ストロンチウム90 生成

ストロンチウム90

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/10/11 02:29 UTC 版)

生成

ウラン235が減速中性子により核分裂を起こすと質量数が90-100付近および130-145付近の分裂断片を生成する。これらの分裂断片はより質量数の大きな原子核由来のものであるから一般的に中性子過剰であり、β崩壊を繰り返して最終的に安定同位体に移行する[4]。これらの分裂断片およびそのβ崩壊生成物として例えば137Cs、131I、および90Srなどがある。

核分裂による90Srの生成率 / %
親核種 熱中性子 高速中性子 14.1 MeV中性子
232Th 核分裂せず 7.32 ± 0.36 6.2 ± 1.5
233U 6.648 ± 0.073 6.39 ± 0.33 5.07 ± 0.80
235U 5.73 ± 0.13 5.22 ± 0.18 4.41 ± 0.18
238U 核分裂せず 3.11 ± 0.14 3.07 ± 0.16
239Pu 2.013 ± 0.054 2.031 ± 0.057 ?
241Pu 1.510 ± 0.074 1.502 ± 0.041 ?

235Uの核分裂により直接生成する90Srの核分裂収率は0.074%に過ぎないが、他に質量数90の生成物としては90Kr(半減期32.3秒)が核分裂収率4.4%と最も多く生成し、次いで90Rb-m(0.71%、半減期4.3分)、90Br(0.55%、半減期1.9秒)、90Rb(0.21%、半減期2.6分)などがあり、これら質量数90の短寿命の核種がβ崩壊して、90Srを生成する[5]

核分裂により89Srも同程度生成し、これはより強いβ崩壊エネルギー1496.866±2.145 keVを持ち放射能強度もはるかに高いが、半減期が50.53日と短くより短期間で消滅して安定な89Yとなる[6]

1954年にビキニ環礁で行われた水爆実験では多量の放射能が放出され、130km以上離れた場所で操業していた第五福竜丸が死の灰を浴び、乗組員や水揚げされたマグロから検出されたストロンチウム90が脚光を浴びた。

原子力発電所の事故ではストロンチウム90は、ヨウ素131セシウム137と比較して化合物の揮発性が低いため比較的漏出しにくいが、1986年のチェルノブイリ原子力発電所事故においては放出が確認され周辺の土壌を汚染した。チェルノブイリ事故で放出された放射能はベクレル数で比較した量的にはストロンチウム90よりもキセノン133、ヨウ素131およびセシウム137の方が多かった[7]

ストロンチウムはカルシウムと化学的性質が類似するため、動物体内では摂取されると一部は排泄されるものの大部分が骨に取り込まれて体内で90Srおよびその娘核種の90Yがβ線を放出し続ける[2]。崩壊時にγ線は殆ど放出しないが、90Yの崩壊においては極一部、90Zrの励起状態の核種である1.761 MeV順位(スピン0+, 0.01%)および2.186 MeV順位(スピン2+, 1.4×10-6%)への崩壊に進む[8]。また半減期が比較的長いため放射線を長期間に亘って出し続けることになる。特に内部被曝による骨腫瘍の危険性がある[9]


  1. ^ Nuclide Information 38-Sr-90”. 2011年4月8日閲覧。
  2. ^ a b 放射能ミニ知識 ストロンチウム-90 原子力資料情報室(CNIC)]
  3. ^ 三宅泰雄, 猿橋勝子, 葛城幸雄 ほか、「東京におけるCs-137及びSr-90の蓄積量」 『Papers in Meteorology and Geophysics.』 1961年 12巻 2号 p.180-181, doi:10.2467/mripapers1950.12.2_180
  4. ^ 八木浩輔 『基礎物理学シリーズ4 原子核物理学』 朝倉書店、1989年
  5. ^ Fission Product Yields per 100 Fissions or 235U Thermal Neutron Induced Fission Decay, T.R. England and B.F. Rider, LA-UR-94-3106, ENDF-349
  6. ^ Nuclide Information 38-Sr-89”. 2011年4月9日閲覧。
  7. ^ チェルノブイリ原発事故:何が起きたのか (PDF)
  8. ^ 山田勝美 『原子核はなぜ壊れるか』 丸善、1989年
  9. ^ 原澤進『ラジオアイソトープ 基礎原子力講座3』コロナ社、1979年
  10. ^ 文部科学省『放射性ストロンチウム分析法』放射能測定法シリーズ2、2003年 (PDF)
  11. ^ 日本分析化学会『分析化学便覧』丸善、1991年
  12. ^ 財団法人 日本分析センター
  13. ^ 放射性物質ストロンチウム90の迅速分析法の開発 (PDF) 福島大学
  14. ^ 中野政尚, 檜山佳典, 渡辺均 ほか、液体シンチレーションカウンタを用いた排水中89Sr及び90Sr迅速分析法 『RADIOISOTOPES』 2010年 59巻 5号 p.319-328, doi:10.3769/radioisotopes.59.319


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