アメリカ合衆国とイランの関係 議会間非公式直接会合

アメリカ合衆国とイランの関係

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/04/30 17:11 UTC 版)

議会間非公式直接会合

2000年8月31日

2000年8月31日アメリカ合衆国議会からアーレン・スペクター共和党上院議員、ボブ・ネイ共和党下院議員ゲイリー・アッカーマン民主党下院議員、エリオット・L・エンゲル民主党下院議員の4人と、イラン議会(マジュレス)からメフディー・キャッルビー議長、ユダヤ人のモーリス・モターメド議員が、ニューヨークで非公式会合を開き、諸問題について討議した。この討議は列国議会同盟会議の機会を利用して開かれたものである[19]

軍事行動への脅威と緊張:2005年 - 2006年

アメリカ合衆国によるイラン武力攻撃のおそれをめぐって

アメリカ合衆国のイランに対する公式の立場は「イランの核武装は受け入れられない」ということであり、一方的武力攻撃及び先制核攻撃を含む「あらゆるオプション」を「排除しない」というものである[20]。しかしながら、アメリカ合衆国政府は即時の攻撃準備については否定している。これは、ヨーロッパ3カ国、イギリスフランスドイツのいわゆるEU3カ国による濃縮活動停止協議中に、アメリカが濃縮活動を核兵器生産のためと主張したことに起因する[21]

2020年現在アメリカ合衆国はイランの隣国4カ国イラクトルコアフガニスタンパキスタンに極めて大規模な軍事的プレゼンスないし数十年に渡る軍事協力の歴史を持つ。


2006年8月31日ジョージ・W・ブッシュ大統領はウラン濃縮停止要求に対するイランの抵抗には「結果が必要だ」とし、イスラエルとイランに支援されたヒズボラ戦争に見られるように「世界は現在、イランの過激な体制からの重大な脅威に直面している」と述べた[22]

対イラン戦術核兵器使用計画をめぐって

2005年3月にアメリカは非核保有国に対する先制攻撃予防戦争における核兵器の使用を含むドクトリンの改訂を行った。

同年8月にフィリップ・ジラルディ元CIA職員は、ディック・チェイニー副大統領アメリカ戦略軍にさらなる9・11型のテロ攻撃があった際に発動する非常事態計画を準備するよう指示し……イランに対する通常兵器および戦略核を用いた大規模空爆を含む……現実にアメリカに対する直接のテロ行動に関わっているイランには無条件で……」と述べたとする。小型核兵器による攻撃の理由は、目標が装甲され地下深く非核弾頭での破壊が困難であるためである[23]

イランの核開発計画に関わる要因

2003年以来アメリカはイランが核兵器開発を計画していると主張した。これに対してイランは核開発計画は発電のみを目的にしていると反論している。

2005年6月にアメリカ国務長官コンドリーザ・ライスIAEA事務局長モハメド・エルバラダイについて、イランに対する姿勢をより強固にせねば、3期目の選出は無いだろう」と述べている[24]。アメリカ合衆国とイランはともに核拡散防止条約(NPT)関係国である。2005年5月の1ヵ月に渡る会議上、IAEAは核燃料及びその処理について報告が不十分であるとして、イランがNPT保障措置管理に違反していると発表している[25]。これに対しNPT第4条では、非核保有国に対して非軍事的原子力エネルギー開発の権利を認めており[26]、さらにアメリカ及び他の公式核保有国(アメリカ合衆国・中国・イギリス・フランス・ロシア連邦)は第6条違反であるとする反発があった。第6条は核軍縮を定める規定であるが、2020年現在で核保有国がそれを行っていないとするものである。

2003年から2006年初にかけてアメリカ合衆国とイランの関係は逐次緊張を増した。この時期、IAEAによる核関連施設への査察が継続しており、これはイランが自発的に加盟したNPT追加条項に基づくものである。

2006年3月8日にアメリカ合衆国及びヨーロッパ連合3カ国代表はイランが未濃縮六フッ化ウランの保有を指摘し、十分な濃縮が行われれば最大10個の原子爆弾製造が可能であり、これは「安全保障理事会が行動すべき時」と声明を発表した[27]。ただし未濃縮ウランは加圧水型原子炉ブーシェフル原子力発電所では使用できず、また濃縮が無ければ原子爆弾にも使用できない。

アメリカ合衆国・イラン間の緊張における石油その他戦略的諸要因

ステファン・ズーンズは共和党民主党とも、中東においてアメリカ合衆国の経済的戦略的構想に対し非協力的な産油国(すなわちイラン)を封じ込めて孤立させ、軍事的な威嚇への衝動があると述べている[28]

アメリカ合衆国・イラン間で増大する緊張は、エネルギーにかかわる地政学的要因に起因するものであり、ほとんどの西洋世界のエネルギー的安全保障の将来にかかわる。これはすなわち最終的には、世界の1日の石油需要の40パーセントが運ばれるホルムズ海峡の支配権に関わるためである[29]

この要因を持たないことにより、北朝鮮の核問題はイランほどには世界的な注意を引かなかったのである。

イランによるユーロ建石油取引市場開設計画

イランによる新たな国際石油先物取引市場の創設計画が複数の観測により確認されている。現在のところ公式の名称はないが、一般にイラン石油取引所と呼ばれており、取引は、現在すべての石油取引に用いられるドル建ではなくユーロ建てないしその他の通貨建で行われる見通しである。これを一部ではアメリカ合衆国ドルを基軸とする国際通貨市場に重大な否定的影響をもたらすものとして懸念している。取引開始は2006年3月20日とされていたが、延期されている[30]

アメリカ合衆国での選挙をめぐる要因

2005年11月にマイケル・クレアハンプシャー大学平和・世界安全保障学教授は、ジョージ・W・ブッシュ政権によるイラン攻撃への主な要因として、国内における政治的困難からの目をそらさせ、政権支持を増加させる欲求があると指摘している。2003年のアメリカ合衆国によるイラク侵攻ではブッシュ政権に対する支持率はおよそ10パーセント増加し、数か月後に元の支持率に低下している[31]

イランでの選挙をめぐる要因

イランのマフムード・アフマディーネジャード大統領による発言は、イスラエル政府の言うように脅迫を目的としたイスラエル向きの発言である[32]のと同程度に、選挙を目的として国内に向けられた発言であるとアリー・アンサーリーのような専門家は解釈する[33]

宗教保守派マフムード・アフマディーネジャードが2005年、大統領に当選した。

2005年10月、アフマディーネジャードは国内向け演説でアーヤトッラー・ホメイニーの「時のページから(イスラエルパレスチナにおいて)占めている体制は消滅すべきである」、パフラヴィー朝国家としてのソビエト連邦イラクにおけるサッダーム・フセインも同様であるとの発言に賛意を示した。

また2005年12月8日にはホロコーストを疑う発言をしている。さらに1週間後12月14日にも同様に文字通りホロコースト否認の発言をしている。これらの発言は一般にそのポピュリスト的な選挙基盤を意識したものとおもわれる。2005年の大統領選挙では第一回投票で19%の票を得ている。

アフマディーネジャードとファン・コールは、これらの発言は西洋のメディアによって誤訳され、イスラエルが「歴史のうえで拭われるべき(汚点)」との発言であって、パレスチナにおける民主主義を擁護したものに過ぎないと反論している。しかし、これが誤訳であったかどうかは別として、発言に対する国際的反応は非常に否定的なものであった。

エイジアン・エイジのスィーマ・ムスタファは、イスラエルとホロコーストをめぐるアフマディーネジャードの発言がイラン攻撃への名分として用いられていると論じる。

「(アフマディーネジャードを)悪魔扱いするキャンペーンは非常に効果的であった。実際、対イラン戦へのプロパガンダの重要要素としてアフマディーネジャードは組み入れられたのだ……」

また、この議論はEU3カ国代表マイケル・シーファーとアメリカ合衆国国務次官ニコラス・バーンズが、国際連合安全保障理事会IAEA査察受け入れをイランに勧告するべきとして、デリーでジャーナリストに示したものである[34]

アメリカ合衆国の中東民主化計画をめぐる要因

2003年のイラク侵攻後に大量破壊兵器が発見されなかったことが明らかになると、ブッシュ大統領は演説で政権の目的は中東諸国に民主主義をもたらし、「イスラーム的ファシズム」に対抗することであると述べている。

反イラク戦争イラク世界法廷その他は、政権の上記のような説明に疑問を呈し、イラク占領におけるイラク学界に対する組織的策謀を指摘している。

『悪魔のゲーム—合衆国はいかにしてイスラーム原理主義を解きはなってしまったのか』(Devil's Game: How the United States Helped Unleash Fundamentalist Islam)の著者ロバート・ドレフュスは、合衆国による中東地域での諸活動は、「イスラーム的ファシズム」に対抗するどころか、かえってそれを助長しつづけている、と主張している[35]

アメリカ合衆国によるイラン攻撃の可能性

CIA局員で、近東南アジア担当国家情報官として、2000年から2005年にかけてイランに関する国家情報推定National Intelligence Estimatesの作成を主導したポール・ピラーは、インタープレス・サービスに対して、この時期の国家情報推定について次のように発言している。

「明確に合衆国の攻撃に対するイランの恐怖をとりあげており、その恐怖と核兵器開発に対する欲求を関連づけている……この脅威、特にアメリカとイスラエルからの攻撃というイランの認識する脅威において、イランの核開発は攻撃の要因であるのみならず、逆にこの脅威がイランが核兵器開発に努力するかどうかの要因ともなっているのである」

また、別の元CIA官僚であるエレン・ライプソンは「アメリカによるイラン攻撃への恐怖は、ながらくイラン関係国家情報推定における『基本的要素』であった」という[36]。2005年にアメリカは「イラン自由支援法」を可決した。これはイランで活動する人権NGOに数百万ドルの予算を充てるものであった。両国の一部政治家は同法を「イランに対する軍事力の使用について特定の禁止を含みはするが、戦争への布石である」と非難している[37]

アメリカは2012年11月時点まで、イランの核兵器開発疑惑に対して武力行使はしていない、武力行使を明示してもいない。実行も実行可能性も示されていないのに反戦運動との表現は推測記事になっている。

アメリカ合衆国国内における対イラン戦反対活動

アメリカ合衆国における現在のイラクにおける戦争に対する嫌悪感は[38]、さらなる戦争に応ずることへのアメリカ市民の意識に影響を与えている。2006年6月のCBS世論調査では、イランに対する軍事行動を支持するアメリカ合衆国国民は21パーセントのみであった。55パーセントは外交による解決を支持し、19パーセントはそもそもイランは脅威では無いと応えている[39]。 対イラン戦への嫌悪感を組織化する複数団体が現れており[40]、イランへの軍事行動を忌避するこのような圧力は、アメリカ政府のイラン政策に影響を与える可能性がある。

2003年から2006年のアメリカ合衆国によるイラン主権侵害の疑い

アメリカ合衆国の無人偵察機によるイラン領空侵犯の疑い

2003年以降アメリカはイランの核開発計画に関する情報を収集するため、イラクから無人偵察機を飛ばした。伝えられるところではほとんど新情報を入手できなかったが[15]、イラン政府はこれを不法な主権侵害行為として正式に抗議している。アメリカのRQ-7 ShadowとHermes UAVはイランに墜落している[15]







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