エス‐ティー‐ブイ【STV】
ST-V
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/09/12 16:42 UTC 版)

ST-V(エスティーブイ)は、セガ(後のセガ・インタラクティブ)が発売したアーケードゲーム基板であり、セガ社員の石川雅美が開発した[1]。
概要
基板名の『ST-V』は「Sega Titan Videogame system」(セガ・タイタン・ビデオゲームシステム)の略であり[2]、「タイタン」は開発当時のコードネームである[3]。土星(=Saturn、サターン)の衛星であるタイタン(Titan)の名が示す通り、セガサターンとの互換性を持つ[1][2]。
セガサターンとの違いは、対応メディアがロムカートリッジかCD-ROMかというだけで、本体の性能じたいは全く同じである。そのため、本基板で開発、発売されたゲームはセガサターンに移植が容易かつ非常に高い移植度を実現しやすく[3]、移植されたゲームも多い[注釈 1]。データはロムカートリッジから直接読み込めばよいので、セガサターンにあったバッファRAMは省略されており、バッファRAMと同じバスにROMが乗っている。
CPUにSH-2、サウンド用として68EC000が使われており、ソフトは基本的にロムカートリッジで供給されるが、基板にCD-ROMドライブを接続することは可能で、「スポーツフィッシング」など一部CD-ROMに対応した作品もあった[3]。ネオジオを意識してカセットを何本も差してゲームを選択できる設計になっておりオプションのアダプタで対応させる予定があったが実際にはリリースされなかった。ST-V用のロムカートリッジをセガサターンに用いることはできない[3]。メディアにロムカートリッジを用いた設計と、別途でディスクドライブを追加できる設計は、共に後のセガの次世代アーケード基板NAOMI(ドリームキャスト互換)にも受け継がれた。
部品調達難に伴い、2017年3月31日を以って修理サポートが終了した[4]。
展開
元セガAM1研でST-Vのテクニカルサポートを担当したメンバーの回想によると、ST-Vはもともと、SNKの展開するMVS/ネオジオの開拓した「駄菓子屋ロケーション」を奪う目的で開発された[5]。『バーチャファイターリミックス』も、元々は駄菓子屋向けの戦略商品(駄菓子屋向け『バーチャファイター』)として開発された。しかし、駄菓子屋ロケーションの開拓を目論んだセガの上層部は、そのための「体制づくりは何一つやらなかった」[6]ため、駄菓子屋への展開は行われず、もっぱらゲーセン向けとなった。
ST-V第1弾は『ゴールデンアックス・ザ・デュエル』。当時のセガが擁していた2D基板のシステム32基板は、2D表示性能自体は優れていたものの、2Dアニメーション性能においては競合であるSNKのMVS基板に劣っており、セガは当時ブームとなっていた2D対戦格闘ゲーム市場において存在感を出せずにいた(セガはシステム32を2D基板の到達点として、以後は3D基板の開発に移行していた)。ST-V基板は競合に十分太刀打ちできる2Dアニメーション機能を持っており、第1弾が対戦格闘ゲームであったのは自然な流れであったと、元セガAM1研のメンバーは回想している[7]。
ゲームの開発は、当初はAM1研のみが担当した。落ち物ゲーム『コラムス』(『コラムス'97』)や、野球ゲーム『ファイナルアーチ』など、「決して派手ではないが、ゲームセンターの隅に1台は置いておかないといけないようなゲーム」[8]を中心として開発が行われた。開発されるゲームの本数は少なく、そもそも売り上げが伸びるようなゲームではなかった。また、営業においては「売上」ベースのノルマが課されていたため、営業は安いST-VではなくMODEL2などの高価なボードを売りたがった。『バーチャファイターリミックス』ではなく『バーチャファイター2』を売りたがった。結果として、ST-Vの展開は伸び悩んだ。しかし、作った以上は売らねばならないので、一応展開された。
その後、会社の方針として、ST-Vのテコ入れが行われた。セガ社内においては売り上げの見込めないST-V向けゲーム開発に力を入れたいと思う開発部署は存在せず、ゲームの内部開発のモチベーションが起こらないため、ST-V基板をサードパーティにも広く開放することとなり、サターン向けゲームをST-Vに移植してくれるように営業がサードパーティに頼んで回った。ST-V専任の営業が割り当てられ、またAM1研にテクニカルサポート部署が置かれた。
1998年、セガの代表的なサードパーティとして、セガAM1研のメンバーらがトレジャーにお願いに行き、当時サターン向けソフトとして開発中であった『レイディアントシルバーガン』を先にST-V向けにリリースしてくれることになった。ST-V版『レイディアントシルバーガン』は、ゲーム自体の評価は高かったが、マニア受けするゲームであったため、マニアによってすぐに攻略が行われ、インカムがすぐに落ちた。またリリースから1か月後にサターン版の発売告知が行われ、インカムが一気に落ち、店舗側から不評を買った上、カートリッジの売れ行きも落ちた。『レイディアントシルバーガン』は、このST-V版カートリッジの売れ行きをベースにサターン版の製造本数が決められたため、ゲームとしての出来が非常に良いにもかかわらず、製造本数が少なくなったという[9]。(なお、本項が典拠としている記事を執筆したセガAM1研のメンバーの名前も、開発のアドバイスを行った功績で『レイディアントシルバーガン』のクレジットに記載されている)
主なタイトル
- スポーツフィッシング[10][11]
- ゴールデンアックス・ザ・デュエル[12][13]
- ばくばくアニマル[14][15]
- バーチャファイターリミックス[15]
- エジホン探偵事務所[16]
- ファイナルアーチ[17][16]
- スポーツフィッシング2[18][16]
- タタコット[19][20]
- サンドア〜ル[21][20]
- ファンキーヘッドボクサーズ[22][23]
- バーチャファイターキッズ[24][25]
- ペブルビーチ ザ・グレートショット[25]
- デカスリート[26][27]
- カラオケクイズイントロDON!DON![25]
- ダイナマイト刑事[28][27]
- マジカル頭脳パワー[29]
- ぷよぷよSUN[30][31][32][29]
- コラムス'97[33][34]
- 紫炎龍[34]
- ウインターヒート[35][36][37]
- 花組対戦コラムス[31][35][37]
- 全日本プロレス フィーチャリングバーチャ[38]
- マルちゃん deグー!![38]
- 対戦タントアールサシっす!![39][40]
- レイディアントシルバーガン[41][42]
- ストレスバスターズ[43]
- アストラスーパースターズ
- オセロしようよ
- ガーディアンフォース
- グルーヴ・オン・ファイト
- コットン2[35]
- コットンブーメラン
- シーバスフィッシング
- 上海 -万里の長城-
- 水滸演武
- スティープスロープスライダーズ
- 全国制服美少女グランプリファインドラブ
- 蒼穹紅蓮隊[44]
- 団地でクイズ
- 団地で花札
- テクモワールドカップ'98
- 闘龍伝説エランドール
- バーチャル麻雀
- バーチャル麻雀IIマイフェアレディ
- バットマンフォーエバー
- ファイナルアーチ
- ファイナルファイト リベンジ
- プリクラ大作戦
- プリント倶楽部2シリーズ[31]
- プロ麻雀極S
- まうすけのオジャマざわーるど
その他
脚注
注釈
- ^ セガサターンに移植されたST-V基板の作品は、サターンのソフトのパッケージに「ST-V」のロゴが描かれていたのもある。
出典
- ^ a b “「GAME ON」トークイベント「セガハードの歴史を語り尽くす」レポート 歴代セガハードの生みの親が集結した夢のキャスティングが実現!”. GAME Watch. インプレス (2016年5月23日). 2021年2月15日閲覧。
- ^ a b ““あそぶ!ゲーム展 ステージ3”がいよいよ本日(2018年10月6日)開催! 1990年代の興奮が蘇る企画展の見どころを紹介】”. KADOKAWA (2018年10月6日). 2021年2月15日閲覧。
- ^ a b c d 「32ビット 家庭用『サターン』と共通仕様の業務用『タイタン』 セガ社低価格CG基板システムとして開発」, 『ゲームマシン 471号』, p.1.
- ^ 弊社製品保守対応の終了についてセガ・インタラクティブ、セガ・ロジスティクスサービス 2016年11月
- ^ 太陽系の惑星たち 魔法使いの森
- ^ バーチャファイター・リミックス 魔法使いの森
- ^ ゴールデンアックス・ザ・デュエル 魔法使いの森
- ^ ST-V事業のテコ入れ 魔法使いの森
- ^ レイディアント・シルバーガン 魔法使いの森
- ^ [1]
- ^ セガ・アーケード・ヒストリー, p. 128.
- ^ [2]
- ^ セガ・アーケード・ヒストリー, p. 131.
- ^ [3]
- ^ a b セガ・アーケード・ヒストリー, p. 132.
- ^ a b c セガ・アーケード・ヒストリー, p. 133.
- ^ [4]
- ^ [5]
- ^ [6]
- ^ a b セガ・アーケード・ヒストリー, p. 134.
- ^ [7]
- ^ [8]
- ^ セガ・アーケード・ヒストリー, p. 135.
- ^ [9]
- ^ a b c セガ・アーケード・ヒストリー, p. 136.
- ^ [10]
- ^ a b セガ・アーケード・ヒストリー, p. 137.
- ^ [11]
- ^ a b セガ・アーケード・ヒストリー, p. 139.
- ^ 「『ぷよぷよ』開発、コンパイル破綻」, 『ゲームマシン 563号』, p.1.
- ^ a b c “「SEGA AGES イチダントアール」インタビュー AC版、メガドラ版が両方遊べて、初心者向け「ヘルパー機能」でボリュームもアップ!”. GAME Watch. 株式会社インプレス (2019年9月25日). 2021年2月15日閲覧。
- ^ [12]
- ^ [13]
- ^ a b セガ・アーケード・ヒストリー, p. 140.
- ^ a b c 「話題のマシン」, 『ゲームマシン 553号』, pp.16-17
- ^ [14]
- ^ a b セガ・アーケード・ヒストリー, p. 142.
- ^ a b セガ・アーケード・ヒストリー, p. 143.
- ^ [15]
- ^ セガ・アーケード・ヒストリー, p. 144.
- ^ “「レイディアントシルバーガン」のアナログレコードがイギリスのData Discsから登場。12月8日4:00に予約受付を開始”. www.4gamer.net. Aetas (2019年12月6日). 2021年2月15日閲覧。
- ^ セガ・アーケード・ヒストリー, p. 145.
- ^ [16]
- ^ “『サンダーフォースAC』は敵だった? 元テクノソフト現タイトーの外山氏が語る“1990年のあのころ”【ゲームの思い出談話室・第1夜】”. KADOKAWA (2020年6月1日). 2021年2月15日閲覧。
参考文献
新聞・業界紙など
- “ゲームマシン 471号”. アミューズメントプレス (1994年5月1日). 2020年3月20日閲覧。
- 「32ビット 家庭用『サターン』と共通仕様の業務用『タイタン』 セガ社低価格CG基板システムとして開発」、1ページ
- “ゲームマシン 563号”. アミューズメントプレス (1994年10月1日). 2020年3月20日閲覧。
- 「『ぷよぷよ』開発、コンパイル破綻」、1ページ
- 「ゲームマシン553号」『』アミューズメントプレス、1997年11月15日。2024年2月7日閲覧。
- 「話題のマシン」、16-17ページ
- セガ・アーケード・ヒストリー, エンターブレイン, (2002)
STV
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/23 00:56 UTC 版)
STV
略称
- 単記移譲式投票(Single transferable vote)
- 衛星テレビジョン放送(Satellite television)
- 放送局・その他の放送事業者
- 札幌テレビ放送 - 北海道を放送対象地域としたテレビジョン放送局および、その運営会社。STVテレビ。
- 日本のケーブルテレビ局
- 上海テレビ - 中華人民共和国上海市のテレビ放送局。上海メディアグループ傘下。
- STVグループ - スコットランドのメディア企業グループ。
- STVセントラル - 上記グループ傘下のITV (イギリス)系列局。統合前の局名であるスコティッシュ・テレビジョンとも呼ばれる。
- STVノース - 上記グループ傘下のITV (イギリス)系列局。統合前の局名であるグランピアン・テレビジョンとも呼ばれる。
- STV (テレビチャンネル) - 上記グループ傘下のテレビ局。
- ST-V(Sega Titan Videogame system) - セガ(セガ・インタラクティブとして分社時代)が開発したアーケードゲーム基板。
- ストックボイスTV(Stock Voice TV) - Stock Voiceが運営するインターネットテレビ。
- シール・トレーニング・ビークル(Seal Training Vehicle) - バルカーが開発したガスケット施工の教育機器を搭載した出張教育用車両。
コード・識別記号
- サミーのCRパチンコ機に付与される型番。
- CR北斗の拳STV - 2006年に稼働開始。CR北斗の拳#デジハネCR北斗の拳参照。
- デジハネCR北斗の拳 ユリアSTV - 2009年に稼働開始。ぱちんこCR北斗の拳#デジハネCR北斗の拳 ユリアSTV参照。
正式名称
脚注
- ^ “酒田ケーブルテレビが昨年末から放送停止 社長死亡、登記怠り解散扱い”. 河北新報 ONLINE NEWS. 河北新報社. (2020年2月11日). オリジナルの2020年2月13日時点におけるアーカイブ。 2021年3月3日閲覧。
関連項目
ST-V
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/18 18:20 UTC 版)
セガ・タイタン・ビデオゲーム・システムの略称。セガサターンのアーキテクチャを流用して拡張した、上位互換の業務用のゲーム基板。1995年発売。
※この「ST-V」の解説は、「セガサターン」の解説の一部です。
「ST-V」を含む「セガサターン」の記事については、「セガサターン」の概要を参照ください。
- st vのページへのリンク