雪女見しより瘧をさまらず
作 者 |
|
季 語 |
|
季 節 |
冬 |
出 典 |
|
前 書 |
|
評 言 |
真鍋呉夫先生は、私がまだ駆け出しの編集者だった頃、加藤楸邨居・達谷山房にご一緒させていただき、そのときの印象を「三十八年ぶりの楸邨さん」というタイトルのエッセイに綴っていただいた。かれこれ三十年近く前のことである。 その後何年かして、私が現代俳句協会の新人賞を受賞したとき、新聞記事に私の名を見付けてくださり、わざわざ職場に電話をくださった。真鍋先生とはそのようなご縁である。 さて、掲出句は読売文学賞を受賞された『雪女』の一句。「瘧」とは時間をおいて高熱を発する病気である。吹雪の中に現れる雪女は、現実と非現実を行き来する超越的存在。作者は一瞬のうちに、雪女の幻惑に心を奪われてしまったのである。 雪女は、この世の誰よりも凄まじい美しさを持つ到達できない存在。であるがゆえに、恍惚はいっそう深まるのだろう。 雪女くるらし鷺の蓑毛立ち 雪をんな打身の痕のまだ青く 雪女抱けば吹雪の匂ひして 句中に物語が籠められていて、読者の想像力を掻き立てる。 しかしながら、作者をぞっとさせるほどの雪女も、やがて変化をしてゆく。雪女がはかなく可愛らしいものとして描かれるのは、凍れる雪女の心をも溶かす、作者の熱い愛情なのだと思う。 うつぶせの寝顔をさなし雪女 真鍋呉夫『雪女』平成4年冥草舎刊行より |
評 者 |
|
備 考 |
- 雪女見しより瘧をさまらずのページへのリンク