類似した警告シグナルの適応的意義
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/17 07:19 UTC 版)
「ミューラー型擬態」の記事における「類似した警告シグナルの適応的意義」の解説
ある捕食者が獲物とする生物が全て、それぞれ別の警告シグナルを持つことも可能だが、これは獲物にとっても捕食者にとっても利益にならない。もし仮に全ての獲物が示し合わせて共通の警告シグナルを用いたとしたら、捕食者は学習するために辛い経験を何度もしなくて済むし、獲物の側にとっても犠牲が少なくて済むからである。実際にはそのような「談合」をしなくても、警告シグナルは似通ったものになりやすい。それは、ある個体が捕食者にとって「好ましくない」と学習された別の種に少しでも似ていれば、その個体の生存可能性が他の個体よりも高まる、という原理で、警告シグナルが統一する方向に自然選択が働くからである。この過程でミューラー型擬態とベイツ型擬態の進化する仕組みの両方を説明できる。すなわち、その種が実際に有害である場合がミューラー型擬態で、その種自体は無害で有害な種の存在を利用しているにすぎない(フリーライダー)場合がベイツ型擬態である。なお、多数の種類がこの防御的な協働関係に加わることもあり、この場合を擬態環mimicry ringと呼ぶ。このような議論から、ミューラーは擬態が必ずしも一方の種による搾取(ベイツ型擬態の場合)であるとは限らず、互恵的な関係(ミューラー型擬態)にもなりうるということを示したのである。ただし先述のように、彼の構築した数理モデルはミューラー型擬態にも非対称な関係が生じうることを示している。
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