拡大自殺
拡大自殺
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/08/13 01:49 UTC 版)
殺人 |
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家族に対する殺人 |
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拡大自殺(かくだいじさつ、英:extended suicide)とは殺人を行った後、あるいは同時に自殺する行為を言う。どのような状況を拡大自殺と呼ぶかについて、未だ一致した見解はないが、
- a) 自分とは無関係である者を殺害した後に自殺した場合[1]
- b) 嫉妬妄想の対象を殺して自殺した場合[2]
-
c) 愛し合う相手を殺して自殺した場合
- d) 自分が死んだら家族が生きていけないと考えて家族を殺した後、自殺した場合(嬰児殺しを含む)[3]
など、さまざまなケースが拡大自殺と呼ばれる。いずれの場合も、自殺が未遂となる場合もある。
英語には、extended suicideの他に、murder-suicide、homicide-suicideという用語もあり[2]、ほぼ同義と言って良い。日本では、b)~d)に関して、無理心中と呼ばれる場合もある[4][5][6][7][8][9]。
拡大自殺の定義
拡大自殺(extended suicide)の定義として、
- 1) 本人の死の意志
- 2) 1名以上の他者を相手の同意なく自殺行為に巻き込むこと
- 3) 犯罪と、他殺の結果でない自殺とが同時に行われること
- 4) 自己中心的な動機でなく、利他的な、あるいは偽利他的な動機から犠牲者を道連れにしようとしていること
- 5) 犯罪の結果について熟慮せずに自発的に行われていること
という基準が提案されている[10]。
なお、警察による現場での射殺(超法規的殺人)を求めて無関係な他者の(大量)殺人を犯す場合は、間接自殺(警察による自殺)と呼ばれ、区別される[11]。
Extended suicideに相当する用語が用いられた文献として確認されている最も古いものは、1908年のNackeのドイツ語の論文[12]であるという[10]。
各国での社会問題化
アメリカ
アメリカでは1990年代以降に社会問題化した[13]。その例が銃乱射事件で犯人は警察に射殺してもらって自殺を果たそうとするもので、俗に「スーサイドバイコップ(suicide by cop)=警察による自殺」と呼ばれている[13]。
日本
日本では2000年代以降に社会問題化した[13]。
読売新聞は北新地ビル放火殺人事件が発生して間もない2021年12月26日に同事件を含む以下の事件を拡大自殺の例として報道している[14]。
なお、上記のほかにも、犯人が犯行直後に自殺する殺人事件や、「死刑になりたかった」、「刑務所に行きたかった」という動機での殺人事件は多く発生している[15][16]。
脚注
- ^ 片田珠美 無差別殺人の精神分析 新潮社 2009年
- ^ a b Palermo GB (1994). “Murder-suicide—An extended suicide.”. Therapy and Comparative Criminology 38: 205-216.
- ^ 「7歳と3歳の女児殺される…母は飛び降り、無理心中か」『読売新聞』読売新聞社、2004年9月4日。オリジナルの2004年9月5日時点におけるアーカイブ。2025年7月28日閲覧。
- ^ 「心中か:母子ら4人、自宅で死亡 徳島県小松島市」『毎日新聞』毎日新聞社、2000年10月30日。オリジナルの2001年4月19日時点におけるアーカイブ。2025年8月13日閲覧。
- ^ 「無理心中:父親と娘が死亡 栃木県大田原市」『毎日新聞』毎日新聞社、2000年11月1日。オリジナルの2001年4月18日時点におけるアーカイブ。2025年8月13日閲覧。
- ^ 「家族で心中か?福島・塩川町の2人死亡、2人不明」『読売新聞』読売新聞社、2004年9月10日。オリジナルの2004年9月10日時点におけるアーカイブ。2025年8月13日閲覧。
- ^ 「無理心中?家族5人死亡…57歳の男、自分の首刺す」『読売新聞』読売新聞社、2005年2月28日。オリジナルの2005年3月1日時点におけるアーカイブ。2025年7月28日閲覧。
- ^ 「家族6人を殺害容疑 46歳男、自殺図る 愛知・知多」『朝日新聞』朝日新聞社、2005年4月5日。オリジナルの2005年4月6日時点におけるアーカイブ。2025年7月28日閲覧。
- ^ 「親子2人が病室で無理心中? 福岡・久留米」『朝日新聞』朝日新聞社、2006年4月9日。オリジナルの2006年4月10日時点におけるアーカイブ。2025年8月13日閲覧。
- ^ a b Meszaros K, Fischer-Danzinger D (2000). “Extended Suicide Attempt: Psychopathology, Personality and Risk Factors.”. Psychopathology 33: 5–10.
- ^ 影山任佐 罪と罰の精神鑑定 「心の闇」をどう裁くか 集英社 2009年
- ^ Näcke P (1908). “Der Familienmord in gerichtlich-psychiatrischer Beziehung.”. Z Gerichtl Med 35: 137–157.
- ^ a b c 和田秀樹. “「死刑になって死にたいから、殺す」拡大自殺の実行者と車を暴走させる高齢者…その背景にある恐るべき真実”. PRESIDENT Online. 2022年8月25日閲覧。
- ^ “大阪放火、大勢の人々を巻き込んで自殺図る「拡大自殺」か…背景に孤立・絶望感 : 社会 : ニュース”. 読売新聞オンライン (2021年12月26日). 2021年12月26日閲覧。
- ^ 「カマで切りつけ、チェーンソーで自殺?…群馬2人死傷」『読売新聞』読売新聞社、2004年10月14日。オリジナルの2004年10月16日時点におけるアーカイブ。2025年8月13日閲覧。
- ^ 「茨城・土浦の8人殺傷:「複数殺せば死刑に」 K容疑者「犠牲増える」予告」『毎日新聞』毎日新聞社、2008年3月28日。オリジナルの2008年4月3日時点におけるアーカイブ。2025年2月19日閲覧。
関連項目
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