trans-2-ヘキセナールとは? わかりやすく解説

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(E)‐2‐ヘキセナール

分子式C6H10O
その他の名称リーフアルデヒド、trans-2-ヘキセナール、trans-3-Propylacrolein、trans-2-Hexenal、trans-3-プロピルアクロレイン、青葉アルデヒドLeaf aldehyde(E)-2-Hexen-1-al、(E)-2-Hexenal、(2E)-2-Hexenal、(2E)-2-Hexen-1-al
体系名:(2E)-2-ヘキセナール、(2E)-2-ヘキセン-1-アール(E)-2-ヘキセナール(E)-2-ヘキセン-1-アール


trans-2-ヘキセナール

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/06/29 15:06 UTC 版)

trans-2-ヘキセナール
trans-2-hexenal[1]
識別情報
ECHA InfoCard 100.027.072
CompTox Dashboard (EPA)
特性
化学式 C6H10O
モル質量 98.14 g mol−1
外観 無色ないし薄い黄色の液体
匂い グリーンノート、カメムシ臭
沸点

146℃

危険性
GHS表示:[1]
Danger
H226, H302, H311, H317, H319, H411
P210, P233, P240, P241, P242, P243, P261, P262, P264, P264+265, P270, P272, P273, P280
関連する物質
関連する異性体 cis-3-ヘキセナール
C6H10O
関連物質 ヘキサナール
trans-2-ヘキセノール
1-ヘキサノール - 同様に、草の香りを持つ
trans-2-デセナール
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

trans-2-ヘキセナールtrans-2-hexenal)は、脂肪族アルデヒドの一種。異性体cis-3-ヘキセナールとともに青葉アルデヒドの別名を持ち、草や葉のにおいの主要な成分である。天然にはキュウリトマトキャベツなどの野菜類、リンゴバナナイチゴなどの果物茶葉などに存在する[2]カメムシのにおいの主成分でもある[3]消防法による第4類危険物 第2石油類に該当する[1]

発見

ゲッチンゲン大学植物教室のラインケ教授は、新緑の季節に大学周辺の樹木から発散される青臭い香りの正体に関心を持っていた。1870年頃、彼は樹木から若葉を採取し、水蒸気蒸留とエーテル抽出によって精油を集めた。1881年、青臭い香りの物質がアルデヒドである可能性を指摘した[4]

その後、独ハイデルベルク大学のクルチウス教授は青臭い香り物質の構造決定に取り掛かった。彼はハイデルベルク大学に来る前、ラインケと同じゲッチンゲン大学の化学教室に所属しており、また、ラインケは葉からの化学物質の抽出方法を知るためクルチウスやベンゼンから助言を仰いでいた。クルチウスの助手フランケン博士はネッカー川対岸の哲学の道沿いから灌木や草本(シデポプラアカシアトネリコカエデクルミヤナギブナシラカンバトチノキハシバミハンノキカシクリブドウシダおよびライラックなど)を採取した。1912年、シデの葉600㎏に水蒸気を吹き込み、精油を抽出し、この抽出液中から2-ヘキセナールを同定した[5][6]。こうして、両氏は世界で初めて青臭い芳香物質を発見し、これを青葉アルデヒド(Blatter aldehyd)と名付けた。

茶生葉からは1933年に武居三吉により青葉アルコールとともに発見された[7]。1960年、畑中顯和(あきかず)は、茶から抽出した青葉アルデヒドと、化学合成した(2E)-ヘキセナールが同一であることを明らかにし、青葉アルデヒドの幾何構造はトランスであることを証明した[8][9]

製法と用途

ブチルアルデヒドジエチルアセタールとエチルビニルエーテルから製造され、フレグランスにナチュラルなトップノートを与えたり、フルーツタイプのフレーバーに使用される[2]慢性疲労症候群に対しても有効である[10]

脚注

  1. ^ a b 製品情報東京化成工業
  2. ^ a b 湖上国雄『香料の物質工学 -製造・分析技術とその利用』地人書館、1995年、147頁。ISBN 4-8052-0491-5 
  3. ^ ☆昆虫~小さな化学者たち~(2)(有機化学美術館)
  4. ^ ラインケ (1881). “Uber aldehydaritize Substanzen in chlorophylhaltigen Pflangenzellen”. Ber. d. d. chem. Ges.. 
  5. ^ Theodor Curtius; Hartwig Franzen (1912). “Über den chemischen Bestandteile grüner Pflanzen. Über den Blätteraldehyd”. Justus Liebigs Annalen der Chemie 390 (1): 89–121. doi:10.1002/jlac.19123900106. http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/jlac.19123900106/abstract. 
  6. ^ Theodor Curtius; Hartwig Franzen (1914). “Über die chemischen Bestandteile grüner Pflanzen. Über die flüchtigen Bestandteile der Hainbuchenblätter”. Justus Liebigs Annalen der Chemie 404 (2): 93–130. doi:10.1002/jlac.19144040202. http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/jlac.19144040202/abstract. 
  7. ^ 武居三吉; 酒戸弥次郎 (1933). “緑茶の香りの研究第一報”. 理化学研究所彙報 12 (1): 13. 
  8. ^ 畑中顯和(あきかず); M. Hamada; M. Ohno (1960). “Darstallung von n-Hexin-1-olen und n-Hexen-1-olen”. Bull. Agric. Chem. 24: 115. 
  9. ^ 畑中顯和; M. Ohno (1961). “Eine einfache Syntheses und Konfiguration des Blatteraldehyds”. Agric. Biol. Chem. 25: 7. 
  10. ^ 用語解説(総医研ホールディングス)


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