ジャーゴンファイルとは? わかりやすく解説

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ジャーゴンファイル

(Jargon File から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/01/31 03:45 UTC 版)

ジャーゴンファイル: jargon file)は、ハッカー俗語をまとめた用語集である。元来のジャーゴンファイルは、マサチューセッツ工科大学人工知能研究所スタンフォード大学人工知能研究所BBNテクノロジーズ社、カーネギーメロン大学ウースター工科大学を含む古いアーパネット人工知能LISPPDP-10コミュニティ、などの技術文化から生まれたハッカーの俗語をまとめたものである。

1975年から1983年

ジャーゴンファイル(以降は jargon-1 あるいは単にファイルと呼ぶ)は、1975年スタンフォード大学ラファエル・フィンケル英語版が始めてまとめた。この時から1991年にスタンフォード大学のコンピュータが最終的に停止するまで、ファイルは「AIWORD.RF[UP,DOC]」として置かれた。一部の用語の起源はそれよりも相当古く、frobmoby の一部の意味はマサチューセッツ工科大学の Tech Model Railroad Club まで遡及可能で、少なくとも1960年代の初頭まで遡及が可能とされる。jargon-1 の改訂は版数がなく、まとめて「バージョン1」とみなされることもある。

1976年にマーク・クリスピンは、スタンフォード大学のコンピュータでファイルに関する告知を見て、当該ファイルを マサチューセッツ工科大学のコンピュータへ FTP でコピーした。彼はファイルの内容が「AI用語」に限定されていないことに気づき、自分のディレクトリ内にファイル名「AI:MRC;SAIL JARGON」で保存した。

ファイルは「JARGON >[1]に改名され、マーク・クリスピンとガイ・スティール・ジュニアが様々な内容を充足した。2人は活動した間にジャーゴン(専門用語)をスラング(俗語)へ訂正することは思い至らず、訂正を試行したときはすでに辞典はジャーゴンファイルの名で広く知れ渡っていた。「ジャーゴン(専門用語)」の名称は、この辞典がまじめなものであると誤った印象を与える基となった。

ラファエル・フィンケルはその後すぐに活動からはずれ、ドン・ウッズがファイルのスタンフォード大学側連絡係となった。以降、ファイルはスタンフォード大学とマサチューセッツ工科大学に複製が置かれ、定期的に同期された。

ファイルは1983年頃まで時々思い出したように拡張された。リチャード・ストールマンはこの頃の有名な寄稿者で、マサチューセッツ工科大学やITS関連の多くの造語を付け加えた。

1981年の春にハッカーのチャールズ・スパージェンによって、ファイルからかなりの部分がスチュワート・ブランドの「CoEvolution Quarterly」(第29号の26-35ページ)にフィル・ワドラーとガイ・スティール・ジュニアの挿絵とともに掲載され、ファイルは初めて印刷物として出版された。

後期のバージョンの jargon-1 が、大衆市場向けの解説を加えて拡充され、ガイ・スティール・ジュニアの編集によって、「The Hacker's Dictionary[2]と題して書籍として出版された。ほかの jargon-1 の編集者(ラファエル・フィンケル、ドン・ウッズ、マーク・クリスピン)もこの改訂に寄与しており、リチャード・ストールマンとジェフ・グッドフェローも寄与した。現在は絶版のこの書籍は以降「Steele-1983」と称され、前述の6人は共著者とされた。

1983年から1990年

Steele-1983 の出版の直後、ファイルの拡大と変更は事実上停止した。元来これは、ファイルの更新を一時的に停止して Steele-1983 の出版を容易するためであったが、外部の状況の変化でこの「一時的」な停止は恒久的になった。

人工知能研究所の文化は、1970年代の後期に予算が削減され、内製ソフトウェアの代わりにベンダーがサポートするハードウェアとプロプライエタリなソフトウェアを可能な限り使用することを管理上で決定され、大きく打撃を受けた。マサチューセッツ工科大学は、ほとんどの人工知能研究が専用のLISPマシンに変更された。同時期の人工知能技術の商用化により、人工知能研究で最も優秀で才能のある人材は、マサチューセッツ州の128号線沿い新興企業や西方のシリコンバレーへ出て行った。これら新興企業は、マサチューセッツ工科大学の LISP マシンを構築した。中心となるマサチューセッツ工科大学の人工知能コンピュータは、人工知能ハッカーが愛したITSのホストではなく、TWENEXシステムとなった。

スタンフォード大学人工知能研究所は、実質的に1980年頃に活動が中止されたが、スタンフォード大学のコンピュータは計算機科学学部の資産として1991年まで動き続けた。スタンフォード大学は主要な TWENEX サイトとなり、一時は10台以上の TOPS-20 システムが稼働した。1980年代の中頃は、ほとんどの興味深いソフトウェア開発は新しく現れた BSD UNIX 標準仕様の上で行われていた。

1983年5月にはファイルを育んだ PDP-10 中心の文化はディジタル・イクイップメント・コーポレーションのジュピター計画中止によって致命的打撃を被った。すでに散り散りになっていたファイルの編纂者は他の物事に移った。Steele-1983 は著者たちにとって失われつつあった伝統を記念するものとなった。この時点では関係者の中にはファイルの影響がどれだけ広い範囲に渡っていたかを認識していたものはいなかったのである。

1980年代の中頃にはファイルの内容はすでに古いものとなっていた。しかしファイルを中心として成長した伝説は失われることはなかった。書籍とアーパネットから取り寄せられたソフトコピーはマサチューセッツ工科大学とスタンフォードからはほど遠い文化にまで広まっていた。ファイルの内容はハッカーの言語やユーモアに強い影響を与え続けた。マイクロコンピュータ時代の到来などによってハッカー界が爆発的に膨張しても、ファイルは一種の神聖不可侵の叙事詩、「研究所の騎士」による英雄的功績を記録したハッカー文化版の「Matter of Britain」(アーサー王と円卓の騎士の伝説集)として見られていた。ハッカー界全体の変化の速度は非常に加速したが、ジャーゴンファイルは生きた文書からイコンとなり、7年間に渡ってほとんど手つかずのまま残された。

1990年以降

新しい改訂は1990年に始まり、後期の版の jargon-1 のほぼテキスト全体が含まれていた(一部の廃れた PDP-10 関連の項目は Steele-1983 の編集者たちと慎重に相談した上で取り除かれた)。この版には Steele-1983 の約8割が取り込まれた。一部の構成要素と今では歴史的興味の対象でしかない Steele-1983 で導入された項目は省略された。

新しい版は古いジャーゴンファイルよりも広い範囲を対象とした。人工知能や PDP-10 ハッカーの文化だけでなく、真のハッカー気質が存在する技術的なコンピュータ文化全体をカバーすることを目的としていたのである。今では半分以上の項目が Usenet に起源があり、現在C言語UNIX 利用者の間で使用されている用語を表している。 IBM PCプログラマ、Amigaファン、Macintosh 愛好者、IBMメインフレーム界などの他の文化からも用語を集める努力も行われている。

エリック・レイモンドが現在のファイルを保守しており、ガイ・スティール・ジュニアがそれを手伝っている。レイモンドは書籍版である「The New Hacker's Dictionary」の代表編集者でもある。一部には新しいメンテナが自分自身が発明した用語を追加している。ジャーゴンファイルを歴史的に興味深い一つの文化の記録から技術用語の一般的な辞典に変えたなど批判も見られる。レイモンドはこうした懸念に対して jargon.org ウェブサイト内[3]で応えている。古い版のジャーゴンファイルは多くのサイトに保存されている。

書誌情報

  • ガイ・スティール ほか共著『ハッカー英語辞典』犬伏茂之 訳、自然社(出版) 産学社(発売)〈自然社ペーパーバックス〉、1989年10月。ISBN 4-7825-7006-6  - 原題: The hacker’s dictionarySteele-1983 の日本語訳。
  • エリック・レイモンド 編『ハッカーズ大辞典』ガイ・スティール 絵、福崎俊博 訳、アスキー〈アスキー・ブックス〉、1995年9月。 ISBN 4-7561-0374-X  - 原題: The hacker’s dictionary、第二版
  • エリック・レイモンド 編『ハッカーズ大辞典』ガイ・スティール 絵、福崎俊博 訳(改訂新版)、アスキー〈アスキー・ブックス〉、2002年6月。 ISBN 4-7561-4084-X  - 原題: The New Hacker’s Dictionary、第三版
  • エリック・レイモンド, ed (1996). The New Hacker's Dictionary (第三版 ed.). マサチューセッツ工科大学出版局. ISBN 0-262-68092-0 

脚注

  1. ^ ITSでは「>」がつくと自動的にバージョン管理が行われる
  2. ^ Harper & Row CN 1082ISBN 0-06-091082-8
  3. ^ http://www.catb.org/~esr/jargon/jargtxt.html
  • この記事は一部がジャーゴンファイルの改訂履歴に基づいている。ジャーゴンファイルはパブリックドメインである。

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