ガロア理論とは? わかりやすく解説

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ガロア理論

(Galois theory から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/02/08 13:53 UTC 版)

ガロア理論(ガロアりろん、Galois theory)は、代数方程式構造を "ガロア群" と呼ばれるを用いて記述する理論。1830年代エヴァリスト・ガロアによる代数方程式の冪根による可解性などの研究が由来。ガロアは当時、まだ確立されていなかった群や体の考えを方程式の研究に用いていた。

ガロア理論によれば、“ガロア拡大”と呼ばれる体の代数拡大について、拡大の自己同型群の閉部分群と、拡大の中間体との対応関係を記述することができる。

概要

例えば Galois の研究は、その萌芽はすでに Lagrange その他の中に見られるが、どんな貧弱な fox-terrior でも、Galois の中にすぐれたアイディアをかぎわけることができる。
アンドレ・ヴェイユ
来日数学者と接して」『数学』第7巻第4号、1956年、268頁。 

ガロア理論では、加減乗除ができるような数の範疇での代数方程式を考察対象とする。例えば、有理数複素数の範囲で多項式で表わされる方程式の解を考えたり、整係数の多項式で素数を法とした解を考えたりする。

代数方程式が "代数的に解ける" かどうか、つまり係数に対する四則演算と根号の有限個の組合せで解が表せるかどうかが問題になる。四次までの代数方程式についてはこれが可能。

例えば二次の多項式 x2 − 2ax + b = 0 の二つの根は

この節の加筆が望まれています。

ガロア理論の基本定理

L を体 K の有限次ガロア拡大とする。「LK の中間体 M」 と 「Gal(L/K) の部分群 H」 について次の式が成立つ。

オーギュスト・シュヴァリエ宛のガロアの手紙の最終頁(1832年5月29日)

ガロアは1832年の(死の原因となる)決闘の前日に、友人のオーギュスト・シュヴァリエに宛てて、ガロア理論と楕円関数論に関する数学的業績を要約した手紙を書いた。その後、1846年になって、リウヴィルがガロアの功績を知って自分の雑誌にガロアの論文集を掲載した[1]ことで、多くの数学者が刺激を受けることになった。デデキントは1855年から1857年にかけてゲッティンゲン大学でガロア理論に関する最初の講義をおこなった[2]。そのとき、デデキントはガロアの理論を「ガロア理論」(: Galois-Theorie)と名づけた[3]。早い時期に、ベッチ、クロネッカーケイリー、セレは群概念を厳密化していった。カミーユ・ジョルダンによって1870年に発表された『置換と代数方程式論』 (Traité des substitutions et des équations algebraique) はガロア理論に関する包括的な解説として最も古いものである。1871年にデデキントは四則演算で閉じた(数の)集合を「」(: Körper)と名づけた。また、デデキントウェーバー英語版は1882年に代数関数体リーマン面の代数的理論を構築した[2]

ソフス・リーによって導入されたリー群は代数方程式に対するガロア理論の類似を微分方程式に対して確立しようという試みの中から生まれたとされている。その後、エミール・アルティンによってガロア理論の線型代数学的な定式化が追求された[4][5]アレクサンダー・グロタンディークによって圏論的な定式化と数論幾何代数幾何への応用が押し進められた。

脚注

  1. ^ Galois, Évariste (1846). “Œuvres mathématiques d'Évariste Galois”. Journal de mathématiques pures et appliquées (Tome XI): 381-444. ISSN 0021-7824. http://gallica.bnf.fr/ark:/12148/bpt6k290623/f5.image.langFR. 
  2. ^ a b 佐武一郎「解説「ガロア理論」について」、アルティン (2010) p. 215
  3. ^ Scharlau (1981)
  4. ^ アルティン (1974)
  5. ^ アルティン (2010)

参考文献

関連文献

和書:

以下の和書の出版順のリストは長くなるから普段は隠しておいた方が良いかもしれない。しかしどれも難易度はあるもののガロア理論に関連するものである。

  • 村勢一郎:「方程式論」、東海書房(1948年5月30日).後編第3章:「Galoisのガロア理論」.
  • エム・ポストニコフ、日野寛三(訳):「ガロアの理論」、東京図書 (1964年6月25日). ※ 既約5次方程式が解かれる場合についての解説がある。
  • 高木貞治:「代数学講義:改訂新版」、共立出版、ISBN 978-4-320-01000-0 (1965年11月25日). 第7章:「不可能の証明」.
  • アルチン:「ガロア理論入門」、東京図書(1974年) ※原著 1959年。
  • アーベル/ガロア:「群と代数方程式」、共立出版 (1975年)。
  • 矢ケ巌:「数Ⅲ方式:ガロアの理論」、現代数学社(1979年)。
  • スチュワート:「ガロアの理論」、共立出版(1979年)※原著 1973年。
  • 山下純一:「ガロアへのレクイエム」、現代数学社、ISBN 4-7687-0161-2 (1986年10月8日). ※ ガロアの業績と関連する数学発展史
  • 倉田令二郎:「ガロアを読む」、日本評論社(1987年)。
  • 草場公邦:「ガロワと方程式」、朝倉書店、ISBN 4-254-11467-2 (1989年7月10日).
  • 藤崎源二郎:「体とガロア理論」、岩波書店(1991年)。
  • J. P. セール(著)、H. ダルモン(筆記)、植野義明(訳):「ガロア理論特論」、トッパン、ISBN 4-8101-8924-4 (1995年3月10日). ※ ガロア群の逆問題を扱っている。
  • 松田隆輝:「ガロア理論」、槇書店、ISBN 4-8375-0635-6 (1996年4月5日).
  • 原田耕一郎:「群の発見」、岩波書店、ISBN 4-00-006791-5 (2001年11月21日). 第3章:「ガロア理論」.
  • Jean-Pierre Tignol、新妻弘(訳):「代数方程式のガロアの理論」、共立出版、ISBN 4-320-01770-6 (2005年3月15日).
  • 桂利行:「代数学 III:体とガロア理論」、東京大学出版会、ISBN 4-13-062953-0 (2005年9月26日).
  • ディヴィッド・A・コックス、梶原健(訳):「ガロワ理論 上」、日本評論社、ISBN 978-4-535-78454-3 (2008年11月25日).
  • 中村亨:「ガロアの群論:方程式はなぜ解けなかったのか」、講談社(ブルーバックス B-1684)、ISBN 978-4-06-257684-0 (2010年5月20日).
  • ディヴィッド・A・コックス、梶原健(訳):「ガロワ理論 下」、日本評論社、ISBN 978-4-535-78455-0 (2010年9月20日).
  • 雪江明彦:「代数学 2:環と体とガロア理論」、日本評論社、ISBN 978-4-535-78660-8 (2010年12月20日).
  • 三宅克哉:「方程式が織りなす代数学」、共立出版、ISBN 978-4-320-01960-7 (2011年2月25日). ※ 第VI章:「ガロアの理論」、第VII章:「ガロアの逆問題から」。
  • 繭野孝和:「わかりやすい 方程式とガロア理論入門」、天の川教育文化研究所、ISBN 978-4-904424-00-1 (2011年9月30日).
  • 木村俊一:「ガロア理論」、共立出版、ISBN 978-4-320-01994-2 (2012年11月15日).
  • 藤田岳彦:「難問克服 解いてわかるガロア理論」、東京図書、ISBN 978-4-48902148-0 (2013年1月25日).
  • 髙瀨正仁:「アーベル(前編)不可能の証明へ」、現代数学社、ISBN 978-4-7687-0432-5 (2014年7月14日).
  • 黒川信重:「ガロア理論と表現論:ゼータ関数への出発」、日本評論社、ISBN 978-4-535-78589-2 (2014年11月30日).
  • 鈴木智英:「図解と実例と論理で、今度こそわかるガロア理論」、SBクリエイティブ、ISBN 978-4-7973-9020-9 (2017年2月28日).
  • 金重明:「方程式のガロア群:深遠な解の仕組みを理解する」、講談社(ブルーバックス 2046)、ISBN 978-4-06-502046-3 (2018年1月18日).
  • 芳沢光雄:「今度こそわかる ガロア理論」、講談社サイエンティフィク、ISBN 978-4-06-156602-6 (2018年4月14日).
  • 冨田佳子:「代数学の華 ガロア理論」、現代数学社、ISBN 4-7687-0522-7 (2019年).
  • 藤原松三郎:「代数学 第2巻」(改訂新版)、内田老鶴圃、ISBN 978-4-7536-0162-2 (2020年4月). 第11章:「ガロアの方程式論」.
  • 新妻弘:「独習ガロア理論 : 群環体から低次数のガロア群まで初学者のための至極の講義録」、近代科学社、ISBN 978-4-76490674-7 (2023年12月26日).
  • 金重明:「はじめてのガロア:数学が苦手でもわかる天才の発想」、講談社(ブルーバックス 2271)、ISBN 978-4-06-536563-2 (2024年8月23日).

洋書:

関連項目

外部リンク




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