酒類の輸送
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/14 01:34 UTC 版)
かつては、修正第21条によって禁酒法が廃止された結果、酒類の禁止は連邦の商務行政の問題ではなく、州の警察行政の問題となったのだという解釈があった。州やそれに準じる地域は、管轄する領域内を発着ないし通過する商品に対して一定の権限があると考えられる、というわけである。確かに、修正第21条は、各州に酒類を禁じる権限を与えているが、その権限は絶対ではない。 特に、あるひとつの州が酒類を禁じたとしても、酒類を認めている州同士の間で行なわれる商業活動を妨げることは許されない。合衆国最高裁判所が下した Granholm v. Heald 事件の判決 544 U.S. 460 (2005) は、州境を超えて流通する酒類の積み荷に対して州の行政権限は及ばない、という判断を示している。したがって、州法や郡なり市の条例が、州を超えた商業活動として運行されている車両(長距離列車やバス)の乗客を対象に酒類の所持を禁じたとしても、その乗客がただその州(あるいは郡、市)の領域を通過するだけの場合には、その定め自体が憲法違反にあたると考えられる。 例えば、アリゾナ州の北東部からニューメキシコ州にまたがるフォー・コーナーズの沙漠地帯に、一定の自治権を保有した「ナバホ・ネイション(Navajo Nation)」として、アメリカ最大の保留地(Reservation)を領有しているナバホ族は、久しく酒類を禁止してきた。アムトラック以前の、アッチソン・トピカ・アンド・サンタフェ鉄道がスーパー・チーフを運行していた頃、ナバホの領域を通過する際には、列車のバーは閉じられたが、酒類は列車に積み込まれたままであった。
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