鳶の輪の絶対音感夕焼ける
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評 言 |
鳶はタカの一種。猛禽類である。地上にネズミやカエルなどの獲物を見つけるとさっと舞い降りてきて捕食する。農耕地や市街地でもピーヒョロロと鳴きながら輪を描いて飛んでいるのを見かけるから、馴染みの深い鳥である。そこで歌に歌われたり、諺に使われることも多い。「トンビがタカを生む」とは、平凡な親から非凡な子供が生まれることを譬えていうが、これは少しおかしい。「トンビがタカを生む」のは同じ種なのだから、当り前なのである。「鳶に油揚をさらわれる」とは思いがけず横合いからものを奪われることの譬え。以下は式亭三馬の『浮世風呂』にある話。京橋にさしかかった子供が油揚げ持ってさしかかったところへ鳶がおりてきて油揚をさらっていった。それを見て「京橋の鳶さらいけり揚げ豆腐」という句を作った。これが風流かどうか問題にしている場面がある。 掲句の場合、鳶の鳴き声はそれだけで鳶と分かるということだろう。絶対音感。他の音と比較しなくても音の高さを識別できること。雀の鳴き声とは違うのである。折からの夕焼け。澄んだ鳶の鳴き声が声の主の高さを感じさせる。この一句、声のイメージと飛翔の輪のイメージとの交響である。 |
評 者 |
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備 考 |
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