JALウェイズ58便エンジン爆発事故
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/03/14 14:24 UTC 版)
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出来事の概要 | |
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日付 | 2005年(平成17年)8月12日 |
概要 | 金属疲労によるタービンブレードの損傷 |
現場 |
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乗客数 | 216 |
乗員数 | 13 |
負傷者数 | 0 |
死者数 | 0 |
生存者数 | 229(全員) |
機種 | マクドネル・ダグラス DC-10 |
運用者 |
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機体記号 | JA8545 |
出発地 |
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目的地 |
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地上での死傷者 | |
地上での負傷者数 | 5 |
JALウェイズ58便エンジン爆発事故(ジャルウェイズ58びんエンジンばくはつじこ)は、2005年(平成17年)8月12日に福岡県福岡市にある福岡空港で発生した航空事故である。
概要
2005年(平成17年)8月12日、福岡発ホノルル行のJALウェイズ58便(マクドネル・ダグラス DC-10)が、福岡空港を離陸後にエンジントラブルを起こし、同空港に引き返した[1]。
当該機は19時45分頃、定刻通り福岡空港の滑走路34を離陸したが、離陸後20秒後に突然左エンジンから出火[1]。パイロットもそれに気づき、管制塔に連絡後、左エンジンを止め海上まで飛行、燃料を消費してから約30分後に福岡空港に引き返し、緊急着陸した[1][2]。乗員乗客ら229名は無事であったが、離陸ルートのほぼ真下に位置する福岡市東区社領2丁目〜3丁目の住宅街にタービンブレードの金属片が落下し、それに自ら触れた5人が軽い火傷や軽傷を負ったほか、乗用車のフロントガラスが破損した[3][1][4]。
偶然にも取材で福岡空港に来ていたNHK福岡放送局の取材クルーがこの事故を撮影し、その日の夜のNHKニュースなどで、エンジンから出火する瞬間が放映された[5]。
なお、本件は統計上は事故ではなくイレギュラー運航扱いである[6][7]。
機材

事故機は1980年12月に日本航空に納入されたマクドネル・ダグラス社製のDC-10-40(機体記号:JA8545、ライン番号/製造番号:343/47853[8])で、事故時点での機齢は約24年だった。エンジンはプラット・アンド・ホイットニー社のJT9D-59A型を搭載していた。
事故から17日後にアメリカへ売却され、日本航空から退役した[9]。2014年現在もアリゾナ州ピナル飛行場で保管されている。
事故原因
エンジンが停止した原因は、1枚のタービンブレードが破損し、それがほかのタービンブレードを巻き込んだことによる[1]。破損した原因は、ブレード表面の浸食による疲労亀裂と推定されている[10]。小さな亀裂が遠心力と熱によって拡大したことにより、中を循環する冷却空気に漏れが生じ、冷却空気が循環せずにブレード表面に熱が蓄えられたためブレードが破壊された[4]。これがきっかけとなり、ブレード片が他のタービンブレードをも破壊することとなった。
停止したエンジンについては、2005年(平成17年)6月に国土交通省がタービン破損の恐れがあるとして各航空会社に部品交換などの対策を指示していた[10]。この指示に対して日本航空は2002年(平成14年)3月の社内調査で劣化していたタービンブレードの一部分を交換したことを確認したため、2010年(平成22年)までに部品交換の対応を行うと国土交通省に回答し、国土交通省もこれを了承した[10]。
この事故の後、JALグループは2005年10月でDC-10を退役させ、ほぼ同型のエンジンを使用していたボーイング747についてはエンジンの検査間隔を2500時間から1000時間に短縮するという改善策をとった[3]。
脚注
- ^ a b c d e 「引き返しの日航系機から部品落下 福岡市内に金属片散乱」『朝日新聞』朝日新聞社、2005年8月13日。オリジナルの2005年8月13日時点におけるアーカイブ。2025年3月14日閲覧。
- ^ 「エンジン炎上、乗客「墜落すると思った」 日航系機事故」『朝日新聞』朝日新聞社、2005年8月13日。オリジナルの2005年8月14日時点におけるアーカイブ。2025年3月14日閲覧。
- ^ a b CSR報告書2006 ジャルウェイズ58便のエンジントラブル (Report). 日本航空.(インターネットアーカイブによるキャッシュ)
- ^ a b 「JAL系機の部品落下、エンジンに問題か」『読売新聞』読売新聞社、2005年8月13日。オリジナルの2005年8月14日時点におけるアーカイブ。2025年3月14日閲覧。
- ^ 「NHK、事故機の火吹く瞬間放映 路線運休取材中に撮影」『朝日新聞』朝日新聞社、2005年8月12日。オリジナルの2005年8月14日時点におけるアーカイブ。2025年3月14日閲覧。
- ^ イレギュラー運航の発生状況(平成17年8月) (Report). 国土交通省.
- ^ 「部品落下は「イレギュラー運航」、事故調派遣せず」『読売新聞』読売新聞社、2005年8月13日。オリジナルの2005年8月15日時点におけるアーカイブ。2025年3月14日閲覧。
- ^ N853VV Vivaldi Overseas McDonnell Douglas DC-10-40 - cn 47853 / ln 343
- ^ JA Search:JA8545 登録情報
- ^ a b c 「日航系機の同型エンジン、国交省が6月に部品交換指示」『読売新聞』読売新聞社、2005年8月14日。オリジナルの2005年8月15日時点におけるアーカイブ。2025年3月14日閲覧。
関連項目
- JALウェイズ
- 福岡空港ガルーダ航空機離陸事故 - 同じく福岡空港で発生したDC-10による航空事故。
- カンタス航空32便エンジン爆発事故 - 同じくエンジンが飛行中に破損した航空事故。
- 日本航空123便墜落事故 - 本事故よりちょうど20年前の同じ日に発生した、JALが関係する航空事故。発生時刻も約1時間違うのみ。
固有名詞の分類
日本で発生した航空事故 |
日本航空MD11機乱高下事故 全日空機大島空港オーバーラン事故 JALウェイズ58便エンジン爆発事故 全日空羽田沖墜落事故 全日空訓練機下地島離陸失敗事故 |
DC-10による航空事故 |
UTA航空772便爆破事件 JALウェイズ58便エンジン爆発事故 ユナイテッド航空232便不時着事故 福岡空港ガルーダ航空機離陸事故 ワールド・エアウェイズ30H便大破事故 |
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