量方程式と数値方程式
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/12 03:47 UTC 版)
各項がひとつの量を表すような等式や不等式を量方程式とよぶ。それに対して、各項がひとつの数値を表すような等式や不等式を数値方程式とよぶ。距離 l, 速度 v, 時間 t の関係を例に、量方程式として式-4.1、式-4.2を、数値方程式として式-5.1、式-5.2を以下に示す。 式-4.1(量方程式) v = l / t {\displaystyle v=l/t} 式-4.2(量方程式) l = v ⋅ t {\displaystyle l=v\cdot t} 式-5.1(数値方程式) { v 1 } k m / h = 3.6 { l 1 } m / { t 1 } s {\displaystyle \left\{{\mathit {v1}}\right\}_{\mathrm {km/h} }=3.6\left\{{\mathit {l1}}\right\}_{\mathrm {m} }/\left\{{\mathit {t1}}\right\}_{\mathrm {s} }} 式-5.2(数値方程式) { l 1 } k m = 3.6 { v 1 } m / s ⋅ { t 1 } h {\displaystyle \left\{{\mathit {l1}}\right\}_{\mathrm {km} }=3.6\left\{{\mathit {v1}}\right\}_{\mathrm {m/s} }\cdot \left\{{\mathit {t1}}\right\}_{\mathrm {h} }} 式-5.1の表記では、例えば { t 1 } s {\displaystyle \left\{{\mathit {t1}}\right\}_{\mathrm {s} }} がひとつの数値に対応するひとつの項を示し、具体的計算では各項にそれぞれ数値が代入される。例えば、1 m/s の速度で 1 h 進んだ場合の距離を km で表す数値を求める場合は、式-5.2の右辺に数値を代入して次のようになる。 { l 1 } k m = 3.6 { v 1 } m / s ⋅ { t 1 } h = 3.6 × 1 × 1 = 3.6 {\displaystyle {\begin{aligned}\left\{{\mathit {l1}}\right\}_{\mathrm {km} }&=3.6\left\{{\mathit {v1}}\right\}_{\mathrm {m/s} }\cdot \left\{{\mathit {t1}}\right\}_{\mathrm {h} }\\&=3.6\times 1\times 1\\&=3.6\end{aligned}}} 式-4.2の表記で同じ計算をするときは、各項にそれぞれ量を、つまり数値と単位の積を代入する。そして通常の演算規則に従って変形すれば、次の結果が得られる。 l = v ⋅ t = ( 1 m / s ) ⋅ ( 1 h ) = ( 1 ⋅ 1 ) ⋅ ( m / s ) ( h ) = 1 ⋅ ( k m / 1000 ) ( 1 / s ) ( 3600 s ) = 1 ⋅ ( 3600 / 1000 ) ( k m ) = 3.6 k m {\displaystyle {\begin{aligned}l&=v\cdot t\\&=\mathrm {(1\ m/s)\cdot (1\ h)} \\&=\mathrm {(1\cdot 1)\cdot (m/s)(h)} \\&=\mathrm {1\cdot (km/1000)(1/s)(3600\ s)} \\&=\mathrm {1\cdot (3600/1000)(km)} \\&=\mathrm {3.6\ km} \end{aligned}}} ここで次の注意が必要である。 例えば「 { t 1 } {\displaystyle \left\{{\mathit {t1}}\right\}} 」は独立した記号ではなく、単位情報を示す添字「s」がないと意味をなさない。ゆえに、「s」のような単位表示を省略してはならない。また式-5.2の「 { t 1 } {\displaystyle \left\{{\mathit {t1}}\right\}} 」だけに具体的数値を代入するのは誤りである。 「s」など添字で示される単位記号は数値の意味を示すための付属情報を示すものであり、単位量そのものを示す変数記号ではない。 式-3のような表記と式-5.1、式-5.2のような数値方程式の各項の表記とは、見かけは似ていても意味は全く異なるので、混同してはならない。 数値方程式は単位の選択により変化するが、量方程式は単位に依存しないので、通常は量方程式の使用が望ましい。言い換えれば、いくつかの量の間の関係を表すときに、量方程式ならひとつの式で十分だが、数値方程式は単位の組み合わせごとに別の式が必要である。数値方程式が使われる例には、個別的な実験式に表現する場合、計算プログラムや表計算シートの中の式、などがある。
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