弁護
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/08/17 20:20 UTC 版)
弁護(べんご、英: defence、米: defense)とは、法律上の手続において、当事者その他の関係人の利益や権利を擁護するために行われる活動をいう。
特に刑事訴訟においては、被疑者又は被告人の権利を擁護し、その主張を法律上及び事実上の根拠に基づいて提示する活動を指す。この場合、弁護を行う者を弁護人という。日本の刑事訴訟法では、被告人又は被疑者は弁護人を選任することができ、弁護人は原則として弁護士の中から選任される。刑事訴訟法は「弁護及び補佐」を独立した章として規定している。[1]
概要
弁護は、裁判その他の法律上の手続において、一方の当事者等の利益を擁護するために行われる。具体的な内容は手続の種類によって異なる。
刑事手続では、弁護人が被疑者・被告人の側に立って、事実関係や証拠を検討し、法的主張を行い、手続上認められた権利を行使する。
民事訴訟等では、一般に「弁護」という語よりも、訴訟代理、代理人による訴訟活動、法律事務などの表現が用いられる。日本の弁護士法は、弁護士の職務として訴訟事件、非訟事件、行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事務を行うことを定めている。[2]
刑事手続における弁護
弁護の目的
刑事手続における弁護は、被疑者又は被告人の権利を保障し、適正な刑事手続の実現に寄与することを目的とする。
弁護人は、被告人の主張を裁判所に伝えるだけでなく、検察官による主張・立証を検討し、証拠の評価、法律の適用、手続上の問題などについて被告人の立場から主張を行う。
裁判所は、刑事裁判において検察官及び弁護人の主張を聞き、証拠を調べた上で判断する。[3]
捜査段階における弁護
被疑者に対する弁護は、起訴後の公判だけでなく、捜査段階から行われる。
捜査段階では、弁護人は被疑者に対して刑事手続上の権利や手続について説明し、取調べ等への対応について助言するほか、身体拘束に関する手続、証拠及び事実関係の検討、示談その他の適切な対応について活動する。
日本の刑事訴訟法では、勾留状が発せられた被疑者について、貧困その他の事由により弁護人を選任することができないときなどに、裁判官が職権で弁護人を付する制度が設けられている。[4]
起訴後の弁護
起訴後、弁護人は被告人の立場から公判手続に参加する。
主な活動には、
- 起訴状及び事件記録の検討
- 証拠の検討
- 公判前整理手続への参加
- 公判における主張
- 証人尋問
- 被告人質問
- 証拠に対する意見
- 最終弁論
- 上訴に関する活動
などがある。
弁護人は、公訴提起後、一定の範囲で裁判所において訴訟関係書類及び証拠物を閲覧・謄写することができる。[5]
裁判員裁判では、検察官と弁護人がそれぞれ主張及び立証を行い、裁判官と裁判員が証拠に基づいて有罪・無罪及び量刑を判断する。[6]
弁護活動の内容
弁護活動は、事件の内容及び被疑者・被告人の意思によって異なる。
犯罪事実を争う事件では、事実認定、証拠能力、証明力、違法収集証拠の問題その他の争点について主張することがある。
犯罪事実を争わない場合でも、犯行に至った経緯、被害弁償、示談、被告人の生活状況、再犯防止に向けた取り組みなど、量刑に関係する事情について主張することがある。
したがって、弁護は必ずしも無罪を主張することだけを意味するものではない。
必要的弁護
刑事訴訟法には、一定の事件について弁護人がいなければ公判を開廷できないなど、弁護人の関与を必要とする制度が設けられている。
また、被告人が貧困その他の理由によって弁護人を選任できない場合には、一定の要件の下で国が弁護人を付する国選弁護制度が設けられている。被疑者についても、勾留された場合などに国選弁護人を付する制度がある。[7]
私選弁護と国選弁護
刑事弁護には、大きく分けて私選弁護人による弁護と国選弁護人による弁護がある。
私選弁護では、被疑者、被告人その他法律上認められた者が弁護人を選任する。
国選弁護では、法律上の要件を満たした場合に、裁判所又は裁判官が弁護人を付する。
国選弁護人については、刑事訴訟費用等に関する法律において、一定の旅費、日当、宿泊料及び報酬について国から給付する制度が規定されている。[8]
弁護人
弁護人は、刑事訴訟において被疑者又は被告人のために弁護を行う者である。
日本では、弁護人は原則として弁護士の中から選任される。刑事訴訟法は、被告人又は被疑者が弁護人を選任できること、弁護人の資格及び訴訟上の権限などを定めている。[9]
弁護人は、法律上認められた範囲で独立して訴訟行為を行うことができる。[10]
民事手続における弁護
日本の民事訴訟では、刑事訴訟の「弁護人」に相当する制度として、当事者の訴訟代理人がある。
弁護士は、依頼を受けて訴訟代理人として訴訟活動を行うことができるほか、訴訟外の交渉、法律相談、契約書の作成その他の法律事務を行う。
このため、民事事件について「弁護」という表現が用いられる場合でも、刑事事件における弁護とは制度上の位置付けが異なる。
弁護と検察
刑事裁判においては、検察官と弁護人がそれぞれ異なる立場から主張・立証を行う。
検察官は公訴を提起し、犯罪の成立を証明するために主張・立証を行うのに対し、弁護人は被告人の立場からその主張・立証を検討し、被告人の権利及び利益を擁護する。
裁判所は、検察官及び弁護人の主張を聞いた上で、証拠に基づいて判断する。[11]
各国における弁護
アメリカ合衆国
アメリカ合衆国では、刑事手続における弁護を defense 又は criminal defense などと呼ぶ。
アメリカ合衆国憲法修正第6条は、刑事訴追を受ける者について、自己の防御のための弁護人の援助を受ける権利を保障している。米国司法省も、この規定を刑事被告人に対する弁護人の援助の保障の根拠として説明している。[12]
弁護人による弁護は、検察官による訴追に対する防御として刑事司法制度における重要な役割を担っている。
イングランドおよびウェールズ
イングランドおよびウェールズでは、刑事事件において solicitor や barrister などの法律専門職が弁護側で活動する。
英国政府の案内では、solicitor が法律上の助言を行うほか、barrister 又は一定の solicitor が法廷で依頼者を代理できるとされている。[13]
刑事事件では、defence solicitor を対象とした duty solicitor 制度など、公的な法律扶助と結び付いた弁護制度も設けられている。[14]
用語
日本語では「弁護」と「弁護人」は区別される。
「弁護」は被疑者・被告人等を擁護する活動を指すのに対し、「弁護人」はその活動を行う者を指す。
また、「弁護士」は法律事務を行う法律専門職の資格・職業を指す。したがって、弁護士、弁護人及び弁護は同義ではない。
関連項目
脚注
- ↑ “刑事訴訟法”. 国立行政機関情報ポータル. 2026年8月18日閲覧。
- ↑ “弁護士法”. 国立行政機関情報ポータル. 2026年8月18日閲覧。
- ↑ “刑事事件”. 裁判所. 2026年8月18日閲覧。
- ↑ “刑事訴訟法”. 国立行政機関情報ポータル. 2026年8月18日閲覧。
- ↑ “刑事訴訟法”. 国立行政機関情報ポータル. 2026年8月18日閲覧。
- ↑ “裁判員制度を調べる”. 裁判所. 2026年8月18日閲覧。
- ↑ “刑事訴訟法”. 国立行政機関情報ポータル. 2026年8月18日閲覧。
- ↑ “刑事訴訟費用等に関する法律”. 国立行政機関情報ポータル. 2026年8月18日閲覧。
- ↑ “刑事訴訟法”. 国立行政機関情報ポータル. 2026年8月18日閲覧。
- ↑ “刑事訴訟法”. 国立行政機関情報ポータル. 2026年8月18日閲覧。
- ↑ “刑事事件”. 裁判所. 2026年8月18日閲覧。
- ↑ “United States v. Ruiz - Brief” (英語). United States Department of Justice. 2026年8月18日閲覧。
- ↑ “Going to court” (英語). GOV.UK. 2026年8月18日閲覧。
- ↑ “Duty solicitors: rotas, information and guidance” (英語). Legal Aid Agency. 2026年8月18日閲覧。
外部リンク
- 刑事訴訟法 - e-Gov法令検索
- 刑事事件Q&A - 裁判所
- 刑事事件 - 裁判所
- United States v. Ruiz - Brief - United States Department of Justice
- Going to court - GOV.UK
弁護
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/06 01:27 UTC 版)
事務局に弁護支援部 (Defence Support Section) が設けられており、被告人に弁護人の選任について支援し、弁護人に対して費用の支払を含め法的・行政的な支援を提供する。
※この「弁護」の解説は、「カンボジア特別法廷」の解説の一部です。
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