スクーバダイビング 必要な費用

スクーバダイビング

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/19 16:06 UTC 版)

必要な費用

講習費用の内訳は一概には言えないが、指導団体が提供する教材や申請代、現地の施設使用料、現地で借りるスクーバタンク代、インストラクターに払うレッスン代(講習費)などがあり、その他にお店や海までの交通費、宿泊する場合は宿泊代などが挙げられる。 お店によっては、ダイビングスポットへの旅行の費用や交通費、宿泊代などが含まれている場合もあるが、これは旅行業法上の様々な問題もある。 バブル期には12 - 15万円程度が標準とされていたオープンウォーターダイバーコース(教育機関により名称は異なる)の総費用は、近年では都市型ショップの場合、6 - 9万円程度、海沿いの現地サービス(交通費・宿泊費別途必要)の場合、4 - 7万円程度が平均的である。 ダイビング器材はレンタルが可能である。ただし、可能な限り体に合った器材を使った方が安全という考えや、講習終了後のダイビングでも常に同一の器材を使用した方が安全という考えから、一部、あるいは全部の器材の購入を講習の条件としたり、条件とはしないまでも推奨するスクールもある。

潜水場所

港湾河川等を除いて、法律上は潜水の実施に許可を要さない水域が多々ある。しかし、基本的に潜水の対象となるのは観察や鑑賞の対象となる水棲生物が多く棲息する水域であり、このような水域での潜水は、あらかじめ同意を得ない限り、これら生物の採取で生計を立てている漁業関係者とのトラブル発生や、また密漁容疑での取調べ対象になる可能性も高い。このような背景から、日本では、沖縄県等の一部地域を除いては、個人・当該地域外のダイビングツアー・ダイビングスクール催行業者にかかわらず、地域の漁業協同組合と良好な関係を構築している、あるいは漁業協同組合が経営している、いわゆる「現地サービス」と呼ばれる業者を介して潜水を実施することが大半である。かつては、ダイバーは漁場を荒らす厄介者として忌避される傾向が強かったが、現在では、密漁を行う者はダイバーのごく一部であることが広く認知されるようになったこと、またサービスの利用のみならず、食事、宿泊等の消費で地域経済の活性化につながるとの認識が広がったことから、積極的なダイバーの受け入れに方針転換した地域も多くなってきている。

基本技術

スクーバダイビングを行う上で重要な基本技術には、呼吸、中性浮力、圧平衡などがある。初級クラスで習得すべきその他の技術としては、緊急浮上、安全停止、器材の脱着(水面・水中での脱着を含む)等がある。

呼吸

ダイビングでは深くゆっくりとした呼吸が必要である。浅い呼吸では、空気のほとんどが肺に届かないため、空気が無駄に消費される。また、呼吸方法は、次に説明する中性浮力の調整や、呼吸器の保護にも重要となる。

中性浮力

水中で楽に移動するためには、器材を含めた体の平均比重を水の比重と合わせる必要がある。こうすることで、体は浮くことも沈むこともなくなるので、静止するために運動することは必要なくなり、また最小限のエネルギー消費で移動することが可能となる。

中性浮力の調整は、体につけた浮力調整器具(BCD)で行う。BCDから空気を抜くと体はゆっくりと水に沈んでいき、BCDに適度に空気を入れると中性浮力を保つことができる。

浮上はフィンキックで行い、浮上途中で体積(浮力)が増して来るBCD内部の空気を適宜排気しなければならない。それを怠ると急浮上の原因となる。

ドライスーツを着用している場合には、水中ではBCDには給気せずスーツ内に給気することによって中性浮力が保たれ、浮上中には排気バルブを上に向けていさえすれば、膨らんだ空気は自動的に排気され、急浮上する心配は無い。

全てのスクーバ器材を体に付けた状態でも、主として保護スーツの浮力の為、ほとんどの場合ダイバーは沈むことが出来ない。そのため、腰のベルトなどに数キログラムのウェイト(錘)を付ける。錘は地上で装着しておき、水中で調整することは通常はないが、必要量の見積もりが過小であった場合、水底から拾った石を携行して調整手段としたり、また初心者ダイバーの場合には、引率しているガイドやインストラクターが、あらかじめ過剰に携行していた錘を水中で貸し与えるような場合もある。

スクーバダイビングで使う浮力調整器具はBCD (Buoyancy Control Device) と呼ばれる。詳細については当該記事を参照のこと。また、最終的な微調整は、肺が大きくなると浮き、小さくなると沈むことを利用し呼吸で行う[注 3]

圧平衡

マスクの上から鼻をつまんで耳抜きをするダイバー

体には耳内、肺、頭部などに空間があり、水圧に応じて意図的に圧力を調整しなければ、激痛となり、場合によっては重大な障害が生じることがある。 しかし、ほとんどの人は航空機搭乗、高所移動などで圧平衡を経験済みであり、潜水の場合も無理せず行なえば容易で、恐れるには値しない。

耳内の圧調整は耳抜きで行う。つまり、鼻をつまんだ状態で息を吹き込む。深度を変えるごとにこまめの耳抜きが必要である。もし鼻炎などの理由で耳管が塞がっている場合には、耳抜きが困難となりダイビングの妨げとなる。肺内の圧調整は呼吸で十分であるが、後述の通り、たとえ短時間であっても呼吸を止めてはいけない。特に浮上中に息を止めることはたとえ一瞬であっても非常に危険である。

安全停止(無減圧限界時間)

上述したとおり、レクリエーショナルダイビングは無減圧限界時間の範囲内で実施することが大前提である。しかし、無減圧限界時間は減圧症の罹患確率をゼロにするものではなく、ある確率で減圧症に罹患することは避けられない。この確率を最小限にするため、浮上中、ある程度の時間一定深度に滞在し、体内の窒素をある程度排泄することが行われ、これを安全停止という。通常は深度5メートルに3分間滞在する。万が一無減圧限界時間を越えて潜水してしまった場合、ダイビングコンピュータを携行していればその指示に従えばよいが、ダイビングコンピュータを携行していない場合には緊急減圧という手順を行う(補足を下記に記す)。これは、深度5メートルにタンク内の空気が残っている限り長く滞在するもので、これによって体内の窒素をできる限り排泄する。緊急減圧を実施した場合は、減圧症に罹患した兆候がないか、潜水終了後24時間にわたって注意深く観察する必要がある。

緊急減圧に関する補足

減圧停止を前提としたダイビングを行なわないことが決まりのレクリエーションダイバーにとって、減圧停止の必要が生じる場合のほとんどはダイブコンピューターに減圧停止指示が表示されたときで、タンク内の空気(ガス)残量の多寡に拘わらず指示された時間及び指示された深度で停止する必要がある。空気(ガス)が足らない場合にはボートからレギュ付きタンクを下ろして貰って減圧停止を続けるべきであるが最悪の場合、一旦船に上がって急いで自分でタンクを付け替えて再度指示された深度に戻ることになる。[要出典] 一旦上がった際に体の異常を僅かでも感じたら再び潜るのは止め、医療機関に向かう必要がある。

エントリー

陸地から水に入る方法。

  • ビーチエントリー - 海岸から入る方法。フィンの抵抗が大きいためある程度海に入ってからフィンを付ける、
  • ジャイアントストライドエントリー - 足から飛び込む方法。片足を踏み出して、足を開いたままエントリーする。ボートや岸から。
  • バックロールエントリー - 船の端に座るなどして、そのまま背中から落ち込むようにエントリーする。

注釈

  1. ^ 安全上の見地から、少なくとも30気圧、可能な限り50気圧程度の内圧をタンクに残した状態で潜水を終了することが強く推奨される。
  2. ^ 業務上の目的で潜水を行う場合は、労働安全衛生法に定められた潜水士の免許が必要である。
  3. ^ 「トリミング」という。
  4. ^ BSAC等、欧州に本拠地を置く指導団体の場合、イギリス式英語に則り、Qカード(Qualificationカードの略)と呼ぶ場合もある。

出典

  1. ^ 小学館『デジタル大辞泉』. “スキューバダイビング”. コトバンク. 2020年2月20日閲覧。
  2. ^ 三省堂大辞林』第3版. “スキューバダイビング”. コトバンク. 2020年2月20日閲覧。
  3. ^ ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』. “スキューバダイビング”. コトバンク. 2020年2月20日閲覧。
  4. ^ 平凡社百科事典マイペディア』. “スキューバダイビング”. コトバンク. 2020年2月20日閲覧。
  5. ^ 日立デジタル平凡社世界大百科事典』第2版. “スキューバダイビング”. コトバンク. 2020年2月20日閲覧。
  6. ^ a b 小学館『プログレッシブ英和中辞典』第4版. “scuba”. コトバンク. 2020年2月20日閲覧。
  7. ^ 三省堂『大辞林』第3版. “スキューバ”. コトバンク. 2020年2月20日閲覧。
  8. ^ a b 『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』. “スキューバ”. コトバンク. 2020年2月20日閲覧。
  9. ^ a b 山田稔、小学館『日本大百科全書(ニッポニカ)』. “スキューバ”. コトバンク. 2020年2月20日閲覧。
  10. ^ 平凡社『百科事典マイペディア』. “スキューバ”. コトバンク. 2020年2月20日閲覧。
  11. ^ 日立デジタル平凡社『世界大百科事典』第2版. “スキューバ”. コトバンク. 2020年2月20日閲覧。
  12. ^ a b c 小学館『精選版 日本国語大辞典』. “スキューバ”. コトバンク. 2020年2月20日閲覧。
  13. ^ 海上保安庁救難課監修・財団法人日本海洋レジャー安全・振興協会編著、2004、「レジャー・スキューバ・ダイビング入門」、『レジャー・スキューバ・ダイビング -安全潜水のすすめ-』、成山堂書店 pp. 63
  14. ^ a b Scuba DivingのScubaってどういう意味?”. Scuba Monsters. 2023年3月9日閲覧。
  15. ^ ダイバーの皆さまへ” (PDF). 日本スクーバ協会. 2023年3月9日閲覧。
  16. ^ a b c d e 『マリンダイビング』672号(2020年10月号)、水中造形センター pp. 46
  17. ^ 横浜消防
  18. ^ レファレンス共同データベース
  19. ^ a b 池田知純 『潜水の世界』 大修館書店、2002年、P.135。ISBN 4-469-26505-5
  20. ^ a b 『PADI オープン・ウォーター・ダイバー・マニュアル』 1999
  21. ^ a b ※参照したのは『PADI オープン・ウォーター・ダイバー・マニュアル』 2008[出典無効]
  22. ^ 財団法人 安全衛生普及センター: “「潜水士免許」について - Go PRO”. 公式ウェブサイト. PADI. 2020年2月20日閲覧。
  23. ^ バディブリージング. コトバンクより。
  24. ^ オクトパスブリージングのステップをおさらい|ダイビングスキルアップ術|スキル|Marine Diving web(マリンダイビングウェブ)”. marinediving.com. 2023年6月19日閲覧。
  25. ^ 緊急スイミングアセント. コトバンクより。
  26. ^ INC, SANKEI DIGITAL (2023年6月19日). “「強い風、潜るのに適していない」地元ダイビングショップ ドリフトダイビングか”. 産経ニュース. 2023年6月19日閲覧。






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