2種類の同値な定義
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/13 08:36 UTC 版)
「コンパクト空間」の記事における「2種類の同値な定義」の解説
コンパクトの概念は以下に述べる同値な2性質の少なくとも一方(したがって両方)を満たす事により定義される。 1つ目の性質は(有向点族に対する)ボルツァーノ・ワイエルシュトラス性といい、これは R n {\displaystyle \mathbb {R} ^{n}} の有界閉集合に対するボルツァーノ・ワイエルシュトラスの定理の結論部分を若干拡張した形で定式化したものである。この性質は直観的には点列の拡張概念である有向点族の極限が発散する事がない事を意味する。位相空間X上の点列やその拡張概念である有向点族は極限にはX内で「収束」するか「振動」するかあるいはXの「外」に「発散」するかがありえるが、Xがコンパクトであれば「収束」するか「振動」するかのいずれかであるのだから、任意の有向点族には収束する部分列が取れるはずであり、厳密にはこの事実を持ってコンパクト性を定義する。 コンパクトな空間は「Xの外に発散する有向点族がない」という意味において、閉集合よりもさらに「閉じた」空間だと言え、実際ハウスドルフ空間においてはコンパクトな部分集合は必ず閉集合になる事が知られている。こうした事情から、コンパクトな空間には「閉」という接頭辞をつけて呼ぶ事があり、例えばコンパクトな多様体は「閉多様体」と呼ばれる。 コンパクトを特徴づける2つ目の性質(前述のようにこれはボルツァーノ・ワイエルシュトラス性と同値)はハイネ・ボレル性といい、これは R n {\displaystyle \mathbb {R} ^{n}} の有界閉集合に対するハイネ・ボレルの被覆定理の結論部分に相当する性質である。ハイネ・ボレル性は非常に抽象的な性質なので、その詳細は後の章に譲るが、コンパクトな空間に対する定理を証明する際、無限に伴う証明の困難さを回避するのにこの性質を用いる事ができる。なお、学部レベルの教科書ではハイネ・ボレル性の方をコンパクトの定義として採用しているものが多い。 上述のようにコンパクト性を特徴づける2性質はいずれも R n {\displaystyle \mathbb {R} ^{n}} の有界閉集合において成立している性質を一般の位相空間に拡張したものであり、この意味において、コンパクトとは「 R n {\displaystyle \mathbb {R} ^{n}} の有界閉集合」の一般化である(詳細後述)。
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