高速増殖炉
英語:Fast Breeder Reactor、FBR
原子力発電所の炉心のまわりに核分裂を起こさない劣化ウラン(ウラン238)を置き、炉内の核分裂時に発生する中性子を吸収させて核分裂を起こしやすいプルトニウム239へと変化させ、核分裂で消費された以上のエネルギー資源を得ることができる原子炉のこと。
水の替わりに液体金属を冷却材などとして用いることで、中性子を減速させずに(高速状態で)吸収させ、それによってより効率的なプルトニウム239の生成(増殖)を実現している。
関連サイト:
高速増殖炉 - 電気事業連合会
高速増殖炉とはー1 - 独立行政法人日本原子力研究開発機構
高速増殖炉の仕組み - 資源エネルギー庁 原子力発電立地対策・広報室
エフ‐ビー‐アール【FBR】
読み方:えふびーあーる
《fast breeder reactor》⇒高速増殖炉
高速増殖炉
(fast-breederreactor から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/28 15:12 UTC 版)
高速増殖炉(こうそくぞうしょくろ、英: Fast Breeder Reactor、FBR)とは、高速中性子による核分裂連鎖反応を用いた増殖炉のことをいう。簡単に言うと、「増殖炉」とは消費する核燃料よりも新たに生成する核燃料の方が多くなる原子炉のことであり、「高速」の中性子を利用してプルトニウムを増殖するので高速増殖炉という。高速中性子を利用しながら核燃料の増殖を行わない原子炉の形式は、単に高速炉(Fast Reactor:FR)と呼ばれる。
注釈
- ^ GNEPプロジェクトに参加する19か国の内訳は、米国、台湾、フランス、日本、ロシア、オーストラリア、ブルガリア、ガーナ、ハンガリー、ヨルダン、カザフスタン、リトアニア、ポーランド、ルーマニア、スロヴェニア、ウクライナ、イタリア、カナダ、韓国である。
- ^ 福島第一原子力発電所事故では、全電源喪失事故で、残留熱除去系が働かず、2号機、3号機はECCSによって数日持ちこたえた。つまり、ECCSは「LOCA専用」というわけではない。
- ^ 金属ナトリウムが漏出したときのために、循環系の設置される区域は窒素ガスが充填される。そのため、人間が容易にその区域に入ることが出来ず、緊急時のメンテナンス性が損なわれている。
- ^ プルトニウムが核兵器の原料となる危険があり、米国のカーター政権が高速増殖炉から撤退することを決めたのは、プルトニウムの拡散防止が理由の一つであった
- ^ 兵器級プルトニウムによって高性能な核兵器を作る目的だけに限らず、核廃棄物をばら撒く「ダーティボム」(汚い爆弾)としてなら、使用前・使用後にかかわらずあらゆる核物質が利用される恐れがある。
- ^ ASTRIDは燃料を自前で賄う self-generating 反応炉ではあるものの、増殖率が低く仰えられているので厳密には高速増殖炉ではなく、単に高速炉である。詳細は世界原子力協会発行の「Fast Neutron Reactors」[48]を参照。
出典
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- ^ “Fast Neutron Reactors”. FBR - World Nuclear Association. 2018年1月25日閲覧。
- 1 高速増殖炉とは
- 2 高速増殖炉の概要
- 3 FBRの形式
- 4 世界の高速増殖炉
- 5 脚注
- fast-breederreactorのページへのリンク