Bode plotとは? わかりやすく解説

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ボード線図

(Bode plot から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/03/05 06:51 UTC 版)

図1(a): 一次ハイパスフィルタのボード線図。"Bode pole" とラベルが付けられた直線は近似である。位相は低周波数では90°(伝達関数の分子がどの周波数でも90°であるため)、高周波数では0°に変化する(伝達関数の分母が高周波数では−90°であるため、分子と相殺される)。
図1(b): 一次ローパスフィルタのボード線図。"Bode pole" とラベルが付けられた直線は近似である。 図1(a)に比較して、位相が90°小さいのは、分子がどの周波数でも0°であるため。

ボード線図(ボードせんず、: Bode plot)は、線形時不変系における伝達関数周波数特性を表した図であり、通常はゲイン線図と位相線図の組合せで使われる。1930年代にヘンドリック・W・ボーディによって考案された。ボード図またはボーデ線図とも。

概要

ゲイン線図 (Magnitude plot) とは、対数周波数軸ディケード)で周波数毎のゲインの対数値をグラフにプロットした図である。

ゲインは通常デシベルで表される。これはゲインの常用対数をとったもの20倍した値である。ゲインをデシベルで表記することで、ゲインの積がボード線図上での縦方向の距離(デシベル)の和で表されるという利点がある。 この性質により、基本的な要素のボード線図を足し合わせることによって合成し、高次系のボード線図を容易に描くことができる。

位相線図 (Phase plot) とは、周波数と位相の関係を表したグラフで、ゲイン線図と同様に周波数は対数軸で表す。ゲイン線図と併用することで、周波数についての位相変移の量を評価するのに使われる。 例えば Asin(ωt) で表される信号を与えたとき、システムがそれを減衰させると同時に位相を変移させる可能性がある。減衰が係数 x でなされ、位相変移が -Φ だけなされる場合、出力される信号は (A/x) sin(ωt - Φ) となる。位相変移 Φ は一般に周波数の関数である。

数学的には明らかに、位相は複素利得の複素対数の虚数部と見ることができるので、ゲインの場合と同様に位相を直接加算することもできる。

図1(a)は以下の一極のハイパスフィルタのボード線図である。

図2: 零点とローパス極のゲイン線図。"Bode" とラベルの付いた線は骨格ボード線図である。
図3: 零点とローパス極の位相線図。"Bode" とラベルの付いた線は骨格ボード線図である。
図4: 極と零点を組み合わせたゲイン線図。零点の位置は図2と図3よりも10倍の位置にずれている。"Bode" とラベルの付いた線は骨格ボード線図である。
図5: 極と零点を組み合わせた位相線図。零点の位置は図2と図3よりも10倍の位置にずれている。"Bode" とラベルの付いた線は骨格ボード線図である。

位相線図

位相線図は、次の式で与えられる伝達関数の位相角をプロットすることで得られる。

図6: 負帰還増幅器の利得 AFB と対応する開ループ増幅器の利得 AOL をdBでプロットした図。パラメータ 1/β = 58 dB で、低い周波数では AFB ≈ 58 dB である。| βAOL| = 1 となる周波数がほぼ f = f180° に近いため、この増幅器のゲイン余裕はほぼ0となる。
図7: 負帰還増幅器の位相 °AFB と対応する開ループ増幅器の位相 °AOL を度でプロットした図。位相反転の起きる周波数が | βAOL| = 1 となる周波数 f = f0dB に近いため、位相余裕はほぼ0になる。

ボード線図の利用例

図6と図7は、具体例を示している。3極増幅器について、図6は帰還のない場合の利得(開ループ利得) AOL と帰還のある利得(閉ループ利得) AFB をボード線図で示したものである。

この例では、低い周波数では AOL = 100 dB であり 1 / β = 58 dB である。低い周波数では AFB ≈ 58 dB である。

β AOL ではなく、開ループ利得 AOL をプロットしているので、AOL = 1 / β となる周波数が f0dB である。低い周波数では AOL が大きく、帰還利得は AFB ≈ 1 / β となる。従って f0dB は帰還利得と開ループ利得の線が交差する位置になる(f0dB は位相余裕を決定するのに必要となる)。

2つの利得が f0dB で交差する付近で、この例ではバルクハウゼン基準もほぼ満足されている。そのため帰還増幅器の利得には大きなピークが現れている(β AOL = -1 なら、これが無限大となる)。f0dB より大きい周波数では開ループ利得が十分小さくなるため AFB ? AOL となる。

図7は、同じ例の位相を示したものである。帰還増幅器の位相は、開ループ利得の位相が -180°となる周波数 f180 まではほぼ0である。その付近になると帰還増幅器の位相は急激に降下し、開ループ増幅器の位相とほぼ同じになる(AOL が小さいとき AFB ? AOL)。

図6と図7の印の付いている箇所を比較すると、単位利得周波数 f0dB と位相反転周波数 f180 は非常に近いことがわかる。具体的には f180f0dB ≈ 3.332 kHz であり、位相余裕もゲイン余裕もほぼ0である。この増幅器は境界安定状態である。

図8: 帰還増幅器の利得 AFB と開ループ増幅器の利得 AOL をdBでプロットした図。この例では 1 / β = 77 dB である。この増幅器のゲイン余裕は 19 dB となる。
図9: 帰還増幅器の位相 °AFB と開ループ増幅器の位相 °AOL を度でプロットした図。この増幅器の位相余裕は 45° である。
図10: チェビシェフフィルタのゲイン線図をツールを使って描いたもの。伝達関数はグラフィカルに極や零点を追加することで定義できる。

図8と図9は、β が異なる設定のときのゲイン余裕と位相余裕を示している。帰還係数は図6および図7の場合よりも小さく設定されており、| β AOL | = 1 となる周波数が低くなっている。この例では、1 / β = 77 dB であり、低い周波数では AFB ? 77 dB である。

図8は利得(振幅)図である。図8から、1 / β と AOL の交差は f0dB = 1 kHz となることがわかる。AFBf0dB 付近でのピークはほとんど目立たない(バターワース特性[4]

図9は位相線図である。図8で得られた f0dB = 1 kHz を使うと、f0dB での開ループ位相は -135° であり、-180°との差である位相余裕は 45° となる。

図9によれば、位相が -180° となる周波数は f180 = 3.332 kHz である[5]。図8から f180 での開ループ利得は 58dB であり、1 / β = 77 dB であるから、ゲイン余裕は 19dB となる。

一方、増幅器の応答特性には安定性以外にも重要なものがある。多くの場合、ステップ応答が重要となる。経験上、よいステップ応答には少なくとも 45° の位相余裕が必要とされ、70° 以上のものが望ましい。その場合、部品の特性のばらつきが重大な影響を与える[6]

ボードプロッタ

ボードプロッタは、オシロスコープに似た電子装置で、帰還制御系やフィルタについて周波数と電圧利得や位相変移の関係をボード線図として描画することができる。遮断周波数、ゲイン余裕、位相余裕が即座にわかるため、フィルタの解析・評価や帰還制御系の安定性の解析に非常に便利である。

ネットワーク・アナライザでも同様の機能を持つものがあるが、ネットワーク・アナライザはもっと高い周波数を扱うのが一般的である。

教育や研究においては、伝達関数からボード線図を描くアプリケーションがあると、よりよくかつ素早く理解できるようになる(外部リンク参照)。

脚注・出典

  1. ^ 通常、周波数が増大すると振幅利得は低下し、位相は負になるが、そうはならないこともある。特殊な利得の振る舞いを考慮すると、ゲイン余裕と位相余裕の考え方を適用できなくなる。その場合は、ナイキスト線図などを使って安定性を確保する。
  2. ^ Thomas H. Lee (2004). “§14.6”. The design of CMOS radio-frequency integrated circuits (Second Edition ed.). Cambridge UK: Cambridge University Press. pp. 451-453. ISBN 0-521-83539-9. OCLC 8034384077 
  3. ^ William S Levine (1996). “§10.1”. The control handbook. The electrical engineering handbook series (Second Edition ed.). Boca Raton FL: CRC Press/IEEE Press. p. 163. ISBN 0849385709. OCLC 805684883. https://books.google.co.jp/books?id=2WQP5JGaJOgC&pg=RA1-PA163&lpg=RA1-PA163&dq=stability+%22minimum+phase%22&source=web&ots=P3fFTcyfzM&sig=ad5DJ7EvVm6In_zhI0MlF_6vHDA&redir_esc=y&hl=ja 
  4. ^ Willy M C Sansen (2006). “§0517-§0527”. Analog design essentials. International series in engineering and computer science, 859. Dordrecht, The Netherlands: Springer. pp. 157-163. ISBN 0-387-25746-2. OCLC 209908307 
  5. ^ 位相反転周波数は帰還係数を変えても変化しない、開ループ利得の独立した特性である。f180 での利得も帰還係数とは独立している。従って、図6と図7での値を使うことができる。しかし、ここでは図8と図9のみを使って解説している
  6. ^ Willy M C Sansen (2006). “§0526”. Analog design essentials. International series in engineering and computer science, 859. p. 162. ISBN 0-387-25746-2. OCLC 209908307 

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