酸性雨の基準値
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/19 05:00 UTC 版)
一般的に、雨の水素イオン濃度(pH)値が5.6以下であるときに酸性雨と呼ぶ。これは、標準的な大気中において、雨水と二酸化炭素が平衡状態にあるときの値、つまり大気中の二酸化炭素を飽和溶解度になるまで純水に溶かしたときのpH値である。 しかし、この値を基準とすることについては異論も存在する。火山活動などにより非人為的に雨のpH値が低下することがあるほか、非人為的な起源の大気エアロゾル粒子、例えば海塩粒子、土壌由来の微小粒子などが雨に溶解することで雨のpH値は場所により大きく異なってくるためである。 実際、酸性雨や酸性霧による環境への影響は、土壌や水中、建造物などに含まれる、酸性雨や酸性霧を中和する成分の濃度にも左右されてくる。pH5.6を下回ったからといってすぐに被害が現れるというわけではない。こういった異論を踏まえて、基準値を緩めているところもある。たとえばpH5.0としているアメリカなどがある。 国立環境研究所では、この発生源を調べるには、pHだけでなく、降水の中に含まれているイオンの種類と量を知る必要があるという見解に到っている。現在日本では実施されている酸性雨の調査では、pHだけでなく硫酸イオン、硝酸イオンをはじめとした多くの汚染物質を測定している。 ただ、具体的にどのくらいの値に設定すればよいかというのは調査が必要な上、地域差があることなどから、はっきりと算出されていない。今のところpH5.6というのが「ひとつの目安」となっている。参考として、土壌の酸性化はマグネシウムイオンやアルミニウムイオンが溶け出し始めるレベル、湖沼の酸性化はpH6.0-5.0くらいのレベルで被害が深刻化してくるとされる。
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