90Zr(ジルコニウム)となる。純粋な90Srは初期には90Yを殆ど含まないが次第に増加し1ヶ月程度で放射平衡に達し、約3900分の1の90Yを定常的に含むようになる。
半減期は28.79年であり、1グラムのストロンチウム90の放射能強度は5.11×1012ベクレルとなるが、続いて半減期の短い(64時間)娘核種の90Yの崩壊を伴うため最終的にはこの2倍となる。90Yのβ崩壊エネルギーは2279.783±1.619 keVと、90Srの545.908±1.406 keVよりもかなり高く、より透過性の高いβ線を放射し危険性も高い。その透過力は厚さ1cmの水で遮蔽出来ないほどであり、体内に取り込まれると充分に細胞を損傷し得る。
存在
自然界には殆ど存在しないが、稀に起きる天然ウランの自発核分裂により痕跡量が存在する[2]。現在環境中で検出されるストロンチウム90は殆どが過去における核実験による放射性降下物の残留物である[3]。1950年代から1960年代にかけて盛んに核実験が行われたため、半減期の約2倍の期間が経過した2011年でも当時環境中に放出された90Srの約1/4が残存していることになる。ストロンチウムの単体は極めて反応活性な金属で、水とさえ激しく反応して水素を発生するため環境中において単体としては存在し得ず、常に水中や化合物中のイオン(Sr2+)として存在する。
- ^ “Nuclide Information 38-Sr-90”. 2011年4月8日閲覧。
- ^ a b 放射能ミニ知識 ストロンチウム-90 原子力資料情報室(CNIC)]
- ^ 三宅泰雄, 猿橋勝子, 葛城幸雄 ほか、「東京におけるCs-137及びSr-90の蓄積量」 『Papers in Meteorology and Geophysics.』 1961年 12巻 2号 p.180-181, doi:10.2467/mripapers1950.12.2_180
- ^ 八木浩輔 『基礎物理学シリーズ4 原子核物理学』 朝倉書店、1989年
- ^ Fission Product Yields per 100 Fissions or 235U Thermal Neutron Induced Fission Decay, T.R. England and B.F. Rider, LA-UR-94-3106, ENDF-349
- ^ “Nuclide Information 38-Sr-89”. 2011年4月9日閲覧。
- ^ チェルノブイリ原発事故:何が起きたのか (PDF)
- ^ 山田勝美 『原子核はなぜ壊れるか』 丸善、1989年
- ^ 原澤進『ラジオアイソトープ 基礎原子力講座3』コロナ社、1979年
- ^ 文部科学省『放射性ストロンチウム分析法』放射能測定法シリーズ2、2003年 (PDF)
- ^ 日本分析化学会『分析化学便覧』丸善、1991年
- ^ 財団法人 日本分析センター
- ^ 放射性物質ストロンチウム90の迅速分析法の開発 (PDF) 福島大学
- ^ 中野政尚, 檜山佳典, 渡辺均 ほか、液体シンチレーションカウンタを用いた排水中89Sr及び90Sr迅速分析法 『RADIOISOTOPES』 2010年 59巻 5号 p.319-328, doi:10.3769/radioisotopes.59.319
- 1 ストロンチウム90とは
- 2 ストロンチウム90の概要
- 3 生成
- 4 分析
- 5 応用
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