2つの熱容量
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/03 14:47 UTC 版)
物体の温度を1℃上げるのに必要な熱量を、その物体の熱容量という。同じ物体でも、一定の圧力のもとで加熱したときと、物体の体積を一定に保って加熱したときとでは、温度を1℃上げるのに必要な熱量が異なる。一定の圧力下での熱容量を定圧熱容量と呼び、記号 Cp で表す。体積を一定に保ったときの熱容量を定積熱容量と呼び、記号 CV で表す。気体・液体・固体のいずれの場合でも、不等式 Cp ≥ CV が常に成り立つことが知られている。この不等式は、一定圧力のもとで物体の温度を1℃上げるには、体積一定で1℃上げるときよりも熱を余計に加えなければならないことを示している。物体の熱膨張率をゼロとみなせる特別な場合に限って、この「余計な熱」が不要になる。熱膨張率がゼロなら、圧力一定で加熱したときに体積もまた一定に保たれるので Cp = CV となるからである。極低温の固体や、4℃付近の水がこの場合に相当する。 気体の場合には、圧力一定で加熱したときの「余計な熱」はほとんど全て、気体の熱膨張に伴う仕事に変換される。というのは、気体の内部エネルギー U は、温度が同じであれば体積・圧力が変わってもほとんど変化しないからである。熱力学第一法則により、ある過程における内部エネルギーの変化量 ΔU は、その過程で物体が得た熱量 Q からその物体がした仕事 W を引いたものに等しい。気体の場合は、始状態と終状態の温度が同じであれば、定圧過程でも定積過程でも ΔU はほとんど同じになる。よって、定圧過程で気体に加えなければならない熱 Qp は、定積過程で同じだけ温度を上げるのに必要な熱 QV に、定圧過程で気体がする仕事 Wp を加えたものにほぼ等しい。 理想気体の場合は、始状態と終状態の温度が同じであれば、定圧過程と定積過程の ΔU は正確に一致する(ジュールの法則)。したがって Q p = Q V + W p {\displaystyle Q_{p}=Q_{V}+W_{p}} が厳密に成り立つ。
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